散骨で後悔しないためには?失敗事例からわかること
更新:2024.01.24
「自分亡き後は散骨してほしい」と考えている人はいませんか。
身内の希望で散骨をする必要がある人もいることでしょう。
散骨の失敗例を知っておくと、後悔のない弔い方が可能になります。
実際の失敗談から、散骨で後悔しないための方法を学びましょう。
目次
散骨とは海や陸に遺骨を撒いて弔うこと
散骨とは、遺骨をお墓の中に納めずに、海や陸に撒いて供養することです。
お墓ではない場所に遺骨を埋めると法に触れてしまうため、必ず「埋める」のではなく「撒く」ことが大事とされています。
また、他人名義の土地に許可なく遺骨を撒いてはいけませんし、公共の場である海へ撒く場合であっても、海水浴場や漁場の近くではなく船で沖合に出るなどのマナーが求められます。
個人で行おうとするとマナーを遵守するのが難しいため、散骨業者を介して行うのがおすすめです。
マナーを守らないと、トラブルに巻き込まれる可能性が高くなります。
また、たとえマナーを守って散骨できたとしても、後悔してしまうことがあります。
実際にあった失敗談をご紹介しましょう。
散骨の失敗例1:お墓があるのに、ご住職や親族に断りを入れず散骨を行った
すでに先祖代々のお墓が用意されているのに、葬儀を行ってくれた菩提寺のご住職や親族に相談せず散骨を行うと、驚かれてしまうことが多々あります。
ご住職や親族は、てっきり遺骨をお墓に入れるものと思っているためです。
ご住職の怒りに触れ「以後、故人の法要は行わない」と言われてしまったケースがあります。
また、「勝手に散骨するなんてひどい」と親族に言われ、わだかまりを作ってしまった人もいます。
この場合、散骨をする前にひとこと相談をするだけでトラブルを防げるケースが多いでしょう。
散骨に対する考え方は様々ですが、最近では故人や遺族の意思を尊重する考え方が主流になりつつあります。
「反対されるかも」と必要以上に構えず、話を切り出すのが大事です。
また、故人の希望で散骨したいにもかかわらず、親族の反対にあって散骨がなかなかできない場合は、分骨も考えてはいかがでしょうか。
遺骨を分けて一部をお墓に納め、もう一方を散骨します。
分骨するための骨壺は、葬儀社や火葬場に用意されているほか、ネットショップでも購入可能です。
散骨の失敗例2:全て散骨してしまった後、祈りの対象がなくなって寂しい
お墓をつくらず全ての遺骨を散骨した後、命日や法要のときお参りする対象がなく、寂しいと感じる人がいます。
海に散骨した場合は海に向かって手を合わせる、命日には散骨地点に行って手を合わせるなどの供養法がありますが、実際に遺骨がないと供養の実感が湧かない人は多いようです。
もしもお墓をつくらないなら、散骨する際に遺骨の全てを撒かず、遺灰をほんの少しだけ手元に残しておくことをおすすめします。
小さな骨壺に納めてリビングで供養したり、ペンダントのロケット部分に遺灰を込めて身につけたりすれば、きっと安心できます。
散骨の失敗例3:陸地に散骨したら周辺住民とトラブルになった
他人の所有地に無断で散骨するのはトラブルの元ですが、自分の所有地であっても、近隣への配慮が必要です。
近隣の住民に見つかって「遺灰が洗濯物についたらどうする」と怒られてしまった事例があります。
また、山林に散骨を行うと「近隣の農地で生産される農産物に風評被害が出るのでは」という憶測が広がり、結果、散骨禁止条例が敷かれてしまった自治体もあります。
以上のように、陸地での散骨はトラブルに繋がりやすいことから、ほとんどの散骨業者が海洋散骨を行っています。
散骨の失敗例4:希望の場所に散骨できず違和感が残った
故人から「思い出の土地に散骨してほしい」と言われていたため散骨業者に相談したところ、有名な観光地のごく近くであることを理由に断られてしまったケースがあります。
仕方なく別の場所に散骨しましたが、「他の場所に散骨するくらいだったら、お墓をつくってあげた方が良かったのでは?」と、遺族はしばらく悩みました。
