葬儀に行けなかった場合、後日手紙を書いてもいい?マナーや文例を解説
更新:2023.01.31
仕事などの都合でどうしても葬儀に行けなかった場合は、手紙を書くという方法でお悔やみを伝えることができます。
お悔やみの手紙には、自分の気持ちを率直に書くのが一番ですが、少しのマナーを守れば、故人や遺族への想いがもっとしっかり伝わります。
この記事では葬儀後、遺族に出す手紙のマナーと注意点を解説させていただきます。
どうしても葬儀に行けなかった場合の対応4つ
葬儀に参列できない場合、お悔やみの気持ちを伝える手段としては、以下の4つが考えられます。
葬儀に間に合うよう、会場に弔電を送る
親族や友人など、とくに近い関係性の人の葬儀に参列できないことがあらかじめ分かっている場合には、弔電を送るのが一般的です。
弔電は、葬儀で読まれることによって参列に替えるという意味合いがあります。
よって、葬儀の時間に間に合うよう手配し、葬儀会場へ送ります。
葬儀会場の場所が分からない場合は、自宅へ送ります。
ただし葬儀で弔電を読んでほしいなら、自宅へは通夜の晩までに届くよう手配する必要があります。
葬儀後、お悔やみの手紙を添えた香典を送る
香典を渡したいのに葬儀に出られなかった場合には、現金書留で香典を郵送します。
現金書留の袋の中には現金を入れた香典袋を入れ、さらにお悔やみの手紙を添えるのがマナーです。
封書やはがきでお悔やみの手紙を送る
遺族が香典を辞退している場合や、代理の人に香典を持参してもらった場合は、封書やはがきでお悔やみの手紙を送ります。
LINEやメールなどでお悔やみを伝える
普段メールなどでやりとりしていて住所が分からない場合は、普段やりとりしている方法でお悔やみを伝えても構いません。
お悔やみの手紙を送るタイミング
お悔やみの手紙を封書やはがきで出すか、香典に添えて送りたいと考えた場合は、初七日までに送るようにしましょう。
初七日とは、亡くなってから七日目のことです。
訃報を受け取ったのが葬儀の後など、初七日からずいぶん日数が経っている場合は、なるべく早く出すようにすればよいでしょう。
お悔やみの手紙を書くための道具
お悔やみの手紙を書く前に、まずは道具を揃えます。
できれば薄墨の筆ペン
故人が亡くなってから日数が経っていない間は、薄墨の筆や筆ペンでやりとりをするのが良いとされています。
薄墨は、「悲しみの涙で墨が薄くなってしまった」ことを指すためです。
薄墨の筆ペンは、スーパーやコンビニの文具売り場などでも手に入ります。
一本持っておくと、香典袋の表書きなどにも便利に使えます。「筆ペンが苦手」という人は、グレーインクのボールペンを使うのも手です。
ただ、適した文具を手配する時間がない人もいるでしょう。
そんなときには、黒のボールペンでもマナー違反にはなりません。
無地の便せんと一重の封筒
封書の場合は、無地の便せんと封筒を使いましょう。
できれば白が好ましいですが、水色や藤色など、落ち着いた色合いであれば使っても構いません。
ただし黄色やピンクなど華やかな色味は避けましょう。
また、封筒は二重封筒を使わないよう気をつけます。
二重封筒は「不幸が重なる」ことを連想させるためです。
はがきと切手
はがきの場合は、無地の官製はがきか私製はがきを用意します。
弔事用のはがきとして、薄墨や藤色などの落ち着いた色味で花が描かれているものが販売されており、それらを使っても構いません。
ただし蓮の花は仏教特有のモチーフなので、仏教式以外で葬儀を行った人に蓮の花があしらわれたはがきを送るのはやめましょう。
私製はがきの場合は、切手を貼ります。
一般的に使われているデザインか、弔事用の切手を使いましょう。
記念切手など変わったデザインの切手は避けます。
文面のマナー
お悔やみの手紙で気をつけたいのは、以下の6つです。
文面を1枚に収める
お悔やみの手紙は1枚で済ませるのがマナーです。
2枚以上になると「不幸が重なる」ことを連想させるためです。
一般的な手紙の場合、1枚で終わる手紙には白紙の2枚目をつけるというマナーがありますが、お悔やみの手紙では2枚目をつけません。
喪主から見た故人を考えた敬称をつける
故人について触れる文章を書くときには、喪主と故人の関係性に気をつけて敬称を使いましょう。
主な関係と敬称は、以下の通りです。
喪主と故人の関係性 | 敬称 |
喪主が子、故人が父 | ご尊父様、お父様 |
喪主が子、故人が母 | ご母堂様、お母様 |
