【葬儀でお布施を準備】宗教別の金額相場、書き方・お金の入れ方を解説
更新:2023.11.20
葬儀でお寺様へ渡す「お布施(おふせ)」については、不透明な部分が多く、金額相場など準備の仕方について悩まれる方も多いのではないでしょうか。
お寺様は「金額はお気持ちで」とおっしゃり、葬儀社はお布施の相場は宗教によって相場が異なるだけでなく、お寺によっても異なるため、アドバイスをしづらい、ご家族はお寺に金額を直接尋ねることに躊躇される場合もあります。
このように、様々な要因が重なってお布施は不透明でわかりづらいと感じる方が多くなっています。
この記事では、世間であまり知られていないお布施について、宗教別に金額相場、袋の表書きの書き方、お金の入れ方、お布施を渡すタイミング、作法までをまとめて解説してまいります。
少しでもお布施に関するお悩みが解けたら幸いでございます。
葬儀のお布施とは
相場などの説明に入る前に、そもそもお布施とはどんなものなのか、解説します。
本来のお布施の意味
葬儀の「お布施」は正式に「布施(ふせ)」といいます。
一般的に「お布施」とは、葬儀など仏事の際に読経をしていただいたお礼に包むお金という解釈をされていますが、仏教においては、全ての宗派において主要な修行の実践項目の一つであって、以下のような3つの目的があります。
・「財施(ざいせ)」金銭や衣服食料などの施しをすること
・「法施(ほうせ)」仏の教えを説くこと
・「無畏施(むいせ)」災難などに逢っている者を慰め恐怖を取り除くこと
現在、葬儀の場でお布施と呼んでいるのは布施の中の「財施」なのです。
読経の謝礼というイメージがあるかもしれませんが、本来は読経の謝礼ではなく、「財施」という仏弟子の修行の一つの行為なのだと頭の片隅にでも覚えておいていただければと思います。
現代のお布施の解釈
現代では、お布施とは葬儀や仏事などでの読経をしていただいた謝礼で渡すお金と認識されてます。
しかし先ほど述べたように、本来は読経の謝礼ではないので、お布施の金額に相場はなく、個人の判断という暗黙の了解が長年続くことになりました。
寺院から「お気持ちで…」と言われても、世間一般ではお布施の金額相場は曖昧でわかりずらく、「金額の検討つかない」と悩まれる方がほとんどでした。
葬儀社という中立の立場だった私には、お布施の解釈は両者の間で温度差があったように感じています。
また、葬儀の管理者としての私はご遺族様にお布施の金額を話せば寺院にお叱りを受けることになり、逆にお布施の金額を伝えなければ、遺族様から不親切だと思われるため、やりにくいのが本音でした。
しかし、現代は分からないことはネット検索をすれば、簡単に多くの情報が手に入ります。布施の不透明さはますまず理解されづらいものとなったのです。
このような時代の変化によって、近年は寺院側がお布施の相場を葬儀社に対して示してくれるところも多くなりました。
「ご遺族から尋ねられたらこちらで案内してください」と相場を開示してくれるようになったので、私もお布施の金額相場も一般の方に説明しやすくなりました。
次項ではお布施の金額相場からご説明させていただきます。
葬儀のお布施の金額相場
葬儀の気になるお布施の相場をご説明させていただきます。
一括りでおよそいくら位かかりますと言いたいところですが、誤解を招く恐れがあるので、宗教別に大きく4つに分けてご説明させていただきたいと思います。
・仏式 浄土真宗のお布施
・仏式 浄土真宗以外のお布施
・神道の場合
・キリスト教の場合
よくインターネットで探されると出てくる葬儀のお布施の全国平均には「お布施」と「戒名料」が合算されてることがほとんどです。
葬儀では、お布施+戒名料=葬儀で必要なお寺様へ用意する金額となる場合が多くあります。
ですからお寺へ支払う金額の相場を知るには、お布施の相場、戒名料の相場をそれぞれを分けて知ると理解が深まります。
金額相場が大きく異なる要因はこの2つ
金額相場が大きく異なる要因は下記の2つにあります。
■戒名
戒名は仏弟子になる際に授かるお名前でランクがあり、ランクによって文字数が異なってまいります。
一般的な「信士」「信女」であれば5万円〜10万円、位の高い「院居士」「院大姉」などは30万円〜50万円となります。
つまり、どんな戒名にするかでお布施の金額が全く変わってくるのです。
仏式でも浄土真宗であれば、戒名自体が存在しないため、戒名料は不要となります。これだけで大きく違います。
■お勤めするお寺様の人数
二つ目の要因として葬儀にお勤めいただく寺院の人数で決まります。お寺が1人なのか、2人なのかによって、用意するお布施の数が異なります。
当然1人分のほうがお布施は安くなります。家族葬が増える中、お寺の人数も1名で読経というケースも昨今増えてまいりました。
予算が厳しい方はお寺を1名で依頼するのも一つの方法です。
