葬儀ローンはすぐに手を出したらいけない!葬儀屋の私がそう考える理由

更新:2022.07.13

急な葬儀という出費にお困りの方を助ける葬儀ローンという金融商品。

一見お困りの方を救う救世主のように映りますが、大切な家族を亡くしたご遺族が葬儀の為にローンをする。

葬儀が終わると、大切なあの人はいない、借金だけが残る。

これがご遺族にとって本当に最良な選択でしょうか?

葬儀ローンにすぐに手を出したらいけないと私が考える理由と、世間が知らない葬儀社の本音を葬儀社の立場からお話させていただきます。

葬儀ローンの特徴

まず葬儀ローンと言われる金融商品の特徴を見ていきましょう。

・葬儀社が提携している信販会社の商品

・銀行や信金、労金が取り扱っている商品

・葬儀という急な出費にすぐに対応できない人の味方

・分割払いができる

・利息の支払いが発生する

お葬式という突然やってくる急な出費にすぐに対応できない方へ向けての金融商品です。

まとまったお金を一括で支払うことができない方にとって、助けになる場合もあります。

ローンの利息はどのくらい?

小さなお葬式(オリコ)6回以上の分割払いの場合、分割手数料実質10%
よりそう(オリコ)6回以上の分割払いの場合、分割手数料実質10%
イオンのお葬式実質年率7.2%

例えば葬儀ローンを利用して葬儀代100万円を2年間で返済する場合、利息はいくらになるのか下記をご覧ください。

葬儀代100万円×実質年率10%÷365日×利用日数730日=利息20万円

このように利息が高いことから、葬儀ローンを利用する場合は、50万円以下にすることをおすすめします。

年収の3分の1以上の借入れを行うと、生活苦の危険が迫ると言われていますので、葬儀ローンを利用して、当初の予定よりも豪華な葬儀を行うというのは、一番やってはいけないことです。

葬儀ローンにすぐに手を出したらいけない理由

葬儀ローンは、お困りの方にとって助けになり、取り扱っていた葬儀社は感謝され、銀行や信販会社にとっては利息分が収益となり、お互いがwinwinという関係が成り立つように見えます。

ただし、ここには落とし穴があります。

葬儀ローンは、葬儀社から今すぐの支払いを求められていることが前提にあって成り立っています。

葬儀社から今すぐの支払いを求められている場合に救世主となるわけで、今すぐの支払いを求められていない場合は、救世主にならず、ただの金利の高い金融商品へと早変わりするのです。

葬儀ローンを取り扱っている事業者には、決まって下記のような文句があります。

「葬儀社への支払いは、葬儀を終えておよそ1週間〜10日が目安のようです。」

論理としては、

1.葬儀社への支払いは1週間〜10日以内が目安です。

2.そのため、すぐにまとまったお金が必要です。

3.すぐに用意ができない方は、葬儀ローンという選択肢もあります。いかがですか?

間違ってはいませんが、解決策を金融商品へ見出す前に、まだまだ別の解決方法を模索してみましょうと筆者はお伝えしたいです。

実際はご遺族の事情によって、臨機応変に対応している葬儀社は多いのです。

葬儀ローンにまつわる世間の誤解

インターネットで「葬儀ローン」と調べてみると、その多くが銀行系、オリコなど信販会社の商品紹介、金融商品へ誘導するアフィリエイト記事、大手葬儀社紹介事業サイトであることがわかります。

これらには共通している点があります。

いずれも「実際に葬儀のお手伝いをしている人ではない」のです。

これでは実情は一般の方々にはわかりません。

このような理由から世間が誤った認識をしている可能性を感じ、実際に葬儀のお手伝いをしている私が葬儀社の立場から下記の誤解を解かせていただきます。

葬儀ローンを取り扱っている葬儀社=親切とも限らない

葬儀社紹介事業者のサイトでは、「信販会社と提携して葬儀ローンを取り扱っている葬儀社であれば、今すぐ支払いが困難な場合でも安心です」とあります。

葬儀ローンを取り扱っている葬儀社は、支払いに不安がある方の味方、親切な葬儀社に映るかもしれませんが、親切とも限らない場合もあるのです。

葬儀ローンを導入している葬儀社の本音

信販会社と提携してご遺族に葬儀ローンを組んでいただくと、葬儀代の回収について完全に自社の手から離れるので、葬儀代の回収に頭を悩ませることがなくなります。

代金の未回収になることを防げるのが一番のメリットです。

デメリットとして信販会社から手数料が引かれるので、葬儀代全額が売上とはなりません。

大手葬儀社紹介事業者や地元の専門業者まで、信販会社と提携している葬儀社は幅広いですが、提携している主な理由は、葬儀代の未回収を防ぐために自社で出来る予防措置と考えているところが多い印象です。

