葬儀で使われる志とは?意味やのし紙、香典返しにまつわる豆知識をご紹介

更新:2024.11.01

葬儀の香典返しの表書きには「志」と書かれています。

この「志」は、「いただいたお香典に対する、ほんのお返しの気持ち」を指します。

葬儀で使われる「志」の意味やのし紙、志の他にどんな言葉が使われるかを解説した上で、香典返しそのものには何を選ぶべきか、「志」のお返しは必要かなど、香典返しにまつわる豆知識をお伝えします。

葬儀の「志」は「お返しの気持ち」という意味

葬儀で「志」が使われるのは、香典返しのかけ紙においてです。

香典返しには水引がプリントされたかけ紙がかけられ、水引の上側中心に「志」と薄墨で書かれます。

一般的に「志」といえば、何かに向かって思う強い気持ちを意味します。

一方で、香典返しに使われる「志」には、「お返しの気持ち」「ほんの気持ちばかりのお返し」という意味が込められています。

「志」が使われるかけ紙

葬儀において「志」が使われる香典返しのかけ紙は、白黒の水引がプリントされた白い紙です。

包装された香典返しの品をかけ紙でくるみ、袋などに入れて会葬者へ直接渡すか、葬儀後に発送します。

関西方面など、地方によっては黒白ではなく、黄白の水引を使うこともあります。

「志」以外にも使われる文字がある

香典返し 粗供養

香典返しには「志」以外の文字が使われることもあります。

粗供養

葬儀当日にお返しする香典返しに「粗供養」と表書きする地方があります。

「粗供養」と書く場合、香典返しの内容はタオルなど低額の品物であることが多いでしょう。

葬儀の日には低額の品物をお返しし、あとから香典金額に見合ったお返しものを改めて送る場合などに「粗供養」が使われます。

満中陰志

葬儀当日に渡すのではなく、四十九日法要に合わせて発送する香典返しに使われることが多いのが「満中陰志」です。

満中陰とは、四十九日忌のことを指します。

満中陰を終えたことの報告と、香典へのお供えへのお礼をあわせて行うため、「満中陰志」という言葉が選ばれます。

茶の子

中国地方や四国地方では、香典返しの表書きに「茶の子」が使われる場合があります。

「茶の子」には、お茶請けのお菓子や農作業に出る前の軽い食事という意味合いがあり、「サッと食べることができるもの」という印象を受ける言葉です。

香典返しに「茶の子」を使う場合には、「ささやかなお礼の品」という意味になります。

偲草、今日志

神式の葬儀では、香典返しの表書きに「偲草(しのびぐさ)」または「今日志」が使われることがあります。

ただ、「志」が使われる場合も多いでしょう。

召天記念

キリスト教式には、そもそも香典返しの文化がありません。

日本のしきたりに合わせて香典返しを送る際には「志」が使われることが多いでしょう。

あるいは、「召天記念」と書かれるケースがあります。

「召天記念日」は個人の命日を表し、とくにプロテスタントでは亡くなって1ヶ月目に召天記念式が行われます。

「寸志」は使ってはいけない

「寸志」と「志」は似た言葉ですが、香典返しに「寸志」は使いません。

「寸志」は、自分よりも目下の者へ行うお礼のことだからです。

「志」の下には何を書く?

水引の上に「志」と書き、水引の下には喪主の名字か、もしくは「施主」と書きます。

葬儀当日に渡す香典返しであれば薄墨で書くこともありますが、濃い墨で書いても問題ありません。

薄墨は「突然の不幸に墨をする時間もなかった」

もしくは「墨が涙で薄くなってしまった」ことを表すもので、四十九日法要を過ぎたら使いません。

よってしきたり通りにすれば、葬儀当日に渡す香典返しは薄墨で、四十九日法要後に渡す香典返しは濃い墨で書くのがよいということになりますが、現実にはそれほど厳密に定められていません。

