お墓はいらない?お墓がないメリットとデメリット、多様な弔いの選択肢
更新:2023.01.14
お墓はいらないと感じる人が増えてきているようです。
「承継者がいない」「お墓の管理にお金がかかるのが嫌」「お寺の檀家を抜けたい」など、理由はさまざまでしょう。
この記事では、お墓がないことのメリットやデメリットを明らかにしたうえで、それでもやっぱりお墓はいらないと考える人のために選択肢をご案内します。
それぞれの葬法に向いている人についても解説するので、ぜひご自身にぴったりの方法を見つけてください。
お墓がいらないと感じる人は一定数いる
全国石製品共同組合が2017年に行った「お墓に関するアンケート調査」によると、お墓を求める形態として「お墓はいらない」と答えた人が5.3%、「散骨」と答えた人が7.1%。承継者の必要がない「永代供養墓」と答えた人は22.9%にも上りました。
従来のようなお墓は必要ないと考えている人が35%もいることになります。
また、2022年に「テレ東プラス」が「Yahoo!ニュース」を通じて40代から70代の2000人に行ったアンケート調査 では、「あなたは先祖のお墓に入りますか?」との問いに「はい」と答えた人は40%。そして「新しいお墓を立てる予定がある」との問いに「はい」と答えた人は、わずか6%にとどまりました。
このように、お墓はいらない、もしくは「先祖のお墓に入らず、新しいお墓を立てない」と考えている人は一定数います。
政府が行っている「衛生行政報告例」によると、お墓の引っ越しをする「改葬」を行なう人は年々増えてきており、令和2年のデータでは11万7772件の改葬がありました。
改葬を行った人の中には、新たに個別のお墓を建てず先祖の遺骨を永代供養としたり、散骨したりした人も多いと思われます。
お墓がないことのメリット
私たちにとって、先祖代々のお墓があるのは当たり前のこと。
そのお墓がなくなったら、どんなメリットやデメリットがあるのでしょう。まずはメリットについて確かめてみましょう。
管理費がかからない
個別のお墓を設けると、埋葬後に年間管理費を支払い続ける必要があります。
お墓がなければ、管理費がかかりません。
お寺の檀家にならなくていい
お寺の檀家になると、お寺の修繕などがあるたびに寄付をお願いされる場合があります。
お墓がなければ檀家にもならなくてよいので、寄付の負担から解放されます。
墓掃除など管理に悩まされない
個別の墓を設けると、管理は承継者が行わなければなりません。
夏場の草むしりは体力のいる仕事です。
また地震等の災害があるたびに「お墓が傾いていないか、倒壊していないか」と不安になるでしょう。
しかし例えば自宅からお墓が遠いと、頻繁に通って手入れすることが難しくなります。
お墓がなければ、管理のわずらわしさから解放されます。
承継者を立てる必要がない
従来のお墓は、上の項目に示した墓掃除や管理費の支払いのため、承継者を立てなければなりません。
しかしお墓がなければ、承継者は不要です。おひとりさまでも安心していられます。
お墓がないことのデメリット
お墓がないと、以下のようなデメリットが生じる可能性があります。
葬儀や法事をどうするか決めなければならない
お墓がないということは、どのお寺の檀家にもならないということ。
葬儀や法事の際にお願いできるお寺がないので、葬儀や法事が発生するたびに葬儀社などから紹介してもらわなければなりません。
ただし無宗教葬を選ぶと、僧侶の読経がないためこの心配からは解放されます。
親戚と意見が合わないかもしれない
家族みんなが納得してお墓をつくらないことを選択しても、親戚は頷かないかもしれません。
意見の相違からトラブルに発展する恐れもあります。
お墓をつくらないと決めたら、前もって親戚の耳にも入れておいた方がいいでしょう。
個別に手を合わせるところがないので物足りない
命日や法事など節目となる日にお墓参りをしようとしても、個別のお墓がないため、物足りなさを感じるかもしれません。
