お墓を移動するときの流れと費用を解説!墓石を運ぶといくらになる?
更新:2022.04.21
「実家のお墓が遠くてお墓参りが困難」などの理由で、お墓を移動したいと考える人が増えています。
お墓の引っ越しは「改葬」と呼ばれ、さまざまな場面で費用がかかります。
また、長く手を合わせてきた墓石をそのまま使う場合と、墓石も新調する場合とでは金額が違ってきます。
お墓の移動に必要な手続きの流れ、それにかかる費用について解説させていただきます。
目次
お墓を移動するときの流れ
お墓を移動するときは、移動先の選定や今あるお墓の撤去等が必要です。
大まかな流れは、以下の通りです。
1.移動先を決める
まずは、移動先を選定します。
新たにお墓を買う、親族などが使用している墓地に先祖の遺骨を移動させる、納骨堂を契約するなど、移動先はさまざまです。
移動先が決まったら、3番で解説する「改葬許可申請」のために、移動先から「受入証明書」を発行してもらいます。
2.今あるお墓の管理者に、お墓の移動について相談する
菩提寺や霊園に「お墓を移動したい」と相談します。代々お世話になった菩提寺に話を切り出すときには、長く供養を担ってくれたお寺に対し、感謝の意を示しましょう。
その後、菩提寺や霊園から「改葬許可申請」に必要な「埋蔵証明書」を発行してもらいます。
3.役所で「改葬許可申請」を行い、許可証を発行してもらう
「受入証明書」と「埋蔵証明書」が揃ったら、役所で「改葬許可申請」を行います。
申請に必要な書類は自治体によっても違いがあるため、必ず問い合わせてから出向きましょう。
申請が認められたら、遺骨を移動させるために必要な「改葬許可証」が発行されます。
4.今あるお墓を撤去する
改葬許可証が発行されて、ようやく今のお墓を撤去できることになります。
墓石を供養対象からただの石にする「閉眼供養(へいがんくよう)」を行った後、お墓から先祖の遺骨を取り出します。
その後、墓石の解体・撤去、整地がなされて終了です。
5.移動先のお墓に先祖の遺骨を納骨する
新しく買ったお墓に先祖の遺骨を納骨します。
新しいお墓に初めて納骨するときには、墓石をただの石から供養対象にする「開眼供養(かいげんくよう)」を行います。
お墓の移動にかかる費用
今あるお墓を撤去し、新しいお墓をつくる場合、全体的な費用の相場は¥1,650,000〜¥2,800,000になります。
高額に感じる方も多いと思いますが、実はお墓の移動にかかる費用は、4つの費用で構成されています。
それぞれ解説しますのでご覧ください。
今あるお墓の撤去にかかる費用
撤去費用は1㎡あたり¥80,000〜¥150,000ほどです。
お墓の面積の全国平均値は1.5㎡程度なので、撤去のための費用としては¥120,000〜¥225,000ほどが目安になります。
新しいお墓のためにかかる費用
代々が使える一般的なお墓の場合、価格相場は¥1,500,000〜¥2,500,000です。
役所手続きにかかる費用
改葬許可申請にかかる費用は自治体によって違いますが、高い場合でも¥1,000です。
墓地管理者から書類を郵送してもらう場合には、発送のための費用がかかります。
儀式のための費用
先に解説した「閉眼供養」や納骨式のためのお布施など、以下のような儀式のための費用がかかります。
トータルで¥30,000~¥90,000です。
*墓石撤去時の閉眼供養のお布施……¥10,000~¥30,000
菩提寺を離れるときは、離檀料として閉眼供養時のお布施を少し厚く包む人もいます。
*新しいお墓を供養の対象にする開眼供養のお布施……¥10,000~¥30,000
*納骨式のお布施……¥10,000~¥30,000
お墓そのものを新しい墓地に移動したら、費用はどうなる?