このようにどんな戒名にするか、お寺の人数をどうするかで同じ地域内でも金額は大きく異なってきますので、参考にしていただければと思います。
仏式 浄土真宗のお布施
前述しましたように、浄土真宗は、戒名自体が存在しませんが、代わりに「法名」を仏弟子になった際に授かります。一般的な法名は無料で授かることが出来ますので、代金は不要です。そのため他の宗派よりもお布施で用意する金額の相場が低くなる場合が多いです。
法名にもランクがあり、格の高い法名として「院号法名」があります。この場合、金額相場は20万円〜30万円となります。
現在、院号法名を付けられる方は、5%弱だと思われます。
このように仏弟子になる際の法名にはお金がかからない点から、浄土真宗はお布施だけを用意すれば良いとなります。お寺が1名の場合の相場は20万円を見ておけば十分です。2名の場合は、副導師、役僧分のお布施を加えて20万円〜30万円を目安とすると良いでしょう。
仏式 浄土真宗以外のお布施
浄土真宗以外の仏式での葬儀ではお布施に加えて戒名料が必要となります。戒名料は格によってもお寺や地域性によっても宗派によっても異なります。お寺に直接伺って相談することをおすすめします。
お布施についてはお寺の人数で決まる述べましたが、浄土真宗以外の宗派では基本的に2名とする場合が多いです。家族葬が増え1名の葬儀も増えてきましたが、依然2名が基本と考えておいたほうが良いでしょう。
葬儀の場で鳴り物を使う事が多いため、1人ではお勤めが厳しいためです。
お布施の相場は25万円〜35万円。戒名の相場は5万円〜50万円となります。
神道の場合
神道の場合、こちらはお布施に代わり「御礼」を渡します。相場は一式で20万円〜40万円で仏式と大きく変わることはないでしょう。
仏式で言う戒名や法名はありませんので、代金を用意する必要もありません。
キリスト教の場合
キリスト教もお布施の代わりに「御礼」を用意する必要があります。
キリストの場合は、牧師だけでなく、式進行で演奏をお手伝いしてくださる聖歌隊の方々にお礼を含めて、一式で用意するケースが多いです。
金額の詳細は直接教会へ尋ねてみましょう。教会や聖歌隊の規模によって相場は異なりますが、約10万円〜50万円です。教会で葬儀を行う場合は、使用料も含まれてるケースが多いです。
仏式の葬儀のお布施 相場一覧
仏式におけるお布施の相場を一覧にしてみましたのでこちらもご確認ください。
浄土真宗 | 他宗派 | |||
---|---|---|---|---|
お布施 | お布施 | 御車料 | 御膳料 | |
枕経 | 10,000~20,000 | 10,000~20,000 | 5,000 | |
通夜 | 10,000~30,000 | 10,000~30,000 | 5,000 | |
導師 | 100,000~200,000 | 100,000~300,000 | 5,000 | 5,000 |
副導師 | 50,000~100,000 | 50,000~150,000 | 5,000 | 5,000 |
伴僧 | 30,000~70,000 | 5,000 | 5,000 | |
灰葬 | 10,000~20,000 | 10,000~20,000 | 5,000 | |
初七日 | 10,000~30,000 | 10,000~30,000 | 5,000 | |
週参り | 3,000~7,000 | 3,000~7,000 | ||
四十九日 | 20,000~50,000 | 20,000~50,000 | 5,000 | 5,000 |
祥月命日 | 3,000~7,000 | 3,000~7,000 | ||
百ヶ日 | 10,000~30,000 | 10,000~30,000 | 5,000 | |
盆・彼岸 | 10,000~30,000 | 10,000~30,000 | ||
一周忌 | 20,000~50,000 | 20,000~50,000 | 5,000 | 5,000 |
三回忌 | 20,000~50,000 | 20,000~50,000 | 5,000 | 5,000 |
入仏式 | 10,000~30,000 | 10,000~30,000 | 5,000 | 5,000 |
納骨 | 10,000~30,000 | 10,000~30,000 | 5,000 | |
墓石建立 | 10,000~50,000 | 10,000~50,000 | 5,000 | |
法名・戒名 | 浄土真宗では必要ありません | ご寺院に直接お問い合わせください | ||
院号 | ご寺院に直接お問い合わせください | ご寺院に直接お問い合わせください |
葬儀のお布施の書き方
ここからは、お布施の書き方を見ていきましょう。
※お布施を包む袋は葬儀社が予め用意してくれますのでそちらをご利用ください。
