終活ノートの作り方|家族を安心させる書き方を解説します
更新:2023.10.09
終活ノートは、突然倒れたり認知症になったりしても、介護医療や葬儀、お墓、相続などについて自分の希望を託せるよう、さまざまなことを書き留めておくノートです。
「エンディングノート」とも呼ばれています。
「終活ノートを手に入れたのはいいけれど、何から書いたら良いか分からない」という人のために、「まずは何よりも家族を安心させる」という視点から書き方を解説します。
目次
終活ノートに書くべき情報
終活ノートは、自分の介護が始まったときから終末医療、葬儀、埋葬、相続など死後のことまで、家族が手続きに必要なことを書き留めておくためのノートです。
また、自分の希望を書いておくことで、最期まで快適に過ごせたり、死後の望みを叶えられたりします。
例えば葬儀について「盛大に行うのではなく、身内中心の家族葬にしてほしい」と書き残しておいたとしましょう。
終活ノートを見た遺族は、あなたの希望通りに家族葬とすれば「故人の願いを叶えてあげられた」と満足でき、悲しみのなかにあっても大きな癒しとなります。
また、財産について書き留めておくと相続手続きがはかどります。
終活ノートに書いた相続の希望は正式な遺言とはみなされませんが、遺族に自分の希望を示すには十分な資料となります。
自分の希望を実際の相続にしっかり反映させたい人は、他に正式な遺言書を書きましょう。
何から手をつけたらいいか分からないなら、自分が倒れたときのことを想像してみて
終活ノートは書店やネット通販で手に入ります。
書くべき項目がたくさんあり、「何から書けばよいのか分からない」と迷うのも当然のことです。
そんなときは、具体的にシミュレーションしてみましょう。
自分が突然倒れてしまったときのことをイメージして、どんな情報が必要かを書き出してみるのです。
あなたがある日突然、心不全で倒れ病院に運ばれたとしましょう。
家族がまず行わなければならないのは、あなたのきょうだいなど主な親族への連絡です。
仕事をしているなら、勤務先にも連絡が必要です。緊急連絡先は、日頃から家族と共有できているでしょうか。
あなたがそのまま意識不明になってしまったら、家族はいざというときの延命措置について決断したり、葬儀について話し合ったりしなければなりません。
こんなとき、本人の意思が終活ノートで確認できたらどんなにいいでしょう。
また、認知症が進み意思疎通が困難になったら、家族が介護方針を決める必要があります。
家族みんなで話し合い、あなたの財産を適切に管理する必要も生じます。
終活ノートに介護の希望や財産目録があったら、家族は安心してあなたのフォローを進められます。
家族を安心させたいならこの順番で終活ノートを完成させよう
どのようなとき必要になるか具体的に示しながら、終活ノートに書くべき情報を「家族を安心させる順番」に解説します。
1.緊急連絡簿
自分が倒れたとき真っ先に連絡してほしい人のリストを作っておきましょう。
「倒れたときの緊急連絡先」と「葬儀に呼んでほしい人リスト」を区別し、また各人の備考として「友人」「親族」など自分との関係性を記しておくと、家族にとって利便性が高まります。
各人の電話番号やメールアドレスを記すのがおっくうだという人は、以下に紹介する2番も同時に行いましょう。
スマホやパソコンから家族が連絡帳を参照してくれるため、緊急連絡簿には名前を書いておくだけでOKです。
2.スマホやパソコン、SNSのIDやパスワード
今や高齢者にもユーザーが多いスマホ。
スマホには、連絡帳やLINEのアカウントなど、いざというとき家族にとって必要な情報がたくさん詰まっています。
しかし、パスワードが分からなければスマホは開けません。
終活ノートにスマホのパスワードを記載しておくだけで、家族が連絡帳を開くことが可能になります。
本人に代わり、SNSで親しい人に緊急事態を伝えることもできるでしょう。
また、スマホで月額課金されるサービスを利用している場合は、利用状況を確認したり解約したりすることもできます。
逆に言えば、スマホのパスワードが分からないとデジタル周りの解約手続きが困難になるのです。
パソコンに、いざというとき家族に開示したい情報や仕事上の資料などがある場合は、パソコンのIDやパスワードも書き留めておきましょう。