なかには、長く手を合わせてきた先祖代々の墓石を処分はできない、改葬してもできればそのまま使いたいと考える人もいるでしょう。
その場合、新しく墓石を建立するケースと比べると、費用は安くなるのでしょうか。
結論としては、安くなる場合ももちろんありますが、必ず安くなるとはいえず、高くなることも少なくありません。
状況によって異なります。
また、今ある墓石を設置することが可能かどうかについては、新しいお墓を管理する霊園側の判断になります。
新しいお墓について十分に検討した上で、次のような場合には、今ある墓石の移動を決めてもよいでしょう。
・先祖が建てた唯一無二の墓石だと思うと、どうしても手放せない
・墓石のブランドや彫刻、デザインなど、今の墓石にこだわりや希少性があり、同レベルの墓石を求めたいと考えている
なぜ、今ある墓石を使うよりも新しく墓石を購入した方が割安になるのでしょうか。その答えについては、お墓の費用内訳と相場を解説するなかでご案内します。
お墓の費用内訳と相場
お墓の費用は「永代使用料」と「墓石建立費用」に分かれる
お墓の費用は、お墓を建てる区画を墓地として半永久的に使う権利を得るための「永代使用料」と、墓石を建てるための「墓石建立費用」に分かれます。
それぞれの相場は、以下の通りです。
*永代使用料……¥500,000〜¥1,000,000
*墓石建立費用……¥1,000,000〜¥1,500,000
今ある墓石を使いたい人であっても、「永代使用料」は必ずかかる費用となります。
墓石建立費用は、墓石そのものの費用ではない
また、墓石建立費用は、たんに墓石そのものの購入費用ではありません。
次のような内訳となります。
*墓石そのものの購入費用
*墓石の加工費用
*整地費用(墓石を建てるための土台を強固にする)
*設置費用(墓石を運び、組み立てる)
つまり墓石そのものの費用の他に整地費用や設置費用など人件費がかかっており、この人件費は、今ある墓石を移動するにしても必ずかかってきます。
墓石そのものの購入費用は、産地や種類、使用量で変わる
墓石はブランドによって価格の幅が広い商品です。
国産のなかでも最高品質とされる庵治石と、実績に乏しい外国産の墓石とでは、価格に10倍もの開きが出ることもあります。
また、墓石の値段は使われる石の量に比例して上がります。
同じブランドの墓石なら、2倍量を使えば単純に2倍の値段になります。
墓石の加工費用は、工程の多さや難しさで変わる
シンプルな和型の墓石と、オーダーメイドのデザイン墓石などとでは、加工費用が違ってきます。
墓石の移動には、搬送費用が必要
今ある墓石を移動すれば、墓石の購入費用や加工費用は浮きますが、搬送するための費用がかかってきます。
搬送自体の相場は¥200,000〜¥1,000,000で、墓石の大きさや劣化の度合い、移動距離によって違います。
墓石によっては、追加で基礎工事が必要なこともあります。
また、墓石自体を移すことが可能でも、他の墓地との境目に設置する外柵などは新たに購入する必要があります。
これらの費用が、墓石そのものの購入・加工費用を上回ってしまうケースがあるのです。
「新しいお墓は安価な墓石、シンプルなデザインで構わない」と考えている場合は、よりその可能性が高まります。
墓石の移動に迷ったら、新しい墓石候補の現物を見てみよう
石材店から見積もりをもらい、「今ある墓石を搬送してもらうよりも、新しく建てた方がかなり安い」という結論に至ってもなお、迷ってしまう人はいることでしょう。
新しいお墓が、今あるお墓に比べて見劣りした場合に「やはりもう少しお金を出しておけばよかった」と後悔するのは避けたいものです。
そんなときには、新しい墓石候補の現物をしっかり確認することをおすすめします。
カタログで石の写真を見るのと、実際に立っている墓石を見るのとでは、印象がまるで違うためです。
「現物が確認できる墓石のなかからしか選ばない」というルールを決めれば、きっと後悔のない墓石選びができるでしょう。
お墓の移動は流れと費用をトータルで確認しよう
以上、お墓を移動するときの流れや費用について解説しました。
今ある墓石を移動したいと考えている人も、何もかも新しいお墓がよいと感じている人も、後悔しないお墓選びをするために流れや費用をトータルで押さえておきましょう。
なかには、「こんなに費用がかかるとは」とためらってしまう人もいるかと思われます。
そんなときには、お墓の撤去だけを行い、先祖の遺骨はいったん自宅に保管するという方法もあります。
その場合、新しいお墓については、のちのちゆっくり考えましょう。
現在は樹木葬という形で移すという選択肢もあります。
ご興味のある方は下記の記事をご覧ください。
この記事を書いた人
奥山 晶子
葬儀社への勤務経験、散骨を推進するNPO「葬送の自由をすすめる会」の理事の経験、遺品整理関係の著書・サイト制作サポートなどから、終活全般に強いライター。ファイナンシャルプランナー(2級)。終活関連の著書3冊、監修本1冊。最近の著書は「ゆる終活のための親にかけたい55の言葉」オークラ出版。ほか週刊現代WEBなどサイトへの終活関連コラム寄稿、クロワッサン別冊「終活読本」の監修や、令和6年5月発刊「ESSE」6月号のお墓特集を監修している。