忌中の読み方は?意味を知りマナーを守って過ごそう
更新:2023.06.06
身内が亡くなると、すぐ「忌中」という期間に入ります。
忌中の期間は身を慎んで過ごさなければならないとされており、お祝いごとに出席しないなどさまざまなマナーを守らなければなりません。
忌中の意味や過ごし方について解説します。
目次
忌中は「きちゅう」と読む
忌中は「きちゅう」と読みます。
「忌」は、人が亡くなった後に穢れを避けて心静かに過ごすことを指します。
「忌」の最中にあることを指して「忌中」といいます。
忌中と同じような言葉に「喪中」があります。
喪中は「もちゅう」と読み、忌中と同様、誰かの死後に身を慎んで過ごさなければならない期間を指します。
喪中も、忌中も、日本に昔からある決まりごとです。
忌中とは「喪中」のうち、とくに身を慎んで過ごさなければならない期間
仏教において忌中は故人が亡くなってから49日間を指します。
一方、喪中は故人が亡くなってから1年間を指します。
つまり、喪中となる一年のうち最初の49日間が忌中です。
四十九日法要が終わると「忌明け」となり、忌中は終わります。
忌中は、喪中の中でも特に身を慎んで過ごさなければならない期間とされています。
身を慎むとは、なるべく外出を控えてひっそりと過ごすということです。
昔はお祝いごとに出席するのはもちろん、いわゆる不要不急の外出は全てNGとされていました。
なぜ忌中は身を慎むべきなの?
忌中に身を慎まなければならない理由は、次の2つです。
1つは「故人を偲んで過ごすべき期間に、会食や娯楽で楽しんではいけない」という考え方があったためです。
仏教では、人が亡くなると49日間は霊としてさまよい、49日目に浄土へ行けるとされています。
故人が無事に浄土へ行くために、残った遺族は供養を懸命に行わなければなりません。
浮ついた心で外出をしてはならないのです。
もう1つは「死の穢れを他の人にうつしてはならない」とされてきたためです。
忌中の間、遺族には死の穢れがまだ残っているため、お祝いごとに出かけると幸せいっぱいの人に穢れをうつしてしまうかもしれない。
そんな考え方からも、忌中のお祝いごとは避けられてきました。
なお、忌中には「肉や魚を食べない」という決まり事もありました。
仏教では殺生をタブーとし、肉食は禁忌です。
忌中に生ものを食べると、故人の成仏に悪い影響をもたらすという考え方から来ています。
ただし現代の食文化において生ものを徹底的に避けるのは難しいため、今では忌中における肉食禁忌は形骸化しています。
本来であれば忌明け後に行う「精進落とし」(肉や魚を食べない精進料理をやめ、ふだんの食事に戻すこと)を葬儀後にすぐ行うことで、遺族は葬儀が終わればふだんの食生活に戻ります。
神道やキリスト教に忌中はある?
神道では50日間が忌中です。
仏教の四十九日法要にあたる「五十日祭」を行うことで忌明けとなります。
また、キリスト教には忌中という概念そのものがありません。
ただし日本のキリスト教においては、忌中の考え方に寄り添うため、身を慎まなければならない期間として没後1ヶ月を採用しています。
1ヶ月後、プロテスタントであれば「召天記念日」、カトリックであれば「追悼ミサ」を行い、いわゆる忌明けとなります。
仏教の中でも、忌中の考え方がない宗派があります。
浄土真宗では「浄土への旅」がなく、故人は亡くなったらすぐに極楽浄土へ生まれ変われるとされています。
よって、霊がさまよう期間としての忌中はありません。
忌中の代わりに浄土へ還られたことを意味する「還浄(げんじょう)」という言葉があるのが特徴で、還浄と書かれた紙札を家に貼る地域もあります。
しかし昔ながらの風習である忌中の考え方に寄り添い、49日間を「忌中」としてもとくに差し支えないとしています。
ただ、宗派としては忌中の肉食禁忌や外出制限などのしきたりを強要する考えはありません。
忌中は誰に当てはまる?
