樹木葬で後悔しないために必要なことは?失敗例から学ぶ注意点
更新:2024.02.10
樹木葬は、最近人気の出てきたお墓の形です。
「樹木に囲まれて眠ることができる」「地球環境に貢献できる」というイメージから惹かれる人が多いようですが、失敗してしまう例も発生しています。
実際にあった樹木葬の失敗例をご紹介したうえで、樹木葬を選ぶときの注意点をまとめました。
樹木葬とは墓石ではなく樹木を墓標にしたお墓
樹木葬とは、「先祖代々之墓」などと刻まれている墓石ではなく、樹木を祈りの対象とするお墓のことです。
桜やクスノキといった大樹をシンボルツリーにして周囲に多くの遺骨を納骨する集合墓タイプと、一つの区画に一本の草木を植える個別墓タイプがあります。
墓石をあまり使わないこと、集合墓タイプであれば専用スペースが小さいことから、一般的なお墓よりも価格が抑えられます。
また基本的には永代供養で、後継者を立てる必要がありません。
「安価で後継者のいらないお墓」というメリットは、少子化が進み、ライフスタイルの多様化で生涯独身の人が珍しくなくなった現代に適したものです。
このことが多くの需要を生んでいます。
また、墓石を使わず樹木を植えるということは、そのまま環境保護にもつながります。
地球環境に貢献したいと願う人からも、樹木葬は人気があります。
樹木葬と散骨との違い
自然に還るイメージを持つ樹木葬と、海や陸地に遺骨を撒く散骨はどう違うのでしょうか。
樹木葬はお墓の一種です。お墓をつくることを市区町村に申請し、許可を得た場所につくられます。
一方で、散骨はお墓をつくりません。海や陸地に、粉砕してパウダー状になった遺灰を撒きます。
お墓ではないので、お墓として許可を得ている土地に遺骨を撒く必要はありません。
海水浴場や漁場から離れた海洋や、自分が所有している山林などに撒くことができます。
散骨を行う場合、遺灰を土に「埋めて」はいけません。
お墓として許可を得ていない土地に遺骨を埋めると、違法になってしまうためです。
あくまで遺灰を「撒く」のが、散骨のルールです。
樹木葬の失敗例
実際にあった失敗例から、樹木葬を選ぶときに注意したい点を学びましょう。
見学に行かず契約したら景観が悪かった
高齢になると足腰が弱くなり、樹木葬の墓地へ見学に行きたくてもなかなか行けないケースがあります。
電話だけで契約するケースもたくさんあるようです。
しかし、見学せずに契約すると、いざ訪れたとき「こんなハズじゃなかった」と思うことも。
ある高齢女性は、足が弱いからと電話で樹木葬を契約し、先に亡くなったご主人を埋葬しに初めて墓地を訪れました。
するとパンフレットで見た景観画像とはまるで違う、荒れた雰囲気に驚いたそうです。
よく確認してみれば、広い樹木葬墓地のなかで景観が良いと感じられるのはほんの少しの区画。
ご主人を埋葬するスペースから見える景色は、とても寂しいものだったとか。
「自分もここに眠るのか」と思うと、少し後悔したとおっしゃっていました。
自然に還れると思ったのに、骨壺ごとお墓に入った
ある女性は、お母様の遺骨を、生前に契約していた樹木葬墓地に埋葬しようと現地を訪れました。
お母様は「亡くなったら自然に還りたい」と言っていたため、骨壺から遺骨を取り出して土に直接埋めるのだろうと考えていました。
しかし、いざ埋葬場所に案内されてみると、そこは豊かな木々に囲まれてはいるものの、上に観音様像がしつらえられた供養塔でした。
供養塔の中に、骨壺のまま埋葬するように言われた女性は「はたして母の理想とする樹木葬だったのだろうか」と悩んだそうです。
気になって見学したが、寺院の檀家向けの樹木葬だった
ホームページ上で美しい樹木葬の画像を見た男性は、問い合わせ先の寺院に墓地見学を予約しました。
墓地に訪れてみると、寺院の境内にある一般的な墓地の中に、樹木葬用の墓地が少しだけ用意されています。
ご住職が説明に現れ、「樹木葬ではありますが、ウチでは檀家になってもらいます」と言われました。
樹木葬といえば「檀家になる必要のない永代供養」というイメージを持っていた男性は、とても驚いたそうです。
自然溢れる場所だと思っていたのに、コンクリートが敷かれた立派な墓地だった
