終活を親子で考えよう~これだけは押さえておきたい8つのポイント~
更新:2024.12.12
年老いた両親に今後のことをしっかり考えてもらいたいと思ったら、子世代も終活に参加しましょう。
子どもが主体性を持って終活に加われば、「親が突然亡くなったとき何に困るか」が具体的にわかり、すべきことが明確になります。
将来、自分自身が終活を進めるときもスムーズに行えます。
終活を親子で始める3つのメリット
終活は、親子で進めるべきものです。
なぜなら、親が「最後はこんなふうに見送られたい」と考えても、子どもがその希望を知らなければ実現はしえないためです。
親子で始める終活には、以下の3つのメリットがあります。
親子のコミュニケーションが増える
終活を進めるためには、頻繁にやり取りしなくてはなりません。
親子のコミュニケーションが増えれば、子が親のことをよく知るきっかけになります。
いざというとき、親のことをどれだけ知っているかが、死後の手続きなどを円滑に進めるポイントになります。
親の負担が軽減されスムーズに進む
年老いた親は、体力や気力の不足から、なかなか終活が進まない恐れがあります。
とくに家の中の整理など体力がいる仕事は、子どもが手伝うことで親の負担が軽減されます。
子世代自身の終活の勉強になる
親が終活でたどる道は、いずれ自分もたどらなければならない道です。
高齢になったとき、親子終活の経験があれば何をすればよいか手に取るようにわかるでしょう。
親子終活で押さえておくべき8つのポイント
親子終活をするにあたり、押さえておくべきポイントは8つです。
やるべきことを順番にリストアップするため、ぜひ参考にしてください。
1:親と子のエンディングノートを手に入れる
エンディングノートとは、「自分で自分のことができなくなってしまったとき」に、家族などへ自分の希望などを託すためのノートです。
亡くなったときに限らず、急な事故で入院したとき、脳や心臓の疾患で突然倒れたとき、認知症になったときなどに役立ちます。
事故や病気は高齢者に限ったことではなく、子世代にも降りかかる可能性があります。
親子それぞれのエンディングノートを手に入れましょう。
終活で行わなければならないことが網羅されているため、パラパラとめくるだけでも終活の全体像が分かります。
全世代向けのエンディングノートについて、以下の記事で解説しています。
ぜひ参考にしてください。
2:キーマンの連絡先を共有する
急な入院や介護が生じたとき、または亡くなってしまったときに、まずは誰に連絡するとよいかを押さえておきましょう。
「自分が急な事故などに遭ったとき、この人たち(会社や友人関係など)に連絡して欲しい。
お父さんたちも、そういう人の存在を教えて」と切り出すと、自然に連絡先を共有できます。
スマホを持っている親であれば、LINEで連絡先を共有するのが楽な方法です。
パソコンのできる親であればスプレッドシートで共有するのもおすすめです。
3:家の中を整理する
親の家が片づいていないと感じたら、一緒に家の中を整理しましょう。
とくに廊下など動線をふさいでいるものがあると、つまずいて転倒する危険があります。
また、ものが溢れた家は、親の死後に片づけるのがとても大変です。
子世代が一緒に片づけるなら、まずは真っ先に子どものものから整理しましょう。
不用なものは処分する、思い入れのあるものは自宅に引き受けるなどして部屋をスッキリさせると、親も「片づけよう」とやる気になってくれるはずです。
4:財産のリストを作る
財産を把握することは、のちの遺言書づくりと遺産相続の基礎になります。
また、いらない口座やほったらかしの株を整理すれば、あとあと子世代の負担が軽減されます。
自宅をはじめとした不動産、銀行口座、証券類、車、宝飾骨董類などをリストアップします。
なかには、子世代が初めて知るような財産があるかもしれません。
また、マイナス財産を知っておくのも重要です。
リフォーム代や趣味のための大型出費などは、分割して支払っている可能性があります。
月々いくら払っているのか、何ヶ月続くのか、ローンの内容を書き出してもらいましょう
5:使っているサービスの情報を共有する
消費社会の現代では、年齢にかかわらず日々さまざまな契約を結び、サービスを利用しています。