本人の希望で散骨を選ぶのであれば、できれば生前から希望の場所で散骨ができるか調べておくのがおすすめです。
散骨は違法ではありませんが、他の人の迷惑になるようなところではできません。
散骨業者が提案する場所のなかから選択するのがいいでしょう。
散骨の失敗例5:強い海風が吹き、頭から遺灰をかぶってしまった
船を保有している人は、近くの漁場などに了承をもらえれば業者を通さず散骨が可能です。
しかし、自力で散骨しようとすると、必要な準備が分からず失敗してしまうケースが見られます。
ある人は、海上で遺骨を海に撒こうとしたとき、海風にあおられて遺灰を頭からかぶってしまいました。
身内の骨とはいえ、なんともいえない気持ちになったそうです。
散骨業者は、遺灰が風に舞ってしまわないよう、水溶性の紙袋に遺灰を納めて散骨します。
つまり、散骨といっても実際に「撒く」わけではなく、紙袋に入った遺灰を静かに「下ろす」イメージです。
このような失敗をしないために、業者を通さず散骨したい場合は、事前に散骨のためのマナーをよく確認することが重要です。
散骨で後悔しないために気をつけたいことまとめ
散骨の失敗談から、散骨で後悔しないために気をつけたいことをまとめました。
事前に関係者へ相談する
最も理想的なのは、本人が存命中に、本人の口から「散骨を選びたい」とご住職や親族に伝えることです。
遺族が説明する必要がなくなるので、後の負担を減らせます。
もし反対されたら、「お墓を管理する負担がなくなる」などのメリットを強調し、理解を促しましょう。
分骨の可能性も視野に入れる
親族からの反対が強い場合は、分骨の可能性も視野に入れておきましょう。
すでに配偶者がお墓に入っているときなどのケースでも、分骨は有効です。
なかには「分骨すると、体が分かれて成仏できない」という説を信じている人もいます。
分骨に反対する遺族がいる場合は、「お釈迦様の遺骨も世界中に散らばっている」と説得してみましょう。
お釈迦様の遺骨を祀る塔は「仏舎利塔」と呼ばれ、観光地化しているところもあります。
遺灰を少しだけ手元に残しておく
もし「遺骨がなくなったら寂しい」という話にピンと来なくても、安心のために少し遺灰を残しておきましょう。
後で「やはり必要ない」と思ったら、いつでも散骨できます。
できれば生前に散骨業者や場所まで決定しておく
希望の散骨が可能かどうか、本人が存命のうちに調べておきましょう。
生前から見積もりをとっておけば、お金の不安もなくなります。
業者を通さず散骨する場合はマナーを確認し守る
散骨には以下のようなマナーがあります。遵守するようにしましょう。
★犯罪性を疑われないよう遺骨は粉砕しパウダー状にする
★パウダー状にした遺灰を水溶性の紙に包んで散骨する
★花束を包んだビニールなど、自然に還らない物は撒かない
★海水浴場や漁場の近くでは行わない
★周辺感情に配慮するため喪服を着ない
★散骨条例が敷かれている自治体では散骨をしない
まとめ
故人の願いを叶えてあげたいと、熱意に任せて行き当たりばったりに散骨してしまうと、トラブルに巻き込まれる可能性が高まります。
散骨マナーを確認して慎重に行うか、散骨業者に任せましょう。
また、自分にとってかけがえのない故人は、他の遺族や親族にとっても同様の存在のはず。
自分のみならず、周りの人たちの心情に配慮するのも大事です。
この記事を書いた人
奥山 晶子
葬儀社への勤務経験、散骨を推進するNPO「葬送の自由をすすめる会」の理事の経験、遺品整理関係の著書・サイト制作サポートなどから、終活全般に強いライター。ファイナンシャルプランナー(2級)。終活関連の著書3冊、監修本1冊。最近の著書は「ゆる終活のための親にかけたい55の言葉」オークラ出版。ほか週刊現代WEBなどサイトへの終活関連コラム寄稿、クロワッサン別冊「終活読本」の監修や、令和6年5月発刊「ESSE」6月号のお墓特集を監修している。