親に「終活」してほしい!葬儀、墓、相続の話題でかける言葉、5つのヒント
更新:2023.01.14
自身が40代、50代になってくると、親の老いが目立ってきて、親の「終活」という言葉が頭をよぎる人もいることでしょう。
「要介護になったらどうしよう」「もし親が亡くなったらまず誰に連絡すればいい?」という疑問が生じたとき、当の本人である親には希望を聞きにくいという人は多いと思われます。
葬儀や墓、介護、相続など終活にまつわる話題について、親とどう話し合えばよいか。言葉がけのヒントをご紹介します。
目次
葬儀や墓、介護や相続……終活について、親はどう思っている?
終活をしたいと考えている親世代は少なくありません。
販売部数32万部のシニア女性誌「ハルメク」を発行しているハルメクホールディングスが2021年に行った、60歳~74歳の男女1008名を対象とした調査によると、「終活は必要だと思う」と答えた人は79%。関心の高さがうかがわれます。
一方で「終活をすでに始めている」のは38.3%。終活したいという希望はあるものの、具体的には進めていないという人が大半のようです。
しかし、終活への意識は今後もっと高まっていくと考えられます。
コロナ禍により、いつ、だれが突然亡くなってもおかしくない時代が急に訪れたためです。
年代に限らず、「自分もコロナで亡くなるかも」という考えがよぎった人は、多いのではないでしょうか。
実際、先の調査で「終活を今後実施する予定」と答えた人は、2018年の調査より、男女ともに増えています。
2018年の時点では男性35.3%、女性46.0%だったのが、2021年にはそれぞれ38.3%、46.1%と伸びているのです。
子世代であるあなたが親に「終活を」と切り出すときには、親自身も終活について常々考えていると思っていいでしょう。
もしかしたら、すでに終活を行っている最中かもしれません。
どんな知識があればいいかを先に知っておこう
ひとくちに終活といっても、分野は様々です。人生の終わり方について、どのような知識や親の希望を知っておくとよいのかを、あらかじめ知っておきましょう。分野別に紹介します。
介護
介護が始まったら、主に誰に介護をしてほしいか。介護を受ける場所はどこが良いか。
介護施設などに住み替えたいと考えているのであれば、そのためのお金は用意してあるかも聞いておけると安心です。
医療
急に倒れたとき、誰に連絡してほしいか。かかりつけ医はどこか。
救急車を呼ぶような事態になったときのために、同居家族や子世代が、本人の保険証のありかや普段飲んでいる薬を把握しておくのも大事です。
葬儀
葬儀の宗派、葬儀ホールや葬儀社の希望、最後に着たい衣装、遺影の希望、棺の中に入れてほしいもの。
生前に葬儀社から見積もりをもらい、契約しておく人もいます。
お墓
先祖代々のお墓に入りたいか、もしくは自分一人だけのお墓がよいか。
最近は一般的なお墓のほか、墓石を立てずに樹木をシンボルとする樹木葬や、海や山に遺骨をまく散骨、ほかの人と一緒に合祀される永代供養墓などを希望する人もいます。
相続
まずは全財産を把握しておくことから始めるのが大事です。
通帳が複数あってどの銀行にいくら入っているかわからない、保険を複数かけていていつ満期になるか把握できていないという人も、意外と多いものです。
以上のように、終活の話題は多岐にわたります。話しやすいものから進めていくとよいでしょう。
ヒントその1:知人の話題から入る
さりげなく終活の話題を振る一つのポイントは、親本人のこととして話を切り出すのではなく、親戚や近所の知り合いが「介護が必要になった」「最近亡くなった」などといった話題から入ることです。
そこから「自分たちがそのような状態になったら、どうするか」という話へ広げていくことができます。
(対話例)
子「お向かいの〇〇さん、さっき久々に会ったら車いすだった」
親「少し前に階段で転んで入院してたんだけど、どうやらもう自力では歩けないみたいだ」