なかでも知っておきたいのが、サブスクリプションサービスの情報です。
「うちの親はサブスクなんて使っていない」と思う方もいるでしょう。
しかし、サプリなど健康食品の定期購入もサブスクの一種といえます。
定期購入や分割購入しているサービスがないかを聞いておきましょう。
また、ネットやスマホ、電気、水道、ガスなどのライフラインも契約のうち。
親が亡くなったら解約や名義変更をする必要があるため、どの事業者を選んで契約しているかも押さえておいた方がいいです。
6:葬儀の希望を聞く
今、親族を中心とした家族葬など、小さい規模のお葬式がブームです。
しかし、お世話になった人皆を呼ぶような、昔ながらの葬儀が良いという人もいます。
どんな葬儀がよいか、親と話し合えると理想的です。
葬儀については、宗派も重要なポイントになります。
無宗教葬がよいという人も多いですが、入ろうとしているお墓が寺院墓地のものだと、無宗教葬にするのが難しくなります。
寺院墓地に入りたいのであれば、その宗派でお葬式を行うのが前提条件になるためです。
葬儀の宗派は今のお墓がある寺院の宗派でよいのか、もし嫌であれば、他に宗教フリーのお墓を設けて無宗教葬とするのか。
できれば話し合っておきたいことです。
また、家を整理しているうちにアルバムがたくさん見つかることと思います。
その機会に、遺影候補を選んでおけると理想的です。
ただ、紙焼き写真の中には、最近の写真は見当たらないかもしれません。
親がスマホで撮影し合った写真の中から遺影を選ぶか、もしくは子どもが撮影してあげましょう。
7:お墓の希望を聞く
今あるお墓に入りたいと考えているのか、それとも新しく夫婦のお墓をつくりたいのか。
もしくは個別のお墓を作らず、多くの人の遺骨と一緒に埋葬される合祀墓がいいと思っているのかを聞き出しましょう。
もし親が「今あるお墓に入りたい」と考えているなら、子世代がお墓を継ぐ必要があります。
お墓の維持費について聞き出し、心づもりをしなければなりません。
ただ、お墓を継ぐ意思がなければその旨を親に伝え、話し合いましょう。
新しくお墓をつくる場合は、今あるお墓の「墓じまい」をどうするか考えましょう。
墓じまいとは、お墓を撤去して元の持ち主(寺院等)へ墓地を返還することです。
親だけでなく親族の意向も大事なので、親の兄弟姉妹などとの話し合いが必要になります。
8:遺言書を作成する
遺言書があると、相続がスムーズに進みます。
死後、様々な手続きが必要になる中、最も難関といえる相続手続きが円滑に行えるのは、子世代にとって安心できることです。
財産リストを頼りに、何を誰に相続させるか決めてもらいましょう。
ただし、子世代のうち一人だけが遺言作成を手伝うと、いざ相続が生じたとき「親に、自分が有利になるような遺言を書かせたのでは?」と親族に疑われてしまう恐れもあります。
オンラインでも構いませんので、相続に関する話し合いは必ず子どもみんなが集まる場所で行いましょう。
終活を親子ですれば、今後やるべきことが明確になる
親子で終活をスタートさせれば、折に触れてさまざまな疑問が生まれるでしょう。
例えば、家を整理すると「不用な骨董品や宝飾品はどこに売ればいい?」と感じたり、財産リストを元に相続について考えたとき「不動産の価値って、どうしたら分かるの?」と思ったりします。
インターネットを駆使したり、専門家に尋ねたりして、親と一緒に疑問を解消していくうちに終活のゴールが見えてきます。
親が亡くなってから全てやろうとしたら一気に片づけなければなりませんが、親が元気なうちなら、少しずつ時間をかけて解決していけます。
スタートが早すぎるということはありません。
今日からでもぜひ、親子終活を始めましょう。
この記事を書いた人
奥山 晶子
葬儀社への勤務経験、散骨を推進するNPO「葬送の自由をすすめる会」の理事の経験、遺品整理関係の著書・サイト制作サポートなどから、終活全般に強いライター。ファイナンシャルプランナー(2級)。終活関連の著書3冊、監修本1冊。最近の著書は「ゆる終活のための親にかけたい55の言葉」オークラ出版。ほか週刊現代WEBなどサイトへの終活関連コラム寄稿、クロワッサン別冊「終活読本」の監修や、令和6年5月発刊「ESSE」6月号のお墓特集を監修している。