香典返しに使われる品物

ここで、香典返しそのものについても解説しておきましょう。

香典返しによく使われる品物と、タブーとされている品物があります。

香典返しによく使われる品物

香典返しによく使われるのが「消え物」と呼ばれる食品や消耗品です。

「葬儀の記念に贈られるものが、家にずっと残るのは縁起が悪い」とされているためです。

食品であれば、お茶、干菓子、焼き菓子、乾物など賞味期限が長いものが選ばれます。

乾物の中でも海苔は色が黒いことから葬儀のお返し用の商品として重宝されます。

消耗品としては、「涙を拭く」ことを象徴するとしてハンカチやタオル、「死の穢れを洗い流す」ことを象徴するとして洗剤などが選ばれます。

香典返しのタブー

香典返しで避けられるのは、殺生を思わせる生もの、慶事を思わせる華やかなもの、そしてずっと残るものです。

生ものとしては肉や魚、華やかなものとしては海老等縁起の良さを印象づけるもの、残るものとしてはコーヒーカップなどがあります。

最近の流行

最近の香典返しとしては、受け取る側が好きなものを選べるカタログギフトが流行しています。

ただ、香典の辞退を行う葬儀が増えてきているため、「香典返しはない」ということも珍しくありません。

「志」につけるお礼状

香典返しには、御厚志をいただいたことに対するお礼状をつけるのが一般的です。

葬儀後すぐに渡す香典返しには、会葬礼状をつけます。

四十九日法要に合わせて送る香典返しには、改めて作ったお礼状を添えます。

会葬礼状の文面は葬儀社側から提案されたものをそのまま使う人が多いですが、最近ではオリジナルの会葬礼状を作成する人も増えてきました。

会葬礼状を作るプロの取材者が喪主に故人の人となりについてインタビューを行い、それに基づいて人柄を偲ばせる文面を入れるのです。

四十九日法要に合わせて送る香典返しには、四十九日法要が滞りなく終わったことを報告するお礼状をつけます。

こちらも葬儀社やギフトショップなど香典返しの手配先が紹介してくれる文面をそのまま利用する人が多いですが、オリジナルの文面を作成する人もいます。

香典返しのお礼状については、以下の記事でも詳しく解説しています。

参考にしてください。

他に「志」が使われるシーン

「志」は、弔事全般のお返しもので使うことができます。

葬儀に限らず、一周忌、三回忌などの回忌法要における香典返しにも「志」を使います。

「仏壇に捧げるお供え物には『志』を使えないの?」と考える人もいるでしょう。

仏壇やお墓へのお供え物には、「志」ではなく「御供」もしくは「御供物」を使います。

お供え物に使うかけ紙も、「志」同様、白黒や黄白の水引がプリントされたものです。

新盆のお供え物には「新盆御見舞」と表書きする場合もあります。

「志」に対するお返しものは必要?

「志」をいただいたら、お返しをしなければという気持ちになる人もいるでしょう。

しかし、「志」はそもそも「いただいた物へのお礼」を示すので、「志」へのお礼は必要ありません。

むしろ、香典返しへのお礼は「お礼が重なる」ため、不幸が重なることを連想させ、タブー視されています。

どうしてもお礼がしたいと考えたら、電話や手紙で手短に感謝の気持ちを伝えるのがいいでしょう。

「ありがとう」など感謝を示す言葉はあまりよいとされていないため、「ご丁寧なお心遣い、恐れ入ります」といった言葉を選びましょう。

香典返しで感謝の気持ちを伝えよう

「志」は、いただいた厚意に対して心ばかりのお礼を示す品物につける言葉です。

相手のことや葬儀のマナーを考えた上で品物を選び、お礼状を同封した上で、最後にかけるかけ紙に記すものです。

相手への感謝を示す自分の気持ちを代弁する言葉として覚えておくとよいでしょう。

なお、「志」はあくまで弔事で使われる言葉であり、結婚祝いのお返しものには「寿」や「内祝」と表書きし、紅白の水引を使います。

「志」を慶事の時に使わないよう注意しましょう。

この記事を書いた人

奥山 晶子

葬儀社への勤務経験、散骨を推進するNPO「葬送の自由をすすめる会」の理事の経験、遺品整理関係の著書・サイト制作サポートなどから、終活全般に強いライター。ファイナンシャルプランナー(2級)。終活関連の著書3冊、監修本1冊。最近の著書は「ゆる終活のための親にかけたい55の言葉」オークラ出版。ほか週刊現代WEBなどサイトへの終活関連コラム寄稿、クロワッサン別冊「終活読本」の監修や、令和6年5月発刊「ESSE」6月号のお墓特集を監修している。

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