おひとりさまの終活、介護・医療・葬儀・墓の希望を誰に託す?
更新:2022.07.29
おひとりさまは、介護や医療、葬儀、墓を「誰に託そう?」と悩むものです。
いざ終活を始めようと思っても、自分の代わりに誰が希望を叶えてくれるのだろうと考えると、手が止まってしまうことはありませんか。
おひとりさまの終活の進め方や、希望を託せる場所について解説させていただきます。
目次
おひとりさまの終活、医療・介護・葬儀・墓で困ることは?
一般に、一人での行動が好きな人や、独身を貫いている人を「おひとりさま」と称します。
一方で、死後に向けて準備をする終活の分野においては、独身を貫いた人のほか、伴侶を亡くし子どもがいない人、頼れる親族がいない人も「おひとりさま」の範囲です。
一人暮らしをしていて、自分の「もしも」のとき誰も助けてくれる人がいない人は、どんなことに困るのでしょうか。
具体的には、次のような場合です。
救急車を呼ぶのが困難
自宅で急に倒れたとき、自分のほかに救急車を呼んでくれる人がいません。
要支援・要介護状態での自活が厳しい
身体に不自由が生じるようになると、一人暮らしは難しいものです。
介護保険で使える在宅介護サービスなどを入れても、生活の不安はなかなか消えないでしょう。
突然の手術、身元保証人になってくれる人が見つからない
入院・手術をすることになったとき、身元保証人になってくれる人がいなければ、手続きは滞ります。
手術時の身元保証人には、医師の治療方針を本人とともに聞いたり、手術に立ち会い「もしも」のときの身柄引受人になったり、入院に必要な着替えや日用品を用意するといった重要な役割があります。
認知症になった後、生活や財産の管理が困難になる
おひとりさまが認知症になると、気づいてくれる人が近くにいないため、治療が遅れます。
身支度、掃除、食事などに困難を伴うようになるほか、金銭管理もできなくなってきますが、他に適切な管理をしてくれる人がいなければ、生活は荒れる一方です。
家のゴミ屋敷化や、破産につながりかねません。
葬儀やお墓のことを託せる身内がいない
自分の認知能力と意識さえハッキリしていれば、医療や介護がスタートしてからでも自分の希望を伝えることができます。
しかし、葬儀やお墓への納骨は、亡くなってから生じるものです。
生前、誰かに希望を託していなければ、理想通りの形にはなりません。
遺産を譲れる身内がいない
法律では、配偶者や子がおらず、親もすでにない人の遺産は、きょうだいに相続されます。
きょうだいが亡くなっていれば甥姪が相続します。それらの相続人も不在であり、遺言も残されていなければ、遺産は国庫に入ります。
おひとりさまの終活で、希望をどこに託せる?
おひとりさまがどのようなことに困る可能性があるか、おわかりいただけたでしょう。
おひとりさまにとっては、「どんな希望を残すか」よりも、「希望を誰に託すか」のほうが重大な関心事ではないでしょうか。
誰に、どんな希望を託すことができるかをご紹介します。
勤務先に相談しておく
急に入院したときの身元保証人の確保については、現役のおひとりさまなら勤務先に相談するのが近道です。
会社にとって負担ではと尻込みする人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。
社員が急に倒れたら、「仕事への影響はどうなる?」「いつから復帰できる?」と、勤務先の方もいち早く情報を得たいためです。
入居する高齢者用マンションや施設に相談する
高齢者用のマンションや施設に入居しているなら、管理会社に相談してみましょう。
入院時の身元保証や、介護・医療の希望を託すことなら業務の範囲内としているところも少なくありません。
葬儀や墓、相続の希望については、必要に応じて専門家を紹介してくれる可能性があります。
社会福祉協議会に相談する
高齢のおひとりさまが増加するなか、終活サポートを行う社会福祉協議会が増えています。
ただ、「生活の見守りだけ」「専門家を紹介する」など、サポート範囲は協議会によってさまざまです。
住所地を管轄する協議会に問い合わせ、相談してみましょう。
NPOと契約を結ぶ
