日にちが経ってからの香典は表書きをどうする?宗教別に解説
更新:2025.01.28
香典は通常、お通夜や告別式のときに持参するものです。
しかし、不幸があったことを葬儀の後に知ったときなど、日にちが経ってから香典を用意する場合もあります。
『日にちが経ってからの香典は表書きが違う?』と、戸惑う人もいるでしょう。
49日を過ぎると表書きが違ってくるため、注意したいものです。詳しく解説します。
目次
日にちが経ってから香典を用意するときの注意点
『葬儀で香典を渡せなかった人に、後から渡すのはルール違反?』と迷う人もいるかもしれません。
香典は、日にちが経ってから渡しても構わないものです。ただ、次の2つに注意しましょう。
1つは、不幸を知ったら速やかに香典を用意することです。
遺族は香典を受け取ったら、香典返しを用意しなければなりません。
つまり、あなたが良かれと思って用意した香典そのものが、タイミングを間違えると相手の手間を増やしてしまう可能性もあるのです。
香典返しの品物を発送するタイミングは四十九日頃なので、遺族が業者と打ち合わせをして品物を検討して発送準備に取り掛かるのは、葬儀が終わって2週間後〜4週間後と思われます。
その時期が過ぎた頃に届く香典には、遺族はその都度香典返しを手配する必要があるかもしれません。
なるべく早く香典を用意しましょう。
もう1つは、香典の受け取りを遺族が辞退されていないかどうか確かめることです。
近親者を中心とした家族葬では、香典の受け取りを辞退しているケースが近年増えています。
香典を辞退しているにもかかわらず香典が届いたら、遺族は戸惑います。
香典返しを用意しなければ非礼にあたるのか、香典を送り返すのは非礼にあたるのか、お悩みになるかもしれません。
香典を辞退していないかどうかは、必ず確かめましょう。
日にちが経ってからの香典の表書きは濃い墨で書く
日にちが経ってからの香典は、表書きを濃い墨で書きましょう。
お通夜や告別式に持参する香典の表書きは、薄墨で書くのがマナーです。
つまり、黒よりも少し薄めの墨で書くということで、薄墨の筆ペンも売られています。
これは、『突然の不幸に悲しむあまり、墨が涙で薄まってしまった』ことを表しています。
しかし、お通夜や告別式が終わった後は、一般的な濃い墨で表書きを書くのがマナーです。
初七日までは薄墨で書く場合もありますが、特に日にちが経ってからは、黒い墨の筆ペンなどを使いましょう。
【仏式】四十九日までの香典の表書きは『御霊前』『御仏前』
仏式の葬儀では、故人が亡くなって四十九日目を迎えるまで、浄土真宗以外であれば香典の表書きを『御霊前』とします。
日本の仏式葬儀には、亡くなってから49日間は故人の魂が『霊』としてこの世とあの世の間をさまよっているという考え方があるためです。
日本の仏教の中でも浄土真宗だけは、四十九日の前であっても香典の表書きを『御仏前』とします。
なぜなら、浄土真宗では故人が亡くなってすぐに浄土へ行き、『仏』になると考えているためです。
故人は『霊』としてさまよわないため、香典にも『霊』ではなく『仏』を使うのです。
よって日にちが経っていても、故人が亡くなってから49日間が経過していないと知っているなら、そして先方が浄土真宗以外の仏式であるならば『御霊前』と書くのが正式です。浄土真宗であれば『御仏前』と書きます。
【仏式】四十九日を過ぎてからの香典の表書きは『御仏前』
四十九日を過ぎてからは、浄土真宗以外の宗派であっても香典には『御仏前』と表書きします。
四十九日間は『霊』としてさまよっていた故人の魂が、四十九日を過ぎると浄土へ行き『仏』になれると考えられているためです。
【仏式】『御香典』はどんなケースでも使える
先方の宗派が分からなかったり、故人の命日を知らず四十九日が過ぎているかどうか分からなかったりする場合には『御香典』と表書きしましょう。
『御香典』は、どんなタイミングでも、どんな宗派でも使える表書きです。
【神式】タイミングにかかわらず『御玉串料』と書く
先方が神式の葬儀を行ったことが分かっている場合、香典の表書きには『御玉串料』と書き入れます。