喪主が妻、故人が夫 | ご主人様 |
喪主が夫、故人が妻 | 奥様、奥方様 |
喪主が親、故人が息子 | ご子息様 |
喪主が親、故人が娘 | ご息女様 |
時候のあいさつを省略する
お悔やみの手紙では、頭語や時候のあいさつを使いません。
お悔やみを表す言葉から入ります。
忌み言葉を避ける
忌み言葉とは、使ってはいけない言葉のことです。
葬儀の忌み言葉は、不幸が繰り返されることを連想させる言葉(「ますます」「いよいよ」などの重ね言葉や「続いて」「また」など)、不吉な言葉(「浮かばれない」「迷う」など)、生死を直接連想させる言葉(「死ぬ」「生きていた頃」など)です。
他の話題について書かない
お悔やみの手紙では、弔意を伝えることに終始します。
追伸などで、他の話題について書くようなことはしません。
返事を催促する内容は避ける
返事の催促は遺族の負担になります。
「お返事お待ちしております」といった催促する文面は避けましょう。
最後に文章を見直して、返事をしなければならないと思わせるような内容になっていないか気をつけます。
お悔やみの手紙の例文
お悔やみの手紙は、以下の3つで構成すると書きやすくなります。関係性にあわせて、カッコ内の文面を添えるとなお、心のこもった文章になります。
■1.お悔やみのあいさつ
(訃報を受けての自分の気持ち)
■2.葬儀に出られなかったことを詫びる文章
(遺族をいたわる言葉)
■3.故人の冥福を祈る締めの言葉
以上を踏まえた、お悔やみの手紙の例文をご紹介します。
【簡素なお悔やみの手紙】
ご尊父様のご逝去の方に接し、心よりお悔やみ申し上げます。
本来であればご葬儀に伺うべきところですが、事情によりお手紙のみとなり、誠に申し訳ありません。
まずは書中にて、謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
【香典を同封したお悔やみの手紙】
ご尊父様のご逝去の方に接し、心よりお悔やみ申し上げます。
本来であればご葬儀に伺うべきところですが、事情によりお手紙のみとなり、誠に申し訳ありません。
心ばかりのものではありますが、御香典を同封しました。どうか御霊前にお供えください。
まずは書中にて、謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
【少し長めに気持ちを伝えるお悔やみの手紙】
ご尊父様のご逝去を悼み、謹んでお悔やみ申し上げます。
突然の訃報に、大変驚きました。
ご家族の皆様のお嘆きいかばかりかと拝察いたします。
ご葬儀に伺いたいと考えておりましたが、事情により叶いませんでした。
このようなお手紙でのお悔やみとなりましたこと、お許しください。
私にできることがございましたら、いつでもご連絡ください。
まずは書中にて、ご冥福をお祈り申し上げます。
【喪主が親しい間柄の場合に送るお悔やみの手紙】
お母様のご逝去を悼み、謹んでお悔やみ申し上げます。
ずっと心を込めて看病されていたことを知っていたので
あなたをはじめご家族の皆様の悲しみを考えると、胸が苦しくなります。
私が遊びに行ったときにも笑顔で迎えてくれ、優しいお母様と感じていました。
このたびは遠方につき、ご葬儀に出られず本当に申し訳ありません。
辛いときはいつでもお話を聞かせてください。
最後になりましたが、お母様のご冥福をお祈りしています。
●立場や日頃の関係性を踏まえて書こう
以上、葬儀に行けなかった場合に書くお悔やみの手紙について解説しました。
お悔やみの手紙にはマナーがありますが、親しい間柄の人に形式的な手紙を書くと「他人行儀で寂しい」と感じられてしまう恐れがあります。
一方で、立場が上の人にフランクな文章を送ると、失礼と受けとられてしまう恐れもあります。
マナーを守りつつ、日頃の関係性を踏まえた文章にすると、より想いが伝わるでしょう。
この記事を書いた人
奥山 晶子
葬儀社への勤務経験、散骨を推進するNPO「葬送の自由をすすめる会」の理事の経験、遺品整理関係の著書・サイト制作サポートなどから、終活全般に強いライター。ファイナンシャルプランナー(2級)。終活関連の著書3冊、監修本1冊。最近の著書は「ゆる終活のための親にかけたい55の言葉」オークラ出版。ほか週刊現代WEBなどサイトへの終活関連コラム寄稿、クロワッサン別冊「終活読本」の監修や、令和6年5月発刊「ESSE」6月号のお墓特集を監修している。