元気なうちから、認知機能が低下した場合の生活・金銭管理を誰に託すか決めておく「任意後見契約」、亡くなった後の手続きを一任できる「死後事務委任契約」などを依頼できるNPOが、全国に複数あります。
定期的な電話連絡などの見守りサポートを行っている場合もあります。
弁護士や司法書士と契約を結ぶ
「任意後見契約」や「死後事務委任契約」は、信頼できる弁護士や司法書士に依頼することが可能です。
終活サポートを専門に行っている会社もあります。
信託銀行など金融機関に相談する
おひとりさまの金銭管理や生活サポート、遺品整理までを託せる信託銀行があります。
おひとりさまの終活に必要なこと
急に倒れたときのこと、死後のことを誰に託すか決めたうえで、具体的な終活を進めましょう。
とくに必要なのが次の4つです。
エンディングノートをつくる
エンディングノートとは、緊急時の連絡先や、医療・介護・葬儀・お墓についての希望を書き留めておくためのノートです。
たくさんのエンディングノートが出版されており、おひとりさま用のものもありますから、活用しましょう。
緊急メモと入院バッグを用意する
エンディングノートは、個人情報のかたまり。契約を結んだ人など、ごく一部の人にしか開示できません。
しかし、緊急の場合に、「かかりつけ医」「日ごろ飲んでいる薬」「保険証のありか」「緊急連絡先」などを記したメモを救急隊員などが確認できれば、スムーズな医療につながります。
救急隊員やかつぎ込まれた病院に知らせたい情報と、入院時に必要となる着替えやコップ、スリッパを入れた入院バッグを、玄関先など目立つところに置いておきます。
ペットの行き先を確保しておく
自分が入院となった後、あるいは亡くなった後も、ペットの世話は滞りなくなされなければなりません。
ペットの世話は、先ほど紹介した弁護士や司法書士などの専門家、信託銀行などに託すことも可能ですが、対応が遅れることも。
友人や近隣など信頼できる人に、もしもの場合について相談しておきましょう。
遺言書を作成しておく
エンディングノートには法的効力がないため、遺産の行き先については、正式な遺言書で残しておく必要があります。
おひとりさまにとって重要なのが、死後事務やペットの世話を引き受けてくれる人への遺贈。
死後事務委任を引き受けてくれる専門家などに相談しながら、遺言書の作成を進めましょう。
おひとりさまの終活ではこれもやっておきたい
ここからは、絶対に必要ではないものの、おひとりさまにとって大事な終活要素について解説します。
交友範囲を広げる
身内のいないおひとりさまにとって、友人は宝物のような存在です。
「何日も連絡が取れないと心配して見に来てくれる人」「もしものときにペットの世話をお願いできる人」などを確保できるよう、意識して交友範囲を広げましょう。
宅配サービスの利用など、見守りの工夫をする
心配して毎日電話をくれる子どものかわりに、新聞を取る、昼食の宅配サービスを利用するなど、「誰かが毎日のように訪れてくれる」環境を整えておきましょう。
孤独死予防になります。
いつまでも元気を保つ
野菜たっぷりの料理を自分のために作ったり、散歩やヨガを毎日楽しんだり。
なるべく長く「自分のことが自分でできる」状態を保てるよう、健康に気を配りましょう。
おひとりさまこそ、自分らしい最後を
以上、おひとりさまの終活において大事なことを解説しました。
おひとりさまにおいては、「希望を誰に託すか」が最重要ポイントとなります。しかし、それさえしっかり押さえておけば、自由度はかなり高いといえるでしょう。
残されるパートナーや子どもの意思を考慮することなく、好みのお墓を選べたり、支援しているNPOなどに遺産を寄付したりできるためです。
自分らしい最後のため、まずは「希望を託せる先」を探すことから始めましょう。
この記事を書いた人
奥山 晶子
葬儀社への勤務経験、散骨を推進するNPO「葬送の自由をすすめる会」の理事の経験、遺品整理関係の著書・サイト制作サポートなどから、終活全般に強いライター。ファイナンシャルプランナー(2級)。終活関連の著書3冊、監修本1冊。最近の著書は「ゆる終活のための親にかけたい55の言葉」オークラ出版。ほか週刊現代WEBなどサイトへの終活関連コラム寄稿、クロワッサン別冊「終活読本」の監修や、令和6年5月発刊「ESSE」6月号のお墓特集を監修している。