葬儀費用の補助金には何がある?埋葬料、葬祭費、年金関係について知っておこう

更新:2024.07.26

葬儀を行うと、補助金のような形で現金が支給されることをご存じでしょうか。

葬祭費や埋葬費は、葬儀を行った人がもらえるもので、どんな保険に入っていたかによって申請先が違います。

また、故人が国民年金や厚生年金に加入していると、遺された家族は遺族給付をもらえる可能性があります。

葬儀費用の補助金ともいえる給付金について、詳しく解説します。

葬儀費用の補助金制度とは?

葬儀が発生すると、遺された家族にさまざまな形で補助があります。

「補助金」は、正確には事業者の取り組みをサポートするために国が行う資金給付をいいます。

しかし葬儀後の給付は、100万円、200万円規模の大きなお金が出ていった葬儀の後に、遺族を助けるためのもの。

「補助金」と表現する人が多いのも頷けます。

葬儀費用を補助してくれる給付金には、以下のようなものがあります。

・葬祭費(国民健康保険、後期高齢者医療制度加入者)

・埋葬料(費)(健康保険などの加入者)

・遺族基礎年金

・寡婦年金

・死亡一時金

・遺族厚生年金

それぞれ順に解説するため、自分はどの給付を受けられるのか確認してみましょう。

なお、広島県にお住まいの方は、下記の記事をご覧ください。広島県内の市町別窓口をご確認いただけます。

国保加入者や後期高齢者医療制度被保険者に給付される葬祭費

国民健康保険や、後期高齢者医療制度の被保険者が亡くなったときには、市区町村から葬祭費が支給されます。

故人が会社や団体に勤務していなければ、葬祭費の対象であると考えていいでしょう。

迷った場合は、故人の保険証を確認してみましょう。

葬祭費の支給金額は3万~7万円で、市区町村によって違います。

市区町村の公式サイトで金額が公開されているケースが多いため、事前に知りたい場合は「○○市 葬祭費」などで調べるのがおすすめです。

葬祭費の申請期限は、葬儀を行った日から2年以内です。

ただ多くの場合、健康保険証を返却するため役所へ出向いたときに、葬祭費の対象であることを伝えられるでしょう。

その際、該当する窓口を案内してもらい、同時に手続きしてしまえば二度手間になりません。

健康保険証の返却期限は、死亡日から14日以内です。

ただし保険証返却と同時に手続きするためには、必要書類を持参しなければなりません。

葬祭費の申請には、以下の書類等が必要です。

・故人の保険証(未返還の場合)

・喪主を確認できるもの(会葬礼状や葬儀費用の領収書など)

・振込先口座の分かるもの(通帳など)

・印鑑(申請者が自著する場合は押印を省略できる場合あり)

・委任状(喪主と別世帯の人が申請手続きをする場合)

健康保険加入者に支給される埋葬料

故人が、会社員などが加入する健康保険の被保険者であった場合は、葬儀を行う家族に5万円が支給されます。

なお、被保険者の家族であり、被扶養者であった人が死亡したときも、加入者に5万円が支給されます(家族埋葬料)。

埋葬料を受けられる人がいない、つまり故人に家族がいない場合は、実際に埋葬を行った人に「埋葬費」が支給されます。

埋葬費の金額は、5万円の範囲内で実際に埋葬に要した費用です。

ただし、埋葬料や埋葬費が支給されるのは業務外の事由により亡くなった場合です。

業務上の事故などで亡くなった場合は、労災保険の葬祭料の対象になるため、埋葬料(費)は支給されません。

埋葬料は、亡くなった日から2年以内に協会けんぽの年金事務所や企業の組合に申請します。

どこへ行けば良いか分からない場合は、故人の勤務先に聞いてみましょう。

必要書類は、組合によって違う可能性があります。例として、協会けんぽの必要書類についてリンクを掲載しておきます。

場合によって必要書類が異なるため、よく確認しましょう。

参考:健康保険料埋葬料(費)支給申請書(全国健康保険協会)

公務員に支給される埋葬料・埋葬料附加金

公務員が業務外で亡くなったときは、共済組合から埋葬料・埋葬料附加金が支給されます。

また、加入者の被扶養者が亡くなったときも、家族埋葬料・家族埋葬料附加金が支給されます。

公務員が公務中や通勤中に亡くなった場合は、埋葬料とは別の遺族給付があります。

公務員の埋葬料は、どの組合に加入しているかで支給金額が違います。

例えば、公立学校共済組合の場合、埋葬料は5万円、埋葬料附加金は2万5,000円です。

農林水産省共済組合の場合は、埋葬料・埋葬料附加金ともに5万円です。

提出書類は、おおむね次の通りです。

・埋葬料・埋葬料附加金請求書(各組合が定める書式)

・埋葬許可証または火葬許可証の写し

・埋葬費用の領収証の写し(被扶養者以外が請求するとき)