環境問題に強い関心を持つ女性が、近くに樹木葬の墓地があることをネットで調べ、見学に訪れました。
小高い丘に芝生が敷かれており、四季折々の花が咲き乱れるイメージを持っていたその女性は、見学した樹木葬墓地があまりに一般的な墓地とそっくりだったので驚いたそうです。
コンクリートできちんと整備され、墓石を設けたうえで樹木が植えられていました。
調べてみれば、女性のイメージに合うような自然いっぱいの樹木葬墓地は自宅から遠く、契約を悩んでいるとのことです。
故人の希望で山林の樹木葬としたが、お墓参りが辛い
自然溢れる場所に眠れたとしても、失敗はあります。
ある男性は奥さまの希望により、山林の中につくられた樹木葬墓地を契約しました。
先だった奥さまを埋葬しに訪れたところ、あまりのアクセスの悪さに驚いたそうです。
緑あふれる土地柄なので仕方がないのですが、ローカル電車を乗り継いで、バスは2時間に1本。
タクシーを呼んでもなかなか来ません。「見学会は貸し切りバスが出ていたので、不便さに気づけなかった」と男性はこぼします。
生前に支払う年間管理費が思いのほか高い
樹木葬墓地の中には、永代供養であっても埋葬されるまでは管理費用を支払うケースが多く見られます。
樹木葬墓地は草木の管理が必要なため、一般的な墓地よりも管理費用が高くなる傾向にあります。
ある女性は「人気の樹木葬なので、急いで契約してしまいました。
毎年、年間管理費用を支払うとき『あと何回払うのだろう』と考えています」と苦笑い。
長生きは良いことですが……。
急いで契約したが、数年後にもっとよい樹木葬が見つかった
ある男性は、近所に樹木葬墓地ができると聞き「区画が埋まらないうちに契約してしまおう」と急いで見学し、契約を決めました。
以前、気に入った樹木葬墓地がすぐに埋まってしまったという苦い経験があったためです。
しかし数年後、需要の増加に伴ってか、新設された樹木葬墓地の情報をたくさん目にするようになりました。
なかには、自分が契約したところよりもアクセスが良く、理想に近い景観の墓地もあります。
「契約するのを早まったかも」と、男性はため息をついていました。
失敗例から学ぶ樹木葬の注意点まとめ【必見】
以上、いくつかの失敗例をご紹介しました。
失敗例から学べる樹木葬の注意点は、以下の5つです。
見学が可能なくらい健康なうちから墓地探しを始める
墓地の契約というと「自分にはまだ早い」「そのうち、健康に不安が出てから」と考える人もいるでしょう。
しかし、健康を損ねると墓地見学ができず、現地を見ることなく契約することになってしまいがちです。
足腰が弱まる前に、理想の樹木葬を見つけましょう。
埋葬方法を確認する
土の中に直接遺骨を埋葬せず、骨壺のまま埋葬する樹木葬もあります。
「なくなったら自然に還りたい」と考えている人はとくに、埋葬方法をしっかり確認しましょう。
樹木葬イコール永代供養とは限らない
一般的なお墓と同じように、後継者が年間管理費用を支払い続けていく樹木葬も存在します。
お墓参りの都合も考える
お墓参りをしてくれる人が訪れやすいかどうかも、判断材料に加えましょう。
アクセスのほか、山林にある樹木葬墓地はとくに洗面所や休憩所の有無を調べるのが大事です。
生前契約は「安心料」も支払っていると納得して
生前に樹木葬を契約すると、亡くなるまでは年間管理費用を支払うケースが多くみられます。
また、近くにもっとよい樹木葬墓地ができるのを、指をくわえて見ているなどということになりかねません。
「早めに契約することによって、もうお墓探しをしなくて済むという安心も買っているのだ」と納得できるかどうかが、後悔しないためのポイントです。
以上5点に注意しつつ、早いうちから樹木葬探しを行いましょう。
この記事を書いた人
奥山 晶子
葬儀社への勤務経験、散骨を推進するNPO「葬送の自由をすすめる会」の理事の経験、遺品整理関係の著書・サイト制作サポートなどから、終活全般に強いライター。ファイナンシャルプランナー(2級)。終活関連の著書3冊、監修本1冊。最近の著書は「ゆる終活のための親にかけたい55の言葉」オークラ出版。ほか週刊現代WEBなどサイトへの終活関連コラム寄稿、クロワッサン別冊「終活読本」の監修や、令和6年5月発刊「ESSE」6月号のお墓特集を監修している。