無宗教の葬儀を行う前に|家族で確認したい注意点を解説
更新:2022.04.16
「生前に母に葬儀はしなくていい、墓もいらないと言われた。言われた通り読経無しにして、無宗教でやろうと思うのですが、どうしたらいいですか?」
先日、こんな質問をいただきました。
後に残る家族を思い発した言葉なのだろうと推測出来ますが、本心はどうだったのか、聞くことは叶いません。
ご自身の言葉を尊重するのが一番だとは思いますが、注意も必要です。
この記事では、後々困らないように無宗教の葬儀をお考えの方にアドバイスをさせていただきます。
無宗教の葬儀を本当に行うのかよく考える
無宗教の葬儀というのは、文字通り宗教色のない葬儀スタイルです。
自由とも言えますが、その反面流れに身を任せて行える葬儀ではなく、自分達で考えることが必要とされます。
葬儀だけではない
無宗教で故人を送るということは、葬儀だけではなく、その後の供養にも影響を及します。
仏式であれば、葬儀に読経があり、初七日、四十九日と法要がありますが、無宗教の場合は決まったものがありません。
葬儀社への支払いは安く済みますし、お坊さんへのお布施も省けるので圧倒的に安価で葬儀を行うことができますが、「四十九日はどうしたらいいの?」「戒名はなくていいの?」と次々に心配事が浮かぶ場合があります。
今までたくさんの無宗教の葬儀をお手伝いさせていただきましたが、心配事のご相談は葬儀よりも葬儀後に多かった印象です。
決まりがないから誰も教えてくれない
無宗教で行うということは、決まりがないことを意味します。
「お供え物は何がいい?」「焼香の回数は何回が普通?」「納骨はいつ行ったらいい?」
誰に聞いても教えてくれません。
「あなた自身が納得する方法で行ってください」が正解となります。
故人に尋ねても残念ながらお返事は返ってきません。自分で納得する形は何か、見つけて決めていかなければならないのです。
無宗教で葬儀を行うのに必要な覚悟
私は決して、無宗教の葬儀を否定しているわけではありません。
しっかりお考えにならずに執り行うのは危険だとお伝えしたいのです。
無宗教で葬儀を行うには、下記の2つの覚悟が必要だとアドバイスさせていただきます。
葬儀後の供養の形を決断する覚悟
葬儀はしなくていいと言われたから無宗教で葬儀を行うのではなく、葬儀後の供養も考えてから決断しましょう。
法要はするのかしないのか、納骨方法はどうするのか、などです。
できればご本人と生前にそこまでお話し出来ていることが一番です。
無宗教で葬儀を行った方が、葬儀後にお寺様に簡単に読経をあげていただき、戒名だけいただくケースもありました。
無宗教だから戒名をもらってはいけないということはありません。
もらわなくても良いということです。
全てが自由なので、ご自身が納得する形を模索して決断する覚悟をお持ちください。
周囲の反応に対して毅然な態度をとる覚悟
ご本人、ご家族が無宗教で葬儀を行うことで一致したとします。
それでも周囲の親族が「非常識なことを」「なぜそんな粗末に扱ったの?」「本人はあなたに気を遣って言っていただけ、鵜呑みにするもんじゃない」「かわいそうに」などとおっしゃる場合も想定されます。
このような声にも負けずに毅然とした態度をとる覚悟が必要です。
覚悟の支えになるのは、本人の言葉と理解者
覚悟を持つには、ご本人の言葉は何よりも大切な拠り所となるでしょう。
ですからできればご本人とあなただけでなく、ご本人が心許せる方にも思いを知っていただきましょう。
ご本人の口から話してもらえば、その方々も良き理解者となって、葬儀の際にはあなたを守ってくれる存在になるはずです。
無宗教の葬儀の事例
最後に私が過去にお手伝いさせていただいた無宗教の葬儀をご紹介させていただきます。
ご参考にしていただきご自身の一番良い形を模索してみてください。
無宗教の葬儀は、自由ですから、ご家族で全て決めることができます。
無宗教の葬儀 事例1
奥様が亡くなり、70代のご主人が喪主だったある日のお葬儀です。
通常通り通夜、葬儀の日時を決めて、親族、ご近所の方へ通知を行いました。
香典は辞退され、無宗教で行うこともお伝えしました。
通夜は18時から行われ、参列者は20名でした。
会場は、宴会場のように座卓テーブルを四角で囲い、それぞれのテーブルに各自着席しました。
最初に喪主が参列者へお越しいただいたお礼、亡くなるまでの経緯を話し、その後参列者皆様から一言ずつお言葉を頂戴しました。
通常の葬儀であれば、喪主が参列者へ挨拶、弔辞を行う方が故人へ挨拶の程度です。
しかしこの通夜では、参列者全員が皆の前で故人を含めて全員へ向けて一言、これまでの思い出などを語ったのです。
20名いれば、20のエピソードが聞けました。みんなで故人を偲ぶ、とても温かい空間になりました。
葬儀では、みんなで生前のビデオを見て、故人が好きだった歌を歌って、最後に献花をしてお別れとなりました。
無宗教の葬儀 事例2
故人が60代の女性、喪主はご主人、お子様が3人、5人家族のお母様の葬儀でした。
故人は宗教色を嫌い、読経はいらないから薔薇の花で飾って欲しいという要望がありました。
通夜の食事は、お母様特製のカレーのレシピを長女様が真似して作り、ご親族へ振る舞いました。
葬儀では、亡くなられたお母様に対して、次女様がバイオリンを生演奏、長男様はお母様との思い出、お母様の自慢できるところ、溢れる思いを参列者へたくさんお話されました。
最後はリクエストのあった赤い薔薇の花びらを、棺の中いっぱいに敷き詰めて、ご家族で記念写真を撮ってからご出棺となりました。
まとめ
いずれのケースも、事前にご家族がはっきりとした葬儀のイメージを持っていました。
当初は具体的なイメージは無かったのかもしれませんが、事前に尋ねて来てくださり、私がご相談を承った結果、イメージをどんどん膨らませていただけました。
特に決まりがない無宗教の葬儀では、葬儀社のアドバイスも必要になると思われますので、お考えの方には、お近くの葬儀社へご相談してみてはいかがでしょうか。
一社と言わず、ご希望を尊重して親身にアドバイスをしてくれる葬儀社が見つかるまで何社か当たって見ることをおすすめします。
一生に一度きりのものですから、あなた様が後悔のないお見送りができることを心より願っています。
この記事を書いた人
廣田 篤 広島自宅葬儀社 代表
葬儀業界23年、広島自宅葬儀社代表。厚生労働省認定技能審査1級葬祭ディレクター。終活カウンセラー。前職大手葬儀社では担当者として 1500 件、責任者として1万件以上の葬儀に携わる。実母の在宅介護をきっかけに広島自宅葬儀社を立ち上げて現在に至る。広島市内だけでなく瀬戸内海に浮かぶ島々から、山間部の世羅町、神石高原町まで広島県内あらゆる地域の葬儀事情に精通する広島の葬儀のプロ。身内の死や介護の経験、数々の葬儀を通じての縁から「死」について考え、文章にすることをライフワークとしている。