18歳までの子または子のある配偶者に支給される遺族基礎年金

遺族基礎年金について調べる家族

公的年金の被保険者や、被保険者であった年金受給者が死亡したときは、死亡した人に生計を維持されていた子、または子のある配偶者に遺族基礎年金が給付されます。

詳しい条件は以下の通りです。

【亡くなった人の条件】

・国民年金の被保険者

(保険料納付済期間と免除期間を足した期間が年金加入期間の2/3以上あること)

・国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の人

(保険料納付済期間と免除期間を足した期間が年金加入期間の2/3以上あること)

・老齢基礎年金の受給権者

(受給資格期間が25年以上あること)

・老齢基礎年金の受給資格を満たしている

(受給資格期間が25年以上あること)

以上4つのうちいずれかに該当すること

【遺族(子)の条件】

・18歳到達年度の末日(18歳になって最初の3月31日)までの未婚子

(多くの場合、高校3年生まで)

・20歳未満で障害者等級1級または2級に該当する未婚子

また、厚生年金に加入している人は、国民年金にも加入しています。

よって厚生年金の加入者も、上記の条件を満たしていれば老齢基礎年金の受給要件に当てはまります。

遺族基礎年金の受給額は、老齢基礎年金の満額+子の加算額です。

子の加算額は、配偶者が受け取る場合、第1子、台2子は各22万8,700円で、第3子以降は各7万6,200円です。

老齢基礎年金の満額は、2024年度の場合、81万6,000円です。

よって子が1人の場合、年間104万4,700円の遺族基礎年金が受け取れます。

遺族基礎年金を受給できない配偶者は寡婦年金か死亡一時金がもらえる可能性がある

高校生までの子を持たない配偶者は、遺族基礎年金を受け取れません。

ただし、故人が国民年金の第1号被保険者であった場合に限り、寡婦年金と死亡一時金のいずれかを受け取れます。

寡婦年金の受給資格

寡婦年金は、受給資格期間(10年以上)を満たした夫が、年金を一切受け取らずに死亡した場合に、妻が受給できます。

同じ配偶者ではありますが、夫は受給できません。また、夫との婚姻期間が10年以上あることも条件になります。

受給期間は、妻が60歳から65歳に達するまでの間です。

寡婦年金の支給額は、夫が受け取れる予定だった老齢基礎年金額の4分の3です。

死亡一時金の受給資格

第1号被保険者としての国民年金保険料の納付済期間等が合計3年以上あった人が、年金を受け取らずに死亡し、遺族が遺族基礎年金を受け取れない場合に受給できます。

寡婦年金とは違い、妻でなくても家族であれば受け取れます。受け取れる家族と優先順位は、1・配偶者、2・子、3・父母、4・孫、5・祖父母、6・兄弟姉妹です。

死亡一時金の支給額は、保険料を納めた月数で決まります。

12万円から32万円の範囲内です。

一定の家族がもらえる遺族厚生年金

厚生年金被保険者が亡くなったとき、故人や遺族が次の要件を満たしている場合に遺族厚生年金を受給できます。

【故人の条件】

・厚生年金加入者あるいは厚生年金加入中の傷病が元で初診の日から5年以内に亡くなったとき

(保険料納付済期間と免除期間を足した期間が年金加入期間の2/3以上あること、または直近1年に滞納がないこと)

・老齢厚生年金を受け取っている、または受給資格期間を満たしている人が亡くなったとき

(受給資格期間が25年以上あること)

・1級・2級の障害厚生年金を受け取っている人が亡くなったとき

【遺族の条件】

次のうち優先順位の高い人にのみ支給されます。

第1順位:夫(55歳以上)・妻(年齢要件なし)・子

第2順位:父母(55歳以上)

第3順位:孫

第4順位:祖父母(55歳以上)

遺族厚生年金額は、老齢厚生年金の報酬比例部分×3/4です。被保険者期間が300月に満たないときは、300月で計算します。

また、夫の死亡当時、30歳未満で子どもがいない妻は支給期間が最長5年になります。

葬儀費用の補助金をもらって、故人亡き後も安定した暮らしを

とくに一家の大黒柱を失った場合は、その後の生活に不安が生まれてしまいます。

自身がどの給付に該当するかを調べて、受給できる場合はしっかり受け取りましょう。

よくわからないときは故人の保険証を確認して、国民健康保険であれば役場へ、健康保険であれば勤務先へ問い合わせを。

この記事を書いた人

廣田 篤  広島自宅葬儀社 代表

葬儀業界23年、広島自宅葬儀社代表。厚生労働省認定技能審査1級葬祭ディレクター。終活カウンセラー。前職大手葬儀社では担当者として 1500 件、責任者として1万件以上の葬儀に携わる。実母の在宅介護をきっかけに広島自宅葬儀社を立ち上げて現在に至る。広島市内だけでなく瀬戸内海に浮かぶ島々から、山間部の世羅町、神石高原町まで広島県内あらゆる地域の葬儀事情に精通する広島の葬儀のプロ。身内の死や介護の経験、数々の葬儀を通じての縁から「死」について考え、文章にすることをライフワークとしている。

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