利息が高い金融商品を遺族に勧める事に心を痛める部分も現場にはあるようです。

ご本人が望めばご利用いただくというスタンスで、積極的に勧める葬儀社は少ないと言えます。

実際は自社で分割払いに対応している葬儀社がある

信販会社と提携していなくても、葬儀代の分割払いに対応している葬儀社は、実は日本全国にたくさんあります。

このような情報は、事例がたくさん増えても困ると葬儀社は考えるので、ネット上には載っていませんが事実です。

信販会社と提携している葬儀ローンを取り扱っていないだけで、ご遺族と直接書面を交わして自社で分割払いに対応しているのです。

筆者は前職で年間数千件の葬儀を行っていた大手葬儀社に勤めていましたが、葬儀ローンを利用した葬儀は、年間数千件の中で1件もありませんでした。

代わりに信販会社を通さず、自社で分割払いに応じた葬儀は数件ありました。

このような理由から、信販会社と提携していない葬儀社は、分割払いができない融通の利かない葬儀社と決めつけるのは誤りです。

葬儀社が直接分割払いに応じるケースでは、利息をいただかない場合もあります。

どこの業者が行っているかは、直接相談して調べてみる必要があります。

葬儀ローンを導入していない葬儀社の本音

葬儀ローンを導入していない葬儀社の本音は、下記の理由から信販会社と提携する必要がないと考えているためです。

1.分割払いの要望には自社で対応するので問題ない

2.金銭的に困った遺族に利息の高いローンをさせたくない

3.信販会社に払う手数料が許容できない

自社で対応するところは、葬儀社によって対応が異なることを想定しておかなければなりません。

また、自社で対応する葬儀社は、遺族と面と向かって話を行い、解決していく形を選択している業者であるため、臨機応変な対応が期待できるのは、実はこちらの葬儀社なのです。

葬儀ローンは最終手段

では最後に葬儀ローンを検討する前に、やるべきことを順番に解説させていただきます。

1.分割払いをしなくて済む方法を模索する

まず分割払いをしなくて済む方法はないか、模索してみましょう。

葬儀の内容を見つめ直し、葬儀代を抑えることはできないか。

葬儀社の担当者へ素直に事情を話して、相談に乗ってもらうことが大切です。

葬儀代をローンするよりも、葬儀代そのものを抑えることが最優先事項です。

ローンをしなくてもお支払いできる予算はいくらなのか、葬儀担当者に伝えるのが効果的です。

「◯◯さえ我慢していただければ、予算内で出来ます」など、ご家族が想像していなかった回答が得られる確率が高まります。

葬儀屋の私としては、葬儀ローンよりも、この担当者の知恵によるアドバイスこそ、ご家族の救世主になり得ると私は思っています。

もうこれ以上は、というところまで切り詰めて、それでも支払いが難しい場合、葬儀代を捻出する方法が他にないか、ご家族で考えてみましょう。

分割払いを視野に入れるのはその先です。

分割払いになってしまう場合は、葬儀社へ直接分割払い

見直しを行った葬儀の内容と見積もり額が決まります。

それでも支払いが1ヶ月後でも厳しいと感じる場合、初めて分割払いを交渉する段階に入ります。

まだ葬儀を依頼する前の方は、検討中の葬儀社へ分割払いが可能かどうか尋ねてみましょう。

その時に月々の返済がどの程度まで可能か、返済期間の猶予なども聞いてみましょう。

態度が変わらず、親身に一緒に考えてくれる業者がおすすめです。

最終手段で葬儀ローンを少額利用する

上記で解決できなかった時、最終手段で葬儀ローンを利用しましょう。

しかし葬儀ローンには審査があります。

審査が通らない方もいらっしゃいますので、注意しましょう。

一般的には銀行などが取り扱う葬儀ローンよりも、信販会社の葬儀ローンが審査に通りやすいと言われています。

葬儀ローンを利用する場合は、先述した通り、高額な金額は大変危険です。

小さなお葬式の火葬式など、少額プランを選択して、月々の支払いを1万円程度に抑えるという選択をおすすめします。

15万円以下のお葬式を分割で支払う、これが一番安全ですし、審査も通りやすいです。

最後に過去の分割払いの実例を紹介

最後に過去の分割払いの実例をご紹介して終わりたいと思います。

思わぬことから120万円を5年払い

奥様の葬儀をご主人が送り出し、100名以上の方が当日参列されました。

葬儀が終わって半月後、葬儀代120万円の入金がなかったため、ご主人に事情を伺うと、香典で支払うつもりだったのだが、香典が消えたということでした。

後でわかるのですが、ご長男が自身の借金返済に香典を全額使ったのです。

結局、信販会社は通さずに自社とご家族との間で書面を交わして、毎月2万円×5年間払いとなりました。

ご家族の生活状況も踏まえて無理のない範囲でお支払いいただくことを優先した結果、5年という長い月日になりましたが、無事に返済をいただきました。

お金を借りられるところがない

年金を受給しながらアルバイトで生活をしていたご主人が奥様の葬儀を行いました。

葬儀代は20万円、すぐに全額の支払いは困難とのこと。

金融機関、信販会社の葬儀ローンは審査に通らないため利用できません。

そのため自社が直接分割払いで対応することになりました。

頭金で8万円お預かりし、残金は毎月1万円×12回払いとなりました。

1年後に無事完済となりました。

早めにご相談いただいたことで、双方が納得する形で葬儀を行うことができました。

葬儀現場ではこのような事例もありますので、参考にしていただければ幸いです。

広島県にお住まいの方で、葬儀費用の支払いに心配な方は、弊社へご相談ください。

広島県内全域、ご家族様の状況に応じて、臨機応変に対応させていただきます。

こちらでご覧ください
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この記事を書いた人

廣田 篤  広島自宅葬儀社 代表

葬儀業界23年、広島自宅葬儀社代表。厚生労働省認定技能審査1級葬祭ディレクター。終活カウンセラー。前職大手葬儀社では担当者として 1500 件、責任者として1万件以上の葬儀に携わる。実母の在宅介護をきっかけに広島自宅葬儀社を立ち上げて現在に至る。広島市内だけでなく瀬戸内海に浮かぶ島々から、山間部の世羅町、神石高原町まで広島県内あらゆる地域の葬儀事情に精通する広島の葬儀のプロ。身内の死や介護の経験、数々の葬儀を通じての縁から「死」について考え、文章にすることをライフワークとしている。

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