家族葬で通夜なしってどんな葬儀?人によって異なる「通夜しない」の認識
更新:2023.04.05
参列者を親族などの近い方々に限定した家族葬が一般的になる中、コロナ禍になり、通夜をしない家族葬も増え始めています。
ここで「通夜をしない家族葬」と聞いた時、あなたは通夜の何をしない家族葬と連想しますか?
「通夜をしない」という言葉は人によって連想するものが異なる場合があり、注意が必要だと常々感じています。
時代と共に通夜の意味が変化していったことで、「通夜をしない」という言葉も人によって捉え方が変わるのです。
そのあたりを踏まえて、この記事では通夜をしない家族葬とはどんな葬儀なのか、誤解を生みやすい注意点と共にわかりやすく解説させていただきます。
本来の通夜とは
本来、通夜とは火葬前日、最後の夜を指します。
昔は最後の夜を故人の側で過ごす夜伽という風習が全国各地でありました。
夜通し側で過ごすということから「通夜」と呼ばれるようになりました。
通夜は特定の儀式を指すのではなく、火葬前日の夜全体を指す言葉でした。
近年はこのような通夜の過ごし方をされる方はあまり見られなくなりましたが、「通夜をしない」という言葉は、人によっては「夜通し故人の側で過ごすことをしない」という捉え方をされる方もいらっしゃると思います。
現代の通夜
現代の通夜は「火葬前日の夜全体」というよりは「通夜式」を指すことのほうが多くなりました。
○○家 通夜□□月△△日18時という案内を見かけたことがある方も多いと思います。
通夜の読経が行われる時間に合わせて故人と生前に縁のあった方々が集まるようになりました。
「通夜をしない」と聞いて、この通夜式をしないという意味だと捉える方も多いのではないでしょうか。
このように「通夜式」を略して「通夜」と呼ぶことも多くなっていますが、意図的に略している方もいれば、知らないうちに通夜と略している方もいらっしゃるでしょう。
東京を中心とした関東の通夜式
東京を中心とした関東の通夜式は、一般弔問客が参列する場として位置付けられるようになりました。
例えば友人の祖母に不幸があった時、東京では通夜へ参列するのが一般的で、翌日の葬儀は親族のみで行う場とされ、一般の方は参列しないことが多いです。
通夜に訪れた一般弔問客は、焼香を済ませた人から別室の食事会場に移動して、喪家が用意された食事、通夜振る舞いをいただいて帰宅します。
関東では「今日は通夜に行ってくるから、夕飯はいらないから」という会話が自然に出てくるほど、通夜へ参列=食事をいただいてから帰宅する日というイメージが一般的でした。
この関東式の通夜に馴染みのある方にとって、「通夜をしない」というのは、一般弔問客を招いて通夜振る舞いをしないという意味だろうと解釈されてもおかしくありません。
通夜をしないには3通りの受け止め方がある
先述したように「通夜をしない」という言葉には、3通りの受け止め方があります。
1.夜通し故人のそばで過ごすことをしない
2.通夜式をしない
3.通夜振る舞いという食事の場を設けない
通夜はせず、葬儀だけをおこなうとAさんとBさんが双方に頷いて共通認識を持っていたとしても、1~3の何をしないと決めたのか、細部まで話してみないと双方の認識がずれていることもあるのです。
家族葬の需要が増えた結果、通夜をしない家族葬が生まれた
全国的に最近の葬儀の多くは家族葬で行われています。
故人と近い親族のみが参加して送る家族葬が多くなり、一般参列者が通夜・葬儀の場へ足を運ぶ機会も一時期に比べて減っております。
家族葬が増えていくと、関東では一つの疑問が生まれます。
「私たちは家族葬をするのだから、一般弔問客は来ない。それなら一般弔問客へ振る舞う通夜振る舞いを用意する必要がなくなる。つまり通夜を省略してもいいということ?」
主に一般参列者が弔問する場として存在していたのが通夜だったため、家族葬が増えていく中で必要性を感じる方が減っていったのです。
そこで生まれたのが通夜を省いて葬儀告別式のみを行う一日葬というスタイルでした。
東京など関東で生まれたこのスタイルは当初、家族葬のため通夜振る舞いの席が不要という葬儀が増えていき、それがきっかけになりました。
通夜は一般参列者が弔問する場、一般参列者に食事を振る舞う場という認識の方が多い関東では、お通夜は省いても良いのではという考えが生まれるのは自然な流れでした。
流行の最先端である東京で始まったこの一日葬は、時間の経過と共に全国へ波及していきます。
一般参列者がいないので通夜を省略する形で関東では広まりましたが、関東以外の地域では通夜も葬儀も参列する方の顔ぶれはあまり変わらないという地域が多いのです。
通夜式を省く葬儀に疑問を感じる方も多かった印象ですが、コロナ禍で変わりました。
通夜・葬儀告別式と2回集まる機会のあったこれまでの葬儀を1回にするという形が、人が集う機会を最小限にするということで、コロナ禍で注目されました。
通夜をしない家族葬は、人が集まるのが一度になる葬儀として徐々に全国でも認知されるようになってきているのが今日です。
通夜をしない家族葬の注意点
こうして生まれた「通夜をしない家族葬」について、注意点として挙げたいのは、元々一般参列者への通夜振る舞いをしないという考えから始まったもののため、宗教儀礼を無視している点です。