こればかりは、事前にイメージしようとしてもなかなか想像ができないでしょう。
お墓がいらない人の選択肢は5つ
個別のお墓をつくらない主な方法には、次の5つがあります。
それぞれの方法に向いている人についても解説しているので、自分や家族に適したものを探してみてください。
樹木葬
墓石ではなく樹木を祈りのシンボルにしているのが樹木葬です。
墓石を木に置き換えただけなので、立派な「お墓」ではありますが、樹木葬のほとんどが承継者のいらない永代供養です。
個別のスペースは設けないか、あるいは小さめです。樹木葬の詳しい情報については、以下の記事もご覧ください。
【樹木葬に向いている人】
・残された家族が手を合わせる場所が欲しい人
・自然に囲まれて眠りたい人
納骨堂
納骨堂とは、屋内にたくさんの骨壺を収容した施設です。
承継者のいらない永代供養つきの納骨堂が人気を博しています。
永代供養型の納骨堂には、最初の数年は個別のスペースを設け、契約年数が過ぎたら他の人の遺骨と一緒に合祀されるタイプや、初めから合祀されるタイプがあります。
条件や費用はさまざまです。詳しくは以下の記事もご覧ください。
【納骨堂に向いている人】
・気候に悩まされず快適なお墓参りがしたい人
・最初の数年は個別に手を合わせる場所が欲しい人
合祀墓(永代供養墓)
骨壺から遺骨をあけ、他の人の遺骨と一緒に納骨されるのが合祀墓です。
合同で使う大きなお墓なので、承継者が掃除や供養をする必要はありません。
ただ、一度合祀墓に納骨すると、後から個別に取り出せなくなるため注意が必要です。
この合祀墓が一般に「永代供養墓」といわれています。
ただ、これまでみてきたように、樹木葬や納骨堂、そして一見ふつうのお墓とみられる場合でも、承継者のいらない永代供養とするところがあります。
混同しないよう注意が必要です。
【合祀墓に向いている人】
・墓じまい後、たくさんの先祖の遺骨を納骨したい人
・なるべく金銭的な負担を抑えたい人
散骨
海や陸地に遺骨を撒くことを散骨といいます。
散骨であれば、樹木葬や納骨堂のように遺骨が残ることはありません。
散骨にはさまざまな方法があり、メリットやデメリットをよく考えたうえで選ぶ必要があります。
詳しくは以下の記事もご覧ください。
【散骨に向いている人】
・死後は大いなる自然に還りたい人
・手を合わせる場所がなくてもよいと考える人
手元供養
骨壺を自宅に安置したり、アクセサリーに遺骨を込めたりして、身近に遺骨を置いて供養することを手元供養といいます。
手元供養は費用をかけなくてもできますが、供養をする人がいなくなったときには、結局遺骨の行き先を考えなければなりません。
詳しくは、以下の記事も参考にしてください。
【手元供養に向いている人】
・故人をそばに感じて供養したい人
・どんな方法で弔うか、しばらくじっくり考えたい人
まずは家族と相談してみよう
以上、お墓はいらないと考える人に向けて、メリットやデメリット、選択肢を解説しました。
一口に「お墓はいらない」といっても、「承継者が必要なお墓はいらない」「手を合わせる場所だけは確保したい」「手を合わせる場所もいらない」など、その理由と希望はさまざまです。
5つある選択肢の中から、どんな方法が自分と家族にふさわしいかを考えましょう。
そのためには、残される側である家族としっかり話し合うことをおすすめします。
この記事を書いた人
奥山 晶子
葬儀社への勤務経験、散骨を推進するNPO「葬送の自由をすすめる会」の理事の経験、遺品整理関係の著書・サイト制作サポートなどから、終活全般に強いライター。ファイナンシャルプランナー(2級)。終活関連の著書3冊、監修本1冊。最近の著書は「ゆる終活のための親にかけたい55の言葉」オークラ出版。ほか週刊現代WEBなどサイトへの終活関連コラム寄稿、クロワッサン別冊「終活読本」の監修や、令和6年5月発刊「ESSE」6月号のお墓特集を監修している。