家族のため「いざというときはデスクトップ上の●●というフォルダを見てください」などと添えておくのがおすすめです。
3.財産目録
財産目録を作る目的は2つあります。
1つは遺産相続のためで、もう1つは本人が存命中の財産管理のためです。
通帳情報、土地の登記簿、保険証書など自分が持っている財産を洗い出し、目録を作りましょう。
洗い出す過程で「使っていない通帳がある」
「解約した方がいい保険がある」など気づくこともあるかと思われます。
必要ない通帳や保険は解約するなど、財産を整理しておくのも家族のためになります。
4.終末医療の希望
延命治療をするかしないか、選択肢を迫られるのは本人の家族です。
家族にとってはどちらも辛い決断になりがちで、「この選択で本人は良かったのだろうか」という疑問が頭をよぎるものです。
本人が生きているうちに終末医療について希望を書き、しっかり家族に示せておければ、家族の心理的負担は大幅に減ります。
延命治療の他、臓器提供の可否についても書いておきましょう。
5.介護の希望
介護が必要になったときのことをイメージし、「どこで」「誰に」「どんな介護を受けたいか」をシミュレーションして書き出します。
「できるだけ自宅で家族に助けられながら生きたい」
「可能なら介護施設に入りたい」など、具体的な要望を書きましょう。
また、自分にとって譲れないこだわりや好みを書いておくと、介護する側にとって重要な情報になります。
「髪の毛はできれば伸ばして結んでおきたい」
「首の詰まった服装は苦しい」
「熱いものが苦手で、冷ましてから飲ませてほしい」など、施設によっては希望が通らないこともありますが、希望を示しておくのが大事です。
6.葬儀の希望
身内が亡くなると家族は途端に「遺族」となり、葬儀の準備に忙しくなります。
葬儀の規模や宗教、遺影、香典返しなど決めなければならないことが膨大にあるなかで、少しでも故人が道筋を示しておくと遺族はだいぶ楽になります。
終活ノートの項目に応じて希望を書くほか、遺影や最後に着たい衣装、棺に入れてほしいものなどについては具体的に用意しておくのがおすすめです。
7.お墓の希望
近年、お墓の選択肢が増えています。
子世代などが引き継ぐ従来からの「承継墓」、承継者がいらない「永代供養墓」、海や山に遺骨を撒く「散骨」などなど。
墓石ではなく樹木を祈りの対象とする「樹木葬」も人気です。
先祖代々からのお墓に埋葬されたいのか、それとも他の選択肢が良いのかを、終活ノートの項目に従って書いておきましょう。
自分が埋葬される予定のお墓とは違うお墓を選んだなら、そのための費用を残しておくのも大事です。
8.相続の希望
財産目録に従い、どの財産を誰に相続させたいかを書いておくと、相続のとき助けになります。
前述しましたが、しっかり自分の希望を相続に反映させたいなら正式な遺言書にするのが必要です。
ただ、遺言書を書くのはハードルが高いもの。
まずは終活ノートに希望を書いてみて、後で正式な遺言書にまとめるのはいかがでしょうか。
余裕がある人は「家族への手紙」も書いてみよう
終活ノートには「家族への手紙」というページが設けられている場合がほとんどです。
必須の項目ではありませんが、もし余裕があるなら家族に向けて感謝の言葉などを記しましょう。
遺族は「故人が生きているうちに、こんなことをしてあげたかった」
「どうして行きたいと言っていた場所に連れて行ってあげられなかったのだろう」など、後悔の念を持つ傾向があります。
そんなときに故人からの手紙があれば、自分の接し方が正しかったことをきちんと確認でき、心が癒されます。
つまり自分亡き後も、自分の言葉が家族を慰められるということです。
心を込めて、自分を亡くし悲しんでいる未来の家族に手紙を書きましょう。
この記事を書いた人
奥山 晶子
葬儀社への勤務経験、散骨を推進するNPO「葬送の自由をすすめる会」の理事の経験、遺品整理関係の著書・サイト制作サポートなどから、終活全般に強いライター。ファイナンシャルプランナー(2級)。終活関連の著書3冊、監修本1冊。最近の著書は「ゆる終活のための親にかけたい55の言葉」オークラ出版。ほか週刊現代WEBなどサイトへの終活関連コラム寄稿、クロワッサン別冊「終活読本」の監修や、令和6年5月発刊「ESSE」6月号のお墓特集を監修している。