葬儀で弔辞を依頼されたら?立場別の例文をご紹介

更新:2024.09.06

会社や地域で責任ある立場になると、関係者が亡くなったときに弔辞を読んでほしいと依頼される場合があります。

また、親しかった友人が亡くなったら、ぜひ葬儀で弔辞を読みたいと考える人もいるでしょう。

この記事では、社会人としてマナーをわきまえた弔辞にするために、弔辞を作るとき気をつけたいことや、文章構成のルールについて解説します。

また、立場やシチュエーション別に例文をご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

弔辞は依頼されたら辞退しないのがマナー

弔辞の一番大事なマナーは、依頼されたら辞退しないことです。

「私よりもふさわしい人がいる」など、謙遜の気持ちから辞退したくなる人もいるかもしれません。

しかし、遺族は紛れもなくあなたに弔辞を依頼したいのであり、もし断られたら、また人選を行わなければなりません。

それは遺族の負担になります。

もし、どうしても外せない用事があり葬儀に参列できない場合は、遺族に直接その旨を伝えて謝り、代わりの弔辞者を具体的に提案しましょう。

遺族の了解を得たら、代わりの弔辞者には自分がコンタクトを取り、事情を説明して遺族に繋ぎます。

遺族の負担を最小限に抑えるため配慮しましょう。

弔辞は読みたいと申し出ることができる

弔辞は、自分から読みたいと申し出ることもできます。

葬儀のスケジュールに組み込む必要があるため、可能な限り早い段階で遺族に連絡するのがマナーです。

できれば、訃報を聞いたらすぐ、お悔やみの言葉とともに申し出を行いましょう。

弔辞をつくるときの注意点

弔事の内容を考える男性

弔辞の文章について具体的に解説する前に、基本的な注意点をご案内します。

弔辞の長さは3分程度、1000字ほどをゆっくり読む

弔辞は、1分から5分の間に留めるのがマナーです。

葬儀の進行に差し障りが出るため、あまりに長い弔辞は控えなければなりません。目安は3分程度です。

400字詰めの原稿用紙1枚をゆっくり読むと、ちょうど1分ほどになります。

3分なら1200字です。1000字ほどを目安に書くといいでしょう。

弔辞の正式な原稿は奉書紙に薄墨の毛筆で書く

弔辞の原稿は、便箋にボールペン書きや、パソコンで打った原稿をA4用紙に印刷しても構いません。

しかし、社葬の場合や団体を代表して弔辞を読む場合は、なるべく丁寧な原稿にしましょう。

弔辞は、正式には、奉書紙に薄墨の毛筆でしたためます。

奉書紙も、薄墨の筆ペンも文房具店で手に入ります。

奉書紙は2枚用意し、1枚に弔辞を書き、2枚目は半分に切って包み紙としましょう。

毛筆に慣れていない場合やゆっくりと弔辞をしたためる時間が取れない場合は、万年筆でも構いませんし、パソコンを使っても構いません。

後で遺族が読み返すことを想定し、丁寧に仕上げましょう。

忌み言葉を使わない

かしこまった席で使ってはいけない言葉を「忌み言葉」といい、葬儀にも忌み言葉があります。

葬儀の忌み言葉として代表的なものが「重ね言葉」です。

「いよいよ」「ますます」など同じ言葉を2つつなげた言葉は縁起が悪いとされているため避けましょう。

また、「死んでしまった」「亡くなった」など死を直接連想させる言葉や、「苦しい」「辛い」「浮かばれない」など苦しみを表現する言葉も控えます。

弔辞の文章構成は4つに区分される

弔辞は、次の4つの構成を意識すると、まとまった文章が作れます。

■1.故人へ哀悼の意を表する

まずは故人へ哀悼の意を表します。

一言だけでも結構です。

■2.自分の立場を述べる

参列者に自分が何者なのかを知らせるためにも、自分と故人との関係について簡潔に述べます。

■3.故人の人柄や功績がわかるエピソード

このエピソード部分を一番厚くします。エピソードは1つか2つで十分です。

参列者が状況や故人の人柄をしっかりイメージできるよう、丁寧に書きます。

■4.遺族へお悔やみの言葉を述べる

最後に、お悔やみの言葉を述べて締めとします。

葬儀における【立場別】弔辞の例文

弔辞にふさわしい文章は、立場によっても違います。

さりげない自己紹介の仕方、人柄や功績の示し方、締め方など、ぜひ参考にしてください。

例文1【地域の役員として弔辞を読む場合】