玉串とは、榊の枝に紙垂(しで。正月飾りなどに使われる白い紙の飾り)をつけたものです。
神式の葬儀を行うとき、参列者は焼香の代わりに『玉串奉奠』を行い、祭壇に玉串を捧げます。
先方が神式の葬儀を行ったことを知らず『御霊前』と表書きした香典を持参しても、失礼にはあたりません。しかし、神式葬儀であったことを知っているなら『御玉串料』と表書きしましょう。
なお、神式の表書きには『御玉串料』の他に『御神前』『御榊料』といったバリエーションがあります。
【キリスト教式】タイミングにかかわらず『御花料』と書く
先方がキリスト教で葬儀を行ったことが分かっているなら、香典の表書きは『御花料』とします。
キリスト教の葬儀では、焼香ではなく祭壇に花を捧げる『献花』を行うためです。
『御花料』は、カトリックであってもプロテスタントであっても使える表書きです。
もし先方がカトリックであることが分かっている場合、香典の表書きは『御花料』の他に『御弥撒料』(おんみさりょう)が使えます。
プロテスタントの場合は、『御花料』の他に『忌慰料』(きいりょう)が使えます。
日にちが経ってから香典を渡すときのマナー
日にちが経ってから香典を用意するときは、どうやって渡すか迷いがちです。
通夜や告別式のように、受付のある場所へ持参するわけではないためです。
日にちが経ってから香典を渡すときには、『直接渡す』『郵送する』の2つのパターンがあります。
それぞれ、マナーについて解説します。
直接香典を渡すときのマナー
遺族の家へ弔問し、香典を直接手渡すのが正式なマナーです。
あらかじめ電話などで弔問したい旨を告げ、双方の都合がよい日時を決めましょう。
当日は落ち着いた色味のスーツなど改まった服装で出かけ、故人の遺影などへ向かって焼香し、遺族に香典を渡します。
香典を渡すときの言葉は『こちら、御霊前(御仏前、御神前)にお供えください』としましょう。
遺族は死後の手続きなどで疲れていることも多いため、弔問ではあまり長居しないのがマナーとされています。
遺族から引き留められない限り、30分程度で退出するようにしましょう。
弔問中の話題も、故人とは関係のない明るい話題などは避け、故人の思い出話や遺族の体調を気遣う話題を中心とするのがマナーです。
香典を郵送するときのマナー
遠方の場合は、香典を郵送するのも失礼にはあたりません。
ただし、普通郵便では現金を送れないため、必ず現金書留を使います。
表書きや住所などを書き入れ、香典を入れた香典袋と、お悔やみの気持ちをしたためた手紙を郵便局に持参しましょう。
現金書留用の封筒に香典袋と手紙を入れ、必要事項を書き入れて封をし、窓口で手続きします。
封筒には割印を押す場所があるため三文判を持っていくと便利ですが、サインでも構いません。
このように香典袋だけでなく、お悔やみの手紙を同封するのがマナーです。
お悔やみの手紙は、2枚以上になると『不幸が重なる』ことを連想させるため縁起が悪いとされています。1枚に収めましょう。
日にちが経ってからの香典でも心を伝えられる
香典は、日にちが経ってからでも用意することが可能です。
四十九日が過ぎた頃に香典を用意するときは、とくに表書きに注意しましょう。
なお、表書きもさることながら、渡し方にもマナーがあります。
弔問する場合と郵送する場合、どちらにするにせよマナーを守り、故人を悼む心が遺族へ伝わるようにしましょう。
相手の気持ちを考えながら、丁寧に準備をすれば、きっと気持ちは伝わります。
この記事を書いた人
奥山 晶子
葬儀社への勤務経験、散骨を推進するNPO「葬送の自由をすすめる会」の理事の経験、遺品整理関係の著書・サイト制作サポートなどから、終活全般に強いライター。ファイナンシャルプランナー(2級)。終活関連の著書3冊、監修本1冊。最近の著書は「ゆる終活のための親にかけたい55の言葉」オークラ出版。ほか週刊現代WEBなどサイトへの終活関連コラム寄稿、クロワッサン別冊「終活読本」の監修や、令和6年5月発刊「ESSE」6月号のお墓特集を監修している。