例えば浄土真宗では通夜には通夜のお勤めとして通夜勤行があります。
通夜振る舞いをしない、一般参列者が来ないことと、通夜勤行を省略することは関係のないことです。
通夜の晩に通夜勤行のお勤めをいただき、翌日葬場勤行、出棺勤行、火屋勤行とお勤めをいただくのが本来の流れです。
通夜を省略することは、本来あるこの流れに背くことになることを理解した上で判断しているのかどうかが重要なポイントになります。
近年は、世の流れには逆らえないと通夜式をしない葬儀のみという一日葬に理解を示されるお寺様も増えてきましたが、憤りを感じられているお寺様もいらっしゃいます。
需要があって生まれたとはいえ、葬儀社が作った一日葬というスタイルは本来の宗教儀礼の形を崩してしまった点は否めません。
通夜振る舞いを省く意味で通夜をしないと考えていた方へ
一般参列者や親族へ通夜の食事、通夜振る舞いをしないと考えている方は、食事の場を設けないだけであって、通夜式は行うという選択もあります。
方法1.食事の席は省くけど通夜式は行う
方法2.食事の席は省き、通夜式も省く
家族葬だから、一般参列者が来ないから、食事の席は不要だから。
これら全てお寺様が通夜の晩に行う読経には関係ありません。
故人に対して行う読経であり、参加者の人数は関係ないのです。
お付き合いのあるお寺があって、ご予算や日程的にも問題のない方は、通夜振る舞いは省いて構いませんが、通夜の読経は行われたほうが良いと思います。
通夜をしない家族葬はこのような方に適している
最後に通夜をしない家族葬をするなら、このような方なら適しているという事例をご紹介させていただきます。
予算の都合
1.通夜式・葬儀告別式を2日間で行う家族葬
2.通夜はしないで葬儀告別式のみ行う家族葬
この2つの方法では葬儀社へ支払う葬儀費用も変わりますし、お寺へのお布施金額も変わります。
お葬式の予算に限りがある方は通夜をしない家族葬を検討してみてください。
但しお付き合いのあるお寺様がいらっしゃる方は、葬儀・告別式を2日間で行う家族葬を基本として考えていくことをおすすめします。
予算の都合がある場合は、葬儀スタイル以外の部分で節約できる部分を考えていきましょう。
日程の都合
現代では、家族それぞれが別々の都道府県に在住していることも珍しくありません。
それぞれが異なる場所で日常生活を送っている最中、訃報が訪れます。
仕事や学校のある方は忌引き休暇を取って駆けつけなければなりません。
それまでに入っていた約束、予定の中にはどうしても日程を外せない案件、自分ではどうすることも出来ない案件が出てくる場合もあります。
そういう中で葬儀はきちんと行いたい。予め入っていたスケジュールも予定通り進めたい。
両方を叶えるために通夜をしない家族葬を選択するという事例はよくあります。
お寺がない
元々お付き合いのあるお寺がない方、日常的にお寺と接することが少ない方は、通夜〜葬儀を通じて仏の教えや慈悲に触れながら葬儀を営むという事もあまりピンとこないという方も多いでしょう。
「お経が何もないのは周囲に何か言われそうだから」
「よくわからないけれど葬儀にはお経があるイメージだから」
付き合いのあるお寺はいないけれど、とりあえず葬儀の場で読経が必要だと感じる方の中には、読経は何度も必要ない、1度で良いと感じる方もおられるでしょう。
そういう方には通夜をしない家族葬という選択もあってよいと考えます。
この場合、故人が浮かばれない、浄土へいけないのではと心配するご家族様がいらっしゃいますが、1度の読経でもお寺様はきちんと手順を踏んでお勤めをしてくださいますのでご安心ください。希望をすれば戒名もつけてくださいます。
体力的な問題
たとえ一般参列者が来ない家族葬であっても、通夜・葬儀告別式と2日間にわたって親族やお寺との応対が行われれば、疲労も出てくるものです。
ご高齢の方が喪主を務める場合、それまでの心労や寝不足、あるいは葬儀後のことまで考えると体力的に2日間の葬儀に不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。
葬儀の日程をあえて1日余裕を持たせてゆっくり行うという方法もありますし、通夜をしない家族葬という方法を取る事も一つの選択肢でしょう。
人と応対するのが一日になりますから負担軽減に繋がる場合もあります。
しかしお寺様に通夜の読経をしていただくだけであれば、それほど負担に繋がることもありません。どちらが良いかご家族で考えてみてください。
この記事を書いた人
廣田 篤 広島自宅葬儀社 代表
葬儀業界23年、広島自宅葬儀社代表。厚生労働省認定技能審査1級葬祭ディレクター。終活カウンセラー。前職大手葬儀社では担当者として 1500 件、責任者として1万件以上の葬儀に携わる。実母の在宅介護をきっかけに広島自宅葬儀社を立ち上げて現在に至る。広島市内だけでなく瀬戸内海に浮かぶ島々から、山間部の世羅町、神石高原町まで広島県内あらゆる地域の葬儀事情に精通する広島の葬儀のプロ。身内の死や介護の経験、数々の葬儀を通じての縁から「死」について考え、文章にすることをライフワークとしている。