終活で断捨離するには?失敗しない生前整理のコツ
更新:2023.07.30
終活をするにあたり、「断捨離したい」と考えている人も多いのではないでしょうか。
断捨離とは、身の回りにある不要なモノを捨て、不要な買い物やもらい物を断つことで、本来自分に必要なモノを再確認する方法です。
断捨離の考え方を利用して生前整理を行うことは可能ですが、注意点もあります。
終活目的で断捨離をするときのコツを解説します。
目次
断捨離とはモノへの執着を断ち切り、家も心もスッキリさせる方法
「断捨離」とは、身の回りをスッキリさせることで、自分にとって本当に必要なモノは何かを再確認する方法です。
ヨーガの思想である「断行・捨行・離行」から、やましたひでこさんが着想を得て提唱しました。
「断」は断ち切ること、つまり新しく入ってくる不要なモノを拒むことを意味します。
お弁当を買ったときについてくるプラスチックのスプーンや割り箸、試供品のシャンプーやリンスなど、タダでもらえるモノはもらってしまいがちですが、これらを受け入れていると家に不要なモノがどんどん溜まっていきます。
自分にとって不要と考えたら、例え無料でも「いらない」と言う勇気を持つことで、家によけいなモノを入れずに済みます。
「捨」は文字通り、家にある不要なモノを捨てることです。
さらに「離」は、モノへの執着から離れることを意味します。
「まだ使えるのにもったいない」
「タダならもらわなきゃ損」
などとモノに振り回される気持ちから潔く離れ、自分にとって必要か、不要かという物差しでモノと付き合うようにするのです。
断捨離を行うと、自分にとって本当に必要なモノが分かってきます。
結果、いつでもスッキリした部屋で暮らせるうえ、仕事や人間関係においても要不要を決断する勇気が湧いてくるといいます。
心も部屋も整う断捨離は、片付けを通した自己啓発法といえるでしょう。
断捨離と生前整理は似ている?
生前整理とは、終活のために家を片づけることを指します。
今後の自分の生活を見据え、必要ではないモノを処分することです。
「今の自分にとって不要なモノを捨てる」以上に、「今後あり続けたら自分が亡くなったとき後の世代が困る」という視点でモノを整理する必要があります。
例えば婚礼時に持参した大きな鏡台やタンス、大家族のとき使っていたダイニングテーブルなどは、今も変わらず使っていたとしても、子世代が空き家の片付けをするとき処分が大変です。
よって「お化粧は洗面台で」「衣類は押し入れに入るだけ」などと決め、思い出深い家財にお別れする人がいます。
また、生前整理には、家をスッキリさせることでシニア層が生活しやすくするという目的もあります。
高齢になると足腰が弱まり、廊下に何気なく置いてある段ボールなどにつまずいて転倒しがちです。
高齢者が転倒すると骨折しまうこともあり、そのまま寝たきりになるリスクが高まります。
家での事故を減らすためにも、生前整理は必要です。
よって断捨離と生前整理は「家を片づける」という面では似ているものの、視点や目的は少し違います。
ただ、断捨離が強調する「モノへの執着から離れる」という思想は、生前整理にぜひ取り入れたい考え方です。
思い出や「もったいない」という気持ちにとらわれ、なかなか生前整理が進まない人がいるためです。
断捨離の思想を取り入れた生前整理のポイント
終活の一環として、生前整理に断捨離の思想を取り入れるとしたら、以下の4つがポイントになります。
「もったいない」は禁句
生前整理で「もったいないからとっておく」と思ってしまうと、何も捨てられなくなってしまいます。
モノへの執着から離れるという断捨離の思考法を参考にしましょう。
今の自分、今後の自分、そして子世代にとって「必要か」「不要か」という視点で判断します。
子世代にとって必要か不要かは、自分で判断するのではなく、子世代自身に判断させます。
子世代が「必要ない」と判断したら、どんなにもったいないと考えていても手放しましょう。
整理のために新しいモノを買わない
断捨離では、モノを整理するために新しい棚などの収納家具を買い足すのではなく、これまでの収納家具に納まるようモノを減らすことを推奨しています。
生前整理をすると「大きい収納家具を処分する代わりに小さい家具を」などと思いがちですが、まずは家を見渡し、押し入れや作り付けのタンスなどに収納できないかどうか検討しましょう。
