終活しない親に不安を感じるあなたへ~悩みが解決する5つのアイデア
更新:2023.02.09
「終活をしておかないと、亡くなった後に子世代が大変になる」などと耳にすると、「うちの親、ちゃんと終活しているだろうか?」と不安になってしまうことでしょう。
終活イコール「死の準備」と考えると、親に終活しているかどうか尋ねるのは難しいもの。
この記事では、親の終活にまつわる子世代の不安を取り除くためのアイデアについてご案内します。
目次
実は親も、「終活しなくちゃ」とは感じているかも?
今や「終活」は誰もが知るワード。
2022年7月に楽天インサイトが行った調査では、「終活を実施している」または「近いうちに始めたい」、「予定はないが、時期が来たら始めたい」と考えている60代は、あわせて男性が82.0%、女性が92.3%と、高い数値を示しました。
ただし、60代で「終活を実施している」人に絞ると、男性が8.0%、女性が12.5%という結果になっています。
多くの人が終活を意識しているけれど、実際には始めていないという実態が垣間見えます。
また、同調査で「終活をしたい理由」を尋ねたところ、60代では男性の64.6%、女性の71.9%が「家族に迷惑をかけたくないから」と回答しています。
「子世代が大変にならないように、終活しておこう」という気持ちは、多くの人にあるようです。
もしかしたらあなたの親は、すでに終活の真っ最中かもしれません。
そうでない場合も、親が「迷惑をかけたくない」と感じている子世代によって背中を押されれば、すぐ終活に動き出す可能性が高いといえるでしょう。
まずはどんなことが「終活」かを把握しておこう
親に「終活してる?」と尋ねる前に、まずはどのようなことが終活にあたるかを把握しておきましょう。
先ほど引用した「楽天インサイト」の調査によると、「終活で今後する予定があること、興味があること」の1位となっているのが「家の中の荷物整理」です。
とくに終活を意識して荷物を整理することを、「生前整理」といいます。
生前整理をすることで家の中がスッキリ片付くため転倒防止にもなり、前向きに今後の人生を歩もうという気分になることも多いことから、生前整理は終活の中でもとくに人気のあるテーマです。
気になる2位は「パソコンやスマートフォンなどのデータ整理」、3位は「財産整理」でした。財産整理ができているかどうかは、子世代がとくに気になることではないでしょうか。
親が亡くなってから遺産を全て把握するのはとても大変なこと。
相続が終わった後に、保険証書や有価証券が発見されて相続がやり直しになることも少なくありません。
ほか、葬儀や墓の準備、介護の希望を残すこと、終末医療に関する意思決定などが主な終活にあたります。
アイデア1:自分が先に終活してみる
親の終活へ不安を感じている人に最もおすすめの方法が、子世代である自分が先に終活することです。
まずは、エンディングノートを入手しましょう。
エンディングノートとは、終活に関するさまざまなことを書き留めておく備忘録的存在です。
自分に何かあったときのための連絡先リスト、財産目録、SNSアカウントなどデジタルデータのリスト、葬儀や墓・介護・医療の希望、残される人へのメッセージなどで構成されています。
エンディングノートの作成は、若い世代にも意義があります。
大事な人の連絡先や保険情報が書き込まれているエンディングノートは、急な事故、病気で入院したときなどに役立つためです。
「自分の身に何かあったとき、家族が困らないため」という気持ちで書き始めると、親に聞かなければ書けないことがたくさんあると気づくでしょう。
例えば以下のようなものです。
・親族の連絡先
・家系図の作成
・葬儀を依頼する寺院の連絡先や宗派
・財産目録(「親が亡くなったと仮定して、何が自分に相続されるのだろう?」という視点で書くことになるため)
疑問が生じたら「自分に何かあったときのためにエンディングノートを書いているんだけど、書けないところがあって、教えてくれるかな?」と親に尋ねてみましょう。
子世代がエンディングノートを作っていると知ると、「先を越された」と焦る気持ちになるはずです。
また、財産の項目など、親にもすぐには分からないことがあると「これは自分たちも目録を作らなければ」と認識を新たにしてくれる可能性が多々あります。
若い世代向けのエンディングノートについては、以下を参考にしてください。