子「本当に? 転んだだけでそうなるの?」
親「年を取ると骨がもろくなるからね。私だって、いつどうなるかわからないよ」
ヒントその2:自分ごととして相談してみる
終活はシニアの問題と思われがちですが、若い世代にも共通のテーマはあります。「急に入院したらどうするか」「通帳やカードを整理して財産管理をしたい」といった話題がその一例です。あくまで自分の問題として切り出すことで、自然な会話の流れが作れるでしょう。
(対話例)
子「急に感染症になって、明日から入院って言われたら、いったいどうすればいいんだろう」
親「入院に必要な歯ブラシとか着替えとか、ひとまとめにして用意しておいたらどう?」
子「そうか! お母さんは、そういうものをいつも用意しているの?」
ヒントその3:話題にしやすい時期を利用する
お盆と春・秋のお彼岸は、お墓参りの時期です。仏壇に手を合わせながら、あるいはお墓参りの準備をしながら先祖の話をしていると、お墓の話も切り出しやすくなります。
また、お墓や終活についてのテレビ番組が多くなる時期でもあります。
テレビで終活の話題が流れていれば、自然とそういった話に持ち込むことができるでしょう。
(対話例)
子「(お墓に手を合わせながら)そういえばこのお墓、誰の代から入ってるの?」
親「ひいおじいちゃんからだよ」
子「古いね。でも私は、遠くに住んでるからこのお墓は継がないと思うな。お父さんはどうしたい?ここに入りたい?」
ヒントその4:知らないことを尋ねてみる
法要や葬儀など仏事の世界は、親の世代が当たり前に知っていても、子世代には知らないことだらけです。
菩提寺はどこか、ご存じでしょうか。
法事はどんなときにやるのか、法事を行うときには誰に連絡をすればよいのかも、知らない人は多いのではないでしょうか。
親に教えを請いながら、供養について親自身はどう思っているのか、希望を聞き出しましょう。
(対話例)
子「(仏壇に手を合わせながら)そういえば、うちって何宗?」
親「そんなことも知らなかったの?〇〇宗だよ」
子「お寺の名前も知らないよ」
親「〇〇院だよ。電話番号はこれだから、もしものときのために控えておきなさい」
ヒントその5:親の「好きなもの」を情報収集する
葬儀の場では、「本人が好きだったものは何か」と葬儀社に尋ねられる場面が多くあります。
好きだった花や食べ物を祭壇に飾ったり、遺影のバックを好きな色にしたりと、故人らしさを大事にした葬儀にするためです。
いざそう聞かれたときのために、贈り物の機会などを利用して親の「好きなもの」を情報収集しておくといいでしょう。
(収集しておくと葬儀のとき役に立つ情報)
・好きな色
・好きな花
・好きな食べ物、飲み物
・いざというときに着たい服(最後の衣装に)
・最近、一番顔映りが良いと思った写真(遺影に)
少しずつの聞き取りが、きっと後で役に立つ
日ごろは忙しくて親と会話する機会がないという人も、少しずつ聞き取りを重ねていくことによって、親の終活に必要な情報が増えていきます。親が元気なうちから、慌てず、急がず、いつかのための話を進めていきましょう。
また、親の終活をすると、自分にとってもためになります。「自分が今、不幸にも亡くなってしまったら?」「事故で意識がない状態が続いたら?」とイメージし、必要なことを書き留めたり、家族と話し合ったりしておくことも大事です。
この記事を書いた人
奥山 晶子
葬儀社への勤務経験、散骨を推進するNPO「葬送の自由をすすめる会」の理事の経験、遺品整理関係の著書・サイト制作サポートなどから、終活全般に強いライター。ファイナンシャルプランナー(2級)。終活関連の著書3冊、監修本1冊。最近の著書は「ゆる終活のための親にかけたい55の言葉」オークラ出版。ほか週刊現代WEBなどサイトへの終活関連コラム寄稿、クロワッサン別冊「終活読本」の監修や、令和6年5月発刊「ESSE」6月号のお墓特集を監修している。