故○○○○さんの御霊前に、第一町内会会長として、慎んで哀悼の意を表します。

あなたは○○町第一町内会の一員として、地域の活性化および美化、通学中の児童見守りなどさまざまな面で大いに力を尽くされました。

定年退職されてからはますます地域福祉に貢献され、他の町内会との合同キャンプや○○神社の祭りの際に率先して役員を務め、とりまとめ役として活躍されました。

その積極性と誠実さから地域の皆に慕われ、とくに昨年の11月、あなたが病を押して文化祭に参加されたときは、驚きと喜びで歓声が沸き上がりました。

あなたがもう町内会の行事に参加されることはないと思うと、誠に寂しくてなりません。

何事にも真摯に取り組んでいたあなたの一生懸命さを胸に、今後も若手を率い、地域の発展に尽力することを誓い、お別れの言葉といたします。

どうか安らかにお眠りください。

例文2【社葬で取引先の代表として弔辞を読む場合】

株式会社○○ ○○○○社長の御霊前に、慎んで哀悼の意を表します。

○○社長は、私ども△△△株式会社の恩人です。

○○社長が専務でいらっしゃった頃、弊社営業のお目通しが叶い、お取引を願う運びとなりました。

それから15年にかけて信頼関係を築き、市況の良いときも悪いときもコミュニケーションを取りあいながら共に歩ませていただき、本日に至っております。

長きにわたってお取引をいただけているのも、○○社長が私どもをときには励まし、ときには改善点をご指導いただきながら、強い絆を結ぼうとご尽力くださったからです。

昨今の原料高に際しても、私どもがやむなく値上げの判断を行い、報告とお願いを申し出たところ、一も二もなく快諾いただきました。

こうした懐の深さ、人情味溢れるお人柄は、同じ業界の私どもと似たような立場の取引業者にも伝わっていたのではないでしょうか。

ここに○○社長のご生前のご功績を偲び、これまでのお導きに感謝申し上げ、お別れの言葉といたします。

心よりご冥福をお祈り申し上げます。

例文3【友人代表として弔辞を読む場合】

○○さんのご逝去を悼み、ここにお別れの言葉を申し上げます。

○○さんとは小学校の頃からの付き合いで、子ども時代には虫取りや川遊び、サッカー、野球など、たくさんの遊びを共に楽しみました。

大人になってからも家族ぐるみでお付き合いさせていただき、このたび定年を迎えて第二の人生をと2人で語りあっていましたのに、残念でなりません。

今日、私がこの場に立って、このようなお手紙を読んでいること、未だに信じられません。

○○さんが入院する少し前のことが、昨日の出来事のように想い出されます。

私が家へ訪ねていくと、○○さんが倉庫から埃まみれで現れました。

少年の頃のような笑顔で、目を輝かせて「俺たちが使っていたサッカーボールを見つけたよ。孫ができたら一緒に遊ぼう」とボールを抱きかかえていました。

私は「そんな古いボール、使えるかどうか」と笑ってしまいましたが、○○さんは本気でした。

残されたご家族の皆さんは、さぞお淋しいことと存じます。

ただ、想いのこもった古いサッカーボールしかり、○○さんがご家族に残されたものは膨大であると存じます。

○○さん、どうか安らかにお眠りください。

あなたの存在は、残された私たちの中で生き続けます。

まとめ

弔辞を作るときには、良い文章にしようと思えば思うほど、時間がかかってしまいがちです。

しかし現代では、以前ほど改まった言葉や表現が求められず、故人とのエピソードを具体的に語ったり、自分の想いを率直に表したりした方が好印象を持って受け止められる傾向にあります。

素直な気持ちで故人と向き合い、お別れを悔やむ気持ちを素直な言葉にしましょう。

この記事を書いた人

奥山 晶子

葬儀社への勤務経験、散骨を推進するNPO「葬送の自由をすすめる会」の理事の経験、遺品整理関係の著書・サイト制作サポートなどから、終活全般に強いライター。ファイナンシャルプランナー(2級)。終活関連の著書3冊、監修本1冊。最近の著書は「ゆる終活のための親にかけたい55の言葉」オークラ出版。ほか週刊現代WEBなどサイトへの終活関連コラム寄稿、クロワッサン別冊「終活読本」の監修や、令和6年5月発刊「ESSE」6月号のお墓特集を監修している。

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