アイデア2:実家にある自分の荷物を捨ててみる
独立した後、実家にある自分の子ども部屋を整理していない人はいませんか。
生前整理を促すなら、まずは自分が荷物整理に励む姿を親に見せましょう。
子ども時代からある思い出の品、もう使うことのない学用品、学生時代に集めた趣味の品などなど、実家にある不用品を整理するのです。
いらないものは捨て、捨てるにはしのびない思い出の品は、実家ではなく自分の家へ移動させます。
思い出の品がたくさん残るようだったら、ある程度は写真に収めた上で手放しましょう。
自分が生まれ育った家、子どもの頃大切にしていた品と向き合っていると、なかなか生前整理に踏み切れない親の気持ちも分かってくるかもしれません。
そんなあなたの姿を見て、またスッキリ片付いた子ども部屋を目の当たりにした親は、生前整理をきっと前向きに捉えてくれます。
アイデア3:たまには一緒にアルバムを見てみる
久しぶりに実家へ帰省したら、古いアルバムを引っ張り出して、親と一緒に見てみましょう。
生前整理で最も困難なものの1つに、写真の整理があります。
「写真を整理しようとしてアルバムを見ていたら、懐かしくて見入ってしまい、気づけば日が暮れていた」などという話をよく聞きます。
大量のアルバムを引っ張り出してきて、「こんなにたくさんあるんだね」「自分のアルバムにはいらない写真も多いから、整理させて」と話を進めれば、そのまま写真整理の時間につながるでしょう。
あなたが容赦なくアルバムの中の写真を捨てていく姿を見て、なかなか写真整理を始められなかった親も踏ん切りがつくかもしれません。
アイデア4:親に保険の相談をしてみる
最近の物価高で、将来のお金に不安を感じている人は多いでしょう。
また、結婚したて、子育て真っ最中などライフプランを描く年代であれば、医療保険や死亡保険はどこがよいか、掛け替えた方がおトクか、学資保険に申込んだ方がいいか…などの悩みがあると思われます。
そんな不安や悩みを親に率直にぶつけてみましょう。
そして、「お母さんたちはどうしてた?」「おすすめの方法はある?」と教えを請うのです。
もちろん、親が子育てしてきた時代と現代とでは、金利などの状況がかなり違っています。
しかし素直に尋ねてみることで、親が何にいくらの保険をかけているか、情報を知ることができるでしょう。
また、情報を聞き出せたら、こうも言ってみましょう。
「いざというとき、私はどうすればいい?保険証書ってどこに保管してあるの?」
親もそう尋ねられたら「大事なもののありかを子世代が知らないのはまずい」と気づくでしょう。
証書のありかから始まり、金庫の番号や貸金庫の存在、土地の権利書が保管されている場所などについても教えてもらえる可能性は高まります。
その上で「大事なものの保管場所については、一度なにかに控えておいてよ」とリクエストすれば、きっと了承してくれます。
アイデア5:葬儀や相続について前知識を得ておく
親の終活意欲を引き出せなくても、不安を解消する方法はあります。
それは、いざというとき、親側の準備がなくても自分が喪主としてしっかり対処できるよう、子世代側が前知識を得ておくことです。
「終活」が市民権を得る中、子世代向けの書籍も続々と生まれています。
親が亡くなったとき何をすべきか解説してくれる本を一冊購入し、読んでみてはいかがでしょうか。
いざというときやるべきことや手順が明確になれば、ほとんどの不安は解消するはずです。
不安解消のためには子世代側のアクションが大事
以上、終活しない親に不安を感じるときの対処法について解説しました。
親に何かして欲しいと望むときには、子世代側からの積極的なアクションが大事です。
要望を口にするだけでなく、一緒に取り組む姿勢を見せたり、子世代も自分事として終活に取り組んだりすることで、親側の意欲を引き出せるでしょう。
この記事を書いた人
奥山 晶子
葬儀社への勤務経験、散骨を推進するNPO「葬送の自由をすすめる会」の理事の経験、遺品整理関係の著書・サイト制作サポートなどから、終活全般に強いライター。ファイナンシャルプランナー(2級)。終活関連の著書3冊、監修本1冊。最近の著書は「ゆる終活のための親にかけたい55の言葉」オークラ出版。ほか週刊現代WEBなどサイトへの終活関連コラム寄稿、クロワッサン別冊「終活読本」の監修や、令和6年5月発刊「ESSE」6月号のお墓特集を監修している。