相続税の非課税額はいくら?お金がなくても持ち家がある人は要注意
更新:2024.07.05
相続が発生すると、相続税がかかる人は相続税申告を行い、税金を納めなければなりません。
「相続税なんて、お金持ちにかかるもの」と思っていませんか。
実は、利便性の高い土地に一軒家を持っていたり、子どもが一人だけなど相続人が少なかったりすると、相続税がかかってしまう可能性が高まります。
相続税の仕組みや非課税額、知っておくべき注意点などを解説します。
目次
相続税の概要と納付期限
相続税とは、亡くなった親などから遺産を受け継いだ場合にかかる税金です。
現金の他、自宅などの不動産、証券類、骨董品、宝飾品、車など全てが遺産の対象になり、遺産の総額に相続税がかかります。
相続税には非課税額があり、非課税額にあたる部分までは、相続税がかかりません。
この非課税額を、相続税の基礎控除額といいます。
相続税は、被相続人(亡くなった親など)の死を知った日(通常は死亡日)の翌月から10カ月以内に納付します。
相続税の申告書の提出先は、被相続人の住所地を所轄する税務署です。
相続した人の住所地を管轄する税務署ではないため、注意が必要です。
相続税の非課税額は相続人の数によって違う
相続税の非課税額、つまり基礎控除額は、以下のように算出されます。
3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
法定相続人が少ない場合は、基礎控除額も少なくなります。
よって、相続税がかかる可能性が高まるといえるでしょう。
法定相続人の数え方
「法定相続人」とは、法律で定められた、遺産を相続できる人を指します。
実際に遺産を相続するか否かにかかわらず家系図から計算することになるため、相続放棄者も数に含まれます。
ただし、何らかの理由で欠格・廃除された人は含みません。
欠格とは、例えば犯罪を行ったなどの理由で相続人の資格がないとみなされることです。
廃除とは、被相続人が生前に家裁に申し立て、相続権を失わせることです。
ただし廃除者の子どもは法定相続人になります。
具体的にどんな人が法定相続人になるかは、以下の通りです。
どんな場合でも配偶者は相続人となり、配偶者以外は、順位の高い人が相続人となります。
必ず相続人になる人:配偶者
第一順位:子や孫(直系卑属)
第二順位:親や祖父母(直系尊属)
第三順位:兄弟姉妹
例えば子や孫がいる場合、親や祖父母は相続人になりません。
子や孫がいなければ親や祖父母が配偶者とともに相続人となりますが、兄弟姉妹はなれません。
なお、実子以外でも相続人になれます。
非嫡出子、普通養子、特別養子、胎児もOKです。
ただし相続税対策で法定相続人を増やすのを防ぐため、法定相続人の数に含める養子の数は制限されています。
被相続人に実子がいる場合、養子の数は1人まで法定相続人に含めます。
実子がいない場合は2人までです。
相続税の基礎控除額シミュレーション
仮のケースを使って、基礎控除額を計算してみましょう。
【父親が亡くなり、母親は存命。亡くなった父の子どもは2人で、2人とも存命】
法定相続人は、配偶者である母親と、第一順位である2人の子どもで、合計3人です。
基礎控除額は、
3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円です。
【父親が亡くなり、母親は存命。亡くなった父の子ども兄弟2人のうち、兄がすでに死亡。兄には子どもが2人いる】
被相続人の子が亡くなっている場合、子の子(被相続人の孫)は実子と同様の扱いを受ける代襲相続人になります。
法定相続人は、配偶者である母親と、弟、兄の子2人の合計4人です。
基礎控除額は、
3,000万円+(600万円×4人)=5,400万円です。
【男性Aが死亡し、その妻Bはすでに死亡。子どもはおらず、Aの父母のうち母親が健在】
子も孫も存在しない場合、第二順位である親世代が法定相続人となります。
Aさんの親のうち、母親だけが存命なので、法定相続人は1人です。
基礎控除額は、
3,000万円+(600万円×1人)=3,600万円です。
【独身を貫いた男性Cが亡くなり、Cの父母はすでに亡く、兄弟が5人いる】
第一順位も第二順位も存在しない場合は、第三順位の兄弟姉妹が法定相続人となるため、法定相続人は5人です。
基礎控除額は、
3,000万円+(600万円×5人)=6,000万円です。