表の中央に「お布施」と書き、表の中央下部には家の苗字を書きます。
中袋がある場合は、中袋の裏面に名前、住所、連絡先を記入しても良いですが、記載しなくても失礼にはあたりません。
中袋が無い場合も同じく、袋の裏面に住所、連絡先を記入すると丁寧ですが、記載しなくても問題ありません。
式の前の打ち合わせ等で、名前、住所などを予め伝える機会がありますので、表面は苗字だけでも構いません。
金額も記載した方が良い
お布施は修行の一部なので金額の記載は必要ないという考えもありますが、個人的には金銭トラブルを防ぐために、金額を記載した方が良いと考えます。
例えば、袋に10万円包んだとしましょう。
寺院側が袋の中を数えて15万円であれば、15万円と認識しますが、遺族が用意したのは15万円だったのかどうかは遺族に直接確かめることはしません。正確には確かめることは出来ません、お気持ちの部分だからです。
このように双方が金額を確かめ合うことはなく進んでいくものなのです。
相続の観点で言えば「葬儀にかかった費用」は相続税から控除されますので遺族にとっては「お布施も葬儀にかかった費用」となります。そこで遺族がお布施の領収書を寺院側に要求するケースがあります。寺院側はこのように遺族から要求された場合に限り、領収書を発行してくれます。
この時に遺族は、自身が支払ったお布施の金額と領収書の金額が一致してるか確かめる事が出来るのです。
寺院側はお布施袋に金額が書いてない場合、中の金額を数えるだけしか出来なく、遺族が幾らの金額を用意されようとしたのかわかる術がありません。領収書を発行した後に遺族から「金額が違う!」と言われ、慌ててしまうトラブルが稀に発生しています。
例えば、遺族は15万円入れたはずだったが、実際にはお札が一枚足りなかったなど。
このようなトラブルを防ぐためにも、袋に金額を記載しておくと安心です。
葬儀のお布施の入れ方
不祝儀の場合は新札を避けるのがマナーと言われてますが、銀行からおろしたお金を用意というケースが多いので、新札になってしまうケースは多いです。
その場合は、お札を半分に折って新札感を失くすという方法があります。お札の向きは福沢諭吉など肖像画が表に来るようにして揃えて入れましょう。
お布施を入れる袋の種類
お布施を入れる袋には幾つか種類があります。多くの場合は、葬儀社が用意しますが、ない場合は葬儀社職員に尋ねてみましょう。袋を用意が出来ない葬儀社はありません。
水引きが「黄、白」や「銀、白」など地域によって多少の違いがありますが、特に決まりはありません。
奉書紙という和紙の白い封筒に包む事も多いです。郵便番号を記入する欄など無く、無地の白封筒です。
葬儀のお布施はいつ渡す?
お布施を渡すタイミングは地方によって異なりますので、代表的なものを幾つかご紹介させていただきます。
基本的に葬儀社職員が案内しますので、そのとおりに従って行えば問題ありません。
主な例
・都度、式前にご挨拶を兼ねて渡す
・葬儀の日、式前に一括で渡す
・葬儀終了後、葬儀当日に寺院へ訪問して一括で渡す
・葬儀が終わって初七日の日、直接寺院へ訪問して一括で渡す
これだけ色々とタイミングがあるのは理由があります。
例えば、葬儀では読経終了後、寺院は式場から退席しますが、その後も式自体は弔電拝読、喪主挨拶、お別れの献花、など進行して行きます。退席後に次の用事があったりする場合は、寺院もすぐに帰ります。
そうなると、遺族は式後にお布施を渡すタイミングを失ってしまうので、式前または後で寺院へ訪問するタイミングが多くなります。
寺院が出棺後に再度葬儀場に訪れる予定がある場合はその際に渡すこともできます。
個人の意見としては、現金を持ち歩くのは神経を使いますので、通夜の日は通夜のお布施を式前に渡し、葬儀の日は葬儀のお布施を式前に渡すと精神的な負担は軽減されるかと思います。
葬儀のお布施のまとめ
葬儀のお布施についてポイントまとめ
・包む袋は葬儀社に用意してもらう
・金額は相場表を確認して用意する
・お札の向きを合わせる
・表の中央上部に「お布施」、中央下部は「家の苗字」を書く
・渡すタイミングは地域によって異なるため、葬儀社職員の案内に従う
ぜひ、参考にしていただければ幸いです。
この記事を書いた人
廣田 篤 広島自宅葬儀社 代表
葬儀業界23年、広島自宅葬儀社代表。厚生労働省認定技能審査1級葬祭ディレクター。終活カウンセラー。前職大手葬儀社では担当者として 1500 件、責任者として1万件以上の葬儀に携わる。実母の在宅介護をきっかけに広島自宅葬儀社を立ち上げて現在に至る。広島市内だけでなく瀬戸内海に浮かぶ島々から、山間部の世羅町、神石高原町まで広島県内あらゆる地域の葬儀事情に精通する広島の葬儀のプロ。身内の死や介護の経験、数々の葬儀を通じての縁から「死」について考え、文章にすることをライフワークとしている。