生前整理のためにモノを処分しても、代わりに新しいモノを入れてしまえば本末転倒です。
家族の力を借りて思い出を上手に整理する
生前整理で最もハードルが高いのが、思い出深いモノを手放すことでしょう。
とくに子世代が使っていた楽器や家財など、家族のつながりを思わせるモノを捨てるのは辛いことです。
執着を断ち切るには、家族の力を借りるのが有効です。
子世代と「このピアノ、どうする?」などと相談し、思い出を共有するだけでも気持ちの整理がつくことがあります。
大事なのは今とこれからであると割り切れれば、きっと処分できるモノは増えていくでしょう。
処分を迷うモノは保管期限を決める
断捨離の気持ちで生前整理を進めてなお、割り切れず処分できないモノがあることでしょう。
そんなときは、「70歳の誕生日まではとっておく」など保管期限を決めましょう。
大事なのは、自分がモノを処分できる体力があるうちに決断することです。
あまり長く期間をとらないのがポイントです。
終活の断捨離で気をつけたいこと5つ
終活で断捨離をしていると、取り返しのつかない失敗をすることもあります。
自分亡き後に後の世代が困らないよう取り組むのが生前整理ですが、整理しすぎてしまうと、逆に後の世代が困ってしまうケースがあるのです。
以下の5点に気をつけましょう。
年賀状を捨てるときは連絡先を控える
ご自身が亡くなってから遺された家族が訃報を出すとき、友人の連絡先を知るのに年賀状が有効になるケースが見られます。
年賀状を全て捨ててしまうと、遺族が友人の連絡先を知る手立てがなくなります。
直近1年分の年賀状を残しておくか、大事な連絡先はしっかり連絡帳に控え、連絡帳のありかを家族に知らせておきましょう。
ファイルや本に重要書類が挟まれていないか確認する
処分予定のファイルや本に、保険証券など大事な書類が挟み込まれていないかもう一度調べましょう。
断捨離していると「もう、あれもこれも捨てられる」と勢いづいてしまうことがあります。
ものの弾みでよく調べもせず大事な書類を捨ててしまうと、自分も、遺される家族も困ります。
幼少期からの写真をある程度残しておく
現代では、葬儀のときに故人の写真を時系列に並べ、スライドショーで流す演出があります。
古い写真を全て捨ててしまうと、幼少期から時系列で写真を並べることができません。
「この写真は葬儀のとき使ってほしい」と感じられる写真を、意識的に残しておきましょう。
まとめた写真は家族に渡しておくのがおすすめです。
宝飾品を処分したら家族に報告する
とくに「こんな宝石を持っているんだよ」と娘さんなどに見せた記憶のある宝飾品を処分するときは、処分したことをしっかり家族に報告しましょう。
相続時「あったはずの宝石がない」と家族が騒ぎ出し、「盗難に遭ったのかも」「誰かに譲ったのかも」などといった疑惑が持ち上がるかもしれません。
体力的に無理しない
大きな家財を持ち上げて腰を痛める、高いところのモノを取ろうとして踏み台から転倒するなど、断捨離は何かと危険が伴いがちです。
子世代をラクにするために生前整理をやっているのに、ケガで入院して家族に迷惑をかけてしまうかもしれません。
1人で頑張ろうとせず、家族や友人に頼りましょう。
終活では子世代を巻き込んで断捨離するのがコツ
以上、終活で断捨離をするときの注意点やコツをお伝えしました。
1人で実行しようとせず、子世代を巻き込むことが上手な生前整理のコツであるとお分かりいただけたのではないでしょうか。
ご自身が生きてきた家は、配偶者や子世代にとっても思い出深い家のはず。
生きてきた証を上手に引き継ぐための生前整理ですから、断捨離の考え方を取り入れながらも、引き継ぐ人としっかりコミュニケーションを取り、残すモノと手放すモノを明確に線引きしましょう。
この記事を書いた人
奥山 晶子
葬儀社への勤務経験、散骨を推進するNPO「葬送の自由をすすめる会」の理事の経験、遺品整理関係の著書・サイト制作サポートなどから、終活全般に強いライター。ファイナンシャルプランナー(2級)。終活関連の著書3冊、監修本1冊。最近の著書は「ゆる終活のための親にかけたい55の言葉」オークラ出版。ほか週刊現代WEBなどサイトへの終活関連コラム寄稿、クロワッサン別冊「終活読本」の監修や、令和6年5月発刊「ESSE」6月号のお墓特集を監修している。