相続税は遺産の全体にかかる
相続税は、遺産全体の価額にかかります。
例えば不動産が複数個あったとして、それぞれの不動産に相続税がかかるわけではありません。
不動産、現金、証券類、宝飾骨董類など全ての遺産の価額を合算した金額から、基礎控除額を引いた額が、課税される価額となります。
よって、まずは遺産全体の価額を押さえる必要があります。
全ての財産を目録に並べ、価額を算出し、それらを全て合算しましょう。
お墓や葬儀に使ったお金は遺産から差し引ける
遺産総額が算出されたら、次は、遺産から差し引くことのできる費用をまとめます。
遺産から差し引くことができるのは、以下の費用や財産です。
葬式費用
葬儀の義式や火葬、埋葬、納骨にかかった費用を差し引くことができます。
お布施も差引対象です。
ただし香典返しの費用は含まれません。
債務
ローンや未払い料金がある場合は、遺産から差し引くことができます。
非課税財産
お墓や仏壇など、すでにある祭祀用の財産は非課税です。
また、国や地方公共団体、特定の公益法人等に寄付した財産も差し引くことができます。
なお、生命保険金のうち、「500万円×法定相続人の数」までは課税されません。
死亡退職金についても生命保険金と同様で、「500万円×法定相続人の数」までは非課税です。
被相続人が亡くなる数年前までの贈与財産に注意!
被相続人が亡くなる7年前までに、相続人が贈与を受けているときは要注意です。
亡くなる前の一定期間の贈与は、相続財産に加算されるためです。
すでに贈与税を納付した後であれば、贈与税額は相続税額から控除される形で戻され、新たに相続税を納めることになります。
2023年までは、被相続人が亡くなる「3年前まで」の贈与財産が相続財産に持ち戻されるというルールでした。
しかし、2024年1月1日からは、「7年前まで」というルールに変わりました。
ただ、ややこしい話と思われるかもしれませんが、この法改正が適用されるのは2024年1月1日から行う贈与です。
2023年12月31日までに行った生前贈与には、これまでどおり「3年前まで」というルールが適用されます。
つまり、2026年12月31日までは、亡くなる「3年前まで」の贈与分が持ち戻しになると考えてよいのです。
また、3年以内の贈与についてはそのまま加算されますが、4~7年前の贈与については、総額100万円まで加算対象外となります。
相続税は誰が納める?
相続税は、遺族の誰かが代表して納めるわけではありません。法定相続人や遺言によって遺産をもらった人など、遺産を相続した全ての人が、それぞれの取得金額に応じて支払います。それぞれの立場により控除額が違うため、計算が少し面倒です。よって相続税の計算を税理士にお願いする人もいます。
各相続人の税額控除には、配偶者の税額軽減、未成年者控除、障害者控除などがあります。また、兄弟姉妹が遺産を取得すると、算出税額に2割が加算されます。
まずは相続税の非課税額を計算してみましょう。そして課税対象となる遺産総額を算出した上で、課税遺産総額が非課税額を超えそうだと思ったら、税理士に相談するのがおすすめです。
税理士に相談するのではなく、なるべく自力で計算したい方は、国税庁のホームページを参照しながら計算してみてください。
参照:以下、いずれも国税庁ホームページより
4102 相続税がかかる場合
4103 相続時精算課税の選択
4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
4155 相続税の税率
4157 相続税額の2割加算
4158 配偶者の税額の軽減
4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)
4164 未成年者の税額控除
4167 障害者の税額控除
4168 相次相続控除
4170 相続人の中に養子がいるとき
この記事を書いた人
奥山 晶子
葬儀社への勤務経験、散骨を推進するNPO「葬送の自由をすすめる会」の理事の経験、遺品整理関係の著書・サイト制作サポートなどから、終活全般に強いライター。ファイナンシャルプランナー(2級)。終活関連の著書3冊、監修本1冊。最近の著書は「ゆる終活のための親にかけたい55の言葉」オークラ出版。ほか週刊現代WEBなどサイトへの終活関連コラム寄稿、クロワッサン別冊「終活読本」の監修や、令和6年5月発刊「ESSE」6月号のお墓特集を監修している。