遺品整理ですぐ捨ててはいけないものは?整理してはいけない「人」も解説
更新:2023.05.30
遺品整理を行っていると、最初は慎重に仕分けをしていてもどんどん集中力が切れてきます。
そして「早く終わらせてしまいたい」という思いにもなり、捨ててはいけないものもうっかり捨ててしまいがちです。
もちろんクレジットカードや本人確認書類、現金などを捨てる人はいないでしょう。
しかし、反射的に「これはいらないだろう」と思ってしまうようなものの中には、すぐに捨ててはいけないものが含まれています。
この記事では、遺品整理ですぐに捨ててはいけないものについて解説します。
遺品整理ですぐ捨ててはいけないもの8つ
とくに次の8つは、「うっかり捨ててしまって、後で必要なことを知った」と語る失敗談が多い傾向にあります。
遺品整理をするときは気をつけましょう。
古い通帳
表紙がかなり黄ばんでいたり、何年も記帳をした形跡がなかったりするような通帳は「あまり使っていない口座だったのだろう」と捨ててしまいがちです。
しかし、口座にお金が残っている可能性は十分にあります。銀行に問い合わせ、口座番号を照会してみましょう。
もし「使われていないと思っていた口座にお金が入っていた」という事態になったら、遺産総額が増えるため相続がやり直しになる可能性すらあります。
保険証書が見当たらない保険資料
遺品整理中に分厚い保険の資料が見つかったら、すぐに捨ててしまいたくなります。
しかし、その資料の対象保険が遺族にとって初めて見るものだったら、捨てるのは少し待って下さい。
故人がその保険に入っていたにも関わらず、保険証書が見つかっていない可能性があります。
証書を探し、見当たらなかったら保険会社に問い合わせて照会してみましょう。
印鑑
ペンケースにコロンと収まっていたり、雑多な小物の中に埋もれていたりする印鑑は「重要なものではないだろう」と捨ててしまいがちです。
しかし、日常使いするからこそ無造作にしまわれている可能性もあります。
もしその印鑑が実印だったとしたら、捨ててしまえば各種手続きが面倒になる可能性があります。
印鑑はまとめて袋などに入れ、死後手続きが終了するまで保管しておくのがおすすめです。
小さいものなので保管もそれほど苦にはならないでしょう。
カギ
一見オモチャのように見えるカギも、サビついてしまった古いカギも、どこのカギかが分かるまではいったん保管しておきましょう。
重要書類が収まった引き出しのカギかもしれないためです。
大事なものが入った引き出しのカギは、なるべく引き出しから離れたところに置きたいというのが人の心理です。
「台所のカトラリー置き場に何気なく置かれていたカギが寝室のタンスのものであり、その中に現金がたくさん納まっていた」といった体験談も耳にします。
時計やネクタイ、宝飾品、ハンカチなど身につけるもの
遺品の中でもとくに、身につけるものは形見として譲る可能性が高くなります。
また、形見は人によって評価がかなり分かれるものです。
もし、相続人の1人が「このような古い時計はいらないだろう」と捨てようとしても、もう1人が「お父さんがつけていた思い出深いものだから」と引き取ろうとする可能性があります。
故人がとくによく身につけていたものは、どんなに状態が悪くてもいったん保管しておき、他の相続人に形見として受け取るかどうか尋ねましょう。
郵便物
届いてから封も開けていないような郵便物や、故人が亡くなってから届いたものは、大量にあると一つひとつ差出人を確認するのが面倒になってしまいます。
しかし、差出人がどんな人物や法人で、故人にとってどんな存在にあたるのかだけは、しっかり把握してから捨てるようにしましょう。
もし差出人が故人の友人であれば、訃報を出さなければならない間柄かもしれません。
また、DMに見える企業からの郵便物も、開いてみれば故人が何らかの取引をしていることが分かるかもしれません。
故人宛の郵便物は遺族が知り得ないことを教えてくれる、情報の源泉です。
掛軸、壺、花瓶、お茶道具など床の間にあるもの
