山への散骨は違法?散骨の7つのマナーと散骨事業者に頼るときの流れ
更新:2024.08.09
「故人の遺志だったから、山へ散骨したい」
「自分が亡くなったら、山の中に散骨してほしい」といった事情で、山への散骨を検討している人もいるでしょう。
なかには、「山への散骨は違法ではないのか?」と不安に思っている人も、いるかもしれません。
山への散骨は違法ではありませんが、気をつけるべきマナーやルールがあります。
山へ散骨したいと考えたときの、7つの注意点をお伝えします。
また、散骨事業者に依頼する場合の流れについても解説します。
山での散骨は違法ではない
山への散骨は、違法ではありません。
海など他の場所への散骨と同様に、散骨を行うことが可能です。
ただ、散骨マナーが守られないと、周囲とのトラブルに発展する恐れがあります。
とくに山での散骨は海に比べて、トラブルになりやすいといえるでしょう。
海は沖合に出てしまえば、散骨することで誰かに迷惑をかける可能性が低く、人目にもつきにくいものです。
しかし山での散骨は、他人の所有地に何らかの迷惑をかけてしまうことがないとは言い切れず、散骨をよく思わない人から見つかってしまうと、悪いうわさが立つ恐れがあります。
山での散骨は、以下に紹介する散骨マナーを守った上で、慎重に行いましょう。
山で安心、安全に散骨するための7つのマナー
山で散骨するときは、次の7つのマナーを守りましょう。
条例で散骨が禁止されている場所では撒かない
散骨は国の法律で禁止されているわけではありません。
しかし、各県や市区町村で発令される条例によって禁止されることがあります。
条例で散骨が禁止されている場所では、散骨をしてはいけません。
もし散骨場所に希望があるなら、その市区町村や県の条例を調べ、散骨してもよいかどうかあらかじめ確認しておきましょう。
自分が所有している山に撒く
散骨する山は、どの山でもよいわけではありません。
他人の所有地や、公共の場所に撒くのは控えましょう。
自分自身が所有している山への散骨が最も安心です。
ただ、なかには知人などから許可を受け、他人の所有する山に散骨する人もいるかもしれません。
しかし、山の所有者は散骨を許諾していても、所有者の家族が事情を知らなければ、後でトラブルになる恐れがあります。
許可書を作成して一筆サインをもらったり、所有者の家族に挨拶したりして、後々問題にならないようにしておくのがおすすめです。
遺骨はパウダー状に粉骨する
散骨するとき、遺骨はその形状を視認できないよう粉状に砕くことが、厚生労働省が定める「散骨に関するガイドライン」に記載されています。
散骨事業者向けの内容ではありますが、個人で散骨をする場合にも守った方がいいでしょう。
もし粉骨しない場合、偶然遺骨を目にした人が事件性を感じてしまう恐れがあるためです。
粉骨を自分で行う場合、使うべき道具は特に決まっていません。
すり鉢や市販のブレンダーが、粉骨の道具として挙げられます。
粉骨を自分で行うことが難しい場合、粉骨のみを行ってくれる散骨事業者に依頼しましょう。
土の中へ遺骨を埋めない
お墓ではないところへ遺骨を埋めると、墓地墓埋法に違反します。
もともと散骨は、「遺骨をお墓ではないところへ『埋める』のではなく『撒く』のだから、法律に違反しない」という考え方のもとで行われています。
山で散骨するときは、土の中へ遺骨を埋めることのないように気をつけましょう。
なお、「それでは自分が所有している山の中にお墓をつくればよいのでは』と考える人もいるかもしれません。
しかし、墓地を作る許可を得られるのは、宗教法人と公益法人に限られており、個人的にお墓をつくることはできません。
他人の所有地に遺灰が舞わないよう配慮する
自分の所有している土地が小さいと、遺灰が風に乗って他人の土地へ侵入してしまう恐れがあります。
他人の所有地との境界線に近いところで散骨するのは避けましょう。
水源地や田畑に近い場所では散骨しない
水源地や田畑として利用されている土地に近い場所で散骨すると、散骨を目撃された際、風評被害に繋がることがあります。
不安があれば、その土地での散骨は諦めた方が無難です。