忌中は葬儀に出た人全てに当てはまるわけではありません。
まず、親族ではない一般参列者は忌中を気にする必要はありません。親族の中でも、3親等以上であれば忌中を気にする必要はないとされています。
忌中が当てはまるのは2親等以内の親族です。
ただ、3親等以上であっても故人と一緒に住んでいた人は忌中が当てはまります。
また、故人と縁が深く「喪に服したい」という気持ちの強い人は、自分の心が癒されるまで忌中を取り入れても構いません。
忌中にある人の過ごし方
忌中にある人は、以下に気をつけて過ごしましょう。
結婚式、記念パーティーなどお祝いごとに出席しない
華やかな場所に出席するのは避けます。
結婚式のほか、誰かの誕生パーティーや記念パーティーなど、「おめでとう」を言わなければならない場所には出かけません。
なかには親睦会などお祝いごとではないパーティーもあることでしょう。
「この会には出ても良いのだろうか?」と迷う場合は、心静かにしていなければならない期間であることを念頭に置き、周囲にも相談しながら決めましょう。
可能であれば引っ越しを避ける
忌中の引っ越しは「新しい家に穢れが移ってしまう」という理由から避けられてきました。
ただ、言い伝えを気にしない人もいることでしょう。
風習やしきたりが廃れてきた現代において、仕事や通学のためやむを得ない引っ越しをするぶんには、もはや誰も口を出すことはありません。
会食を主催しない
現代では、仕事上必要な会食やごく親しい仲間との飲み会に参加する程度であれば、忌中であってもNGとする風潮はありません。
ただ、自分から率先して会食を主催するのはやめておきましょう。
お正月をしない
お正月は「明けましておめでとう」といわれるとおり、新年を寿ぐ行事です。
忌中は新年を祝うことをしません。
年賀状は出さず、前年の12月初旬頃までに喪中はがきを出します。
また、門松や鏡餅などの飾りごとをしない、お餅やおせち料理を食べないなど、お正月の風習は極力避けます。
ただ、年越しそばは正月を祝う行事ではなく「一年の厄落とし」とされているため、食べても構いません。
神社に参拝しない
神道の神様は死の穢れを嫌います。
そのため、仏式葬儀はお寺で行うこともありますが、神道の家であっても神社では絶対に葬儀を行いません。
忌中期間は神社への参拝を避けましょう。
友人や同僚が忌中なら何に気をつけるべき?
身近な人が忌中となった場合、「飲み会に誘ってもいいのだろうか?」「どう接すればいいんだろう」と迷うこともあるでしょう。
忌中だからといって、腫れ物に触るような態度を取る必要はありません。
むしろ身近な存在を亡くしたばかりの人は、他の人には想像ができないような寂しさを抱えています。
極力、普段どおり話しかけることで、本人の寂しさが和らぐ可能性があります。
ただ、仲間同士の飲み会や会社の親睦会に誘うときには「お身内が亡くなったばかりで気が向かないかもしれないけど……」と前置きするのがおすすめです。
大事なのは、「忌中だけど」出席するかどうかといった、しきたりありきの発言を避けて相手の気持ちに寄り添うことです。
忌中のしきたりは「悲しくて何もする気になれない」と感じる遺族にとってはありがたい決まりごとです。
気が進まない飲み会やお祝いを「忌中だから」のひと言で断れるためです。
ただ、辛い時期だからこそ親しい人と会話する機会が欲しいと願う方もいらっしゃいます。
そのような人にとって「あの人は忌中だから」と避けられてしまうのは、あまりに苦しいことではないでしょうか。
忌中をどう過ごしたいかは、本人にしか分かりません。
決まりごとを頭に入れつつも、本人の気持ちをまずは聞きましょう。
忌中はストレスを最低限にして過ごす期間
以上、忌中の意味や過ごし方について解説させていただきました。
「身を慎んで過ごす期間」というと厳しいしきたりのように思えてしまいますが、言い換えれば外からのストレスを極力受けずに過ごせる期間です。
ただ、静かに寂しさと向き合うのが辛いという方は、自分の判断で出かけても構わないでしょう。
「穢れをうつしてしまう」と気にする方は、現代では少数派です。
ただし外出の際は「忌中なのに出かけていいのか」と言われてしまう場合があることも頭に入れておかなければなりません。
忌中の意味やマナーを理解したうえで、自信を持って自分なりの過ごし方を実行しましょう。
この記事を書いた人
廣田 篤 広島自宅葬儀社 代表
葬儀業界23年、広島自宅葬儀社代表。厚生労働省認定技能審査1級葬祭ディレクター。終活カウンセラー。前職大手葬儀社では担当者として 1500 件、責任者として1万件以上の葬儀に携わる。実母の在宅介護をきっかけに広島自宅葬儀社を立ち上げて現在に至る。広島市内だけでなく瀬戸内海に浮かぶ島々から、山間部の世羅町、神石高原町まで広島県内あらゆる地域の葬儀事情に精通する広島の葬儀のプロ。身内の死や介護の経験、数々の葬儀を通じての縁から「死」について考え、文章にすることをライフワークとしている。