床の間にはその家の財産となる美術品が飾られる可能性が高く、とくに掛軸や壺など骨董品に数えられるものは要注意です。
どんなに古そうに見えても、一度専門の鑑定家に見てもらった方がいいでしょう。
気をつけたいのは、故人が茶道をたしなんでいた場合です。
茶道具の中には、その流派でしか使われないものや、すでに亡くなった名人の作品が含まれていることがあります。
可能であれば茶道具の鑑定ができる古美術商などに来てもらった方がいいでしょう。
もし遺品が思いのほか高く売れたら、遺産総額が増えるため相続がやり直しになる可能性があります。
仕事の資料
故人が使っていた仕事の資料は、できれば在籍していた会社に引き取ってもらいましょう。
契約書など、会社にとっても重要な書類が含まれていることがあるためです。
遺族が資料の要不要を判断するのは不可能です。
必要ないとはいえ、なかなか捨てられないものを処分する方法
なかには、「捨てたいけれど捨てられない」と悩んでしまうものもあるでしょう。
代表的なものを挙げ、処分方法をご紹介します。
遺影
故人の住んでいた家が空き家となる場合、「ご先祖様の大きな遺影をどうしよう」と悩む人は多いと思われます。
遺影の役目を終えたと考え、そのまま処分してしまっても問題はありません。
もしどうしても気になる場合は菩提寺に相談してみましょう。
引き取りの上、供養してくれる可能性があります。
葬儀社等が行っている供養祭に参加するのも1つの手です。
人形やぬいぐるみ
人形やぬいぐるみには念がこもっているといわれています。
言い伝えを信じる気持ちがなくても、「かわいらしいぬいぐるみがゴミ袋に入っているのを見るのは心が痛む」と感じる人は少なくないでしょう。
近くの葬儀社やお寺のなかに、年何回か人形供養祭を行っているところはないでしょうか。
供養祭では無料、あるいは気持ちのお布施だけで人形やぬいぐるみを預かり、読経したうえでお焚き上げを行ってくれます。
調べてみましょう。
仏壇仏具
家が手狭などの理由でこれまでの大きな仏壇をやめて小さな仏壇を買った場合、古い仏壇仏具をどうしようかと悩むことでしょう。
新しく仏壇を買った仏壇仏具店に相談すると、古い仏壇を引き取ってもらえる可能性があります。
ただし仏壇本体だけの引き取りになるため、仏具は自治体の区分に従って処分します。
また、仏壇を粗大ゴミとして引き取ってくれる自治体もたくさんあります。
仏壇をゴミとして処分することに抵抗のない人は、調べてみましょう。
仏壇を処分したり、引き取ってもらったりするときは、菩提寺によって仏壇の「閉眼供養」が必要な場合があります。
閉眼供養とは仏壇やお墓を祈りの対象からただのモノにする儀式のことで、3万円ほどのお布施を納めます。
詳しくは菩提寺に相談が必要です。
あなたは遺品整理をしてはいけない!どんな人?
ここで、そもそも遺品整理をしてはいけない人について解説します。
それは相続を放棄した人です。
相続を放棄したら、故人の遺産を受け継ぐことはできません。
何らかの遺産をもらうことはもちろんのこと、処分することもできません。
相続放棄をした人がうっかり故人の遺品整理をしてしまうと、遺産を引き継ぐ意思があるとみなされてしまうため注意しましょう。
遺品整理をするときは他の相続人と話し合いながら進めたい
以上、遺品整理で捨ててはいけないものについて解説しました。
他の相続人とトラブルにならないよう、相談しながら整理を進めるのが正解です。
もし処分すべきかどうか判断に迷うものがあれば、いったん自宅に持ち帰り、改めて他の相続人と話し合いましょう。
この記事を書いた人
奥山 晶子
葬儀社への勤務経験、散骨を推進するNPO「葬送の自由をすすめる会」の理事の経験、遺品整理関係の著書・サイト制作サポートなどから、終活全般に強いライター。ファイナンシャルプランナー(2級)。終活関連の著書3冊、監修本1冊。最近の著書は「ゆる終活のための親にかけたい55の言葉」オークラ出版。ほか週刊現代WEBなどサイトへの終活関連コラム寄稿、クロワッサン別冊「終活読本」の監修や、令和6年5月発刊「ESSE」6月号のお墓特集を監修している。