自然に還らないものは撒かない
散骨をした後は、故人の好物や花を手向け、手を合わせる人もいると思われます。
花を包んだセロファンを山に放置したり、お菓子の包み紙やペットボトル、缶などをそのままにして立ち去ったりするのはやめましょう。
山への散骨は散骨事業者を頼るのも一つの手
ここまで読み進めて、自力で山への散骨を行うのは難しいと考えている人もいることでしょう。
数は少ないですが、山での散骨を行っている散骨事業者があります。
「自力での散骨は無理だけれど、山での散骨に興味がある」という人は、散骨事業者の活用を考えましょう。
山での散骨を希望する場合、散骨の流れは次の4ステップです。
信頼できる散骨業者を見つけるためのポイントや、費用相場を含めて解説します。
1.自分が希望する土地で山での散骨を行っている事業者を探す
山での散骨を行っている散骨業者は、まだまだ数が少ないのが現状です。
まずは自分の希望地で散骨を行っている事業者を探しましょう。
インターネットを使うのが一般的な方法ですが、散骨事業者は葬儀社と繋がっているケースも多いため、近くの葬儀社に散骨事業者を紹介してもらえないか頼むのも一つの方法です。
2.信頼できる事業者か見極める
散骨サービスは、どんなに古くから営業しているところであっても創業から30年足らず。
まだまだ業界のルールやマナーが隅々まで浸透しているとはいえないので、ガイドラインを守らない事業者がいないとは言い切れません。
事業者がマナーを守らないと、依頼した側がトラブルに巻き込まれる可能性もあります。
信頼できる事業者かどうか、以下の方法で見極めましょう。
■ホームページに散骨のガイドラインを遵守する旨が記載されているか
ガイドラインを知っているかどうかを、まずは最初に確認しましょう。
■散骨先の山はどのような土地か
できれば、事業者自身が所有している山のほうが安心です。
また、水源地や田畑に隣接していたり、他人の所有地との境界線が近かったりすると、後にトラブルが発生する恐れがあります。
時間に余裕があれば、見学をおすすめします。
■散骨実績はあるか
散骨実績は、多い方が安心といえます。
また利用者の声を、悪いレビューも含めて記載している事業者は、比較的信頼できます。
3.見積もりをとる
信頼できると感じた散骨事業者に見積もりを依頼します。
できれば2~3社を比較できると理想的です。
散骨費用は、粉骨料金も含めて10万円から15万円を目安にするとよいでしょう。
遺族が立ち合わない委託散骨の場合、事業者が都合のよいときにまとめて散骨できるため、5万円程度で可能になる場合があります。
4.散骨を実施する
見積もりをもらい、価格に納得できたら契約を行います。
立ち合い散骨の場合は約束の期日に現地へ向かいますが、事前に粉骨するため遺骨の送付をお願いされるかもしれません。
遺骨はゆうパックで送ることができます。
委託散骨の場合は、遺骨をゆうパックで発送します。
散骨後、散骨事業者から報告があります。
散骨証明書や、現地の写真を送付してくれる会社もあります。
山への散骨は違法ではないが、慎重に行おう
かなり広大な山を所有しているなら、その山で散骨しても、周囲に悪い影響を与える恐れはあまりありません。
粉骨をしなければならないこと、自然環境に配慮することだけ心掛けましょう。
自分の土地がない人、山を所有していても散骨を行うと周囲に迷惑がかかる恐れがある人は、散骨事業者を頼るのがおすすめです。
信頼できる事業者かどうか、ネット情報の確認や電話での問い合わせでしっかり確認しましょう。
この記事を書いた人
奥山 晶子
葬儀社への勤務経験、散骨を推進するNPO「葬送の自由をすすめる会」の理事の経験、遺品整理関係の著書・サイト制作サポートなどから、終活全般に強いライター。ファイナンシャルプランナー(2級)。終活関連の著書3冊、監修本1冊。最近の著書は「ゆる終活のための親にかけたい55の言葉」オークラ出版。ほか週刊現代WEBなどサイトへの終活関連コラム寄稿、クロワッサン別冊「終活読本」の監修や、令和6年5月発刊「ESSE」6月号のお墓特集を監修している。