どんな散骨が違法になるの?可能な4つの散骨方法とメリット・デメリット
更新:2022.10.03
散骨に興味はあるけれど、どのような散骨方法なら違法とならないのか、わからないという人は多いのではないでしょうか。
「故人の遺言に、散骨してほしいと書いてあった」
「海が好きだった父のために、少しだけでも海へ遺骨を還してあげたい」など、散骨をしようと考える人の事情はさまざまです。
散骨は、気をつけて行わないとトラブルにつながる恐れがあります。
違法とならない4つの方法と、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。
こんな散骨は違法!
まずは、違法になってしまう散骨とは、どういう場合なのかを押さえておきましょう。
違法となるのは、以下の場合です。
遺骨を「撒く」のではなく、「埋める」
遺骨を、墓地と認められていない場所に埋めると、「墓地、埋葬等に関する法律」に違反してしまいます。散骨は、あくまで遺骨を「撒く」行為です。
他の人の所有地に、無許可で散骨する
他の人が所有している土地に、無許可で散骨すると、トラブルになる可能性が高く、謝罪で済まされなかった場合は訴えられてしまうかもしれません。
訴えられると、何らかの法律に違反したと判断されてしまう可能性は高いでしょう。
条例等で散骨が禁止されているところに散骨する
日本には、条例で散骨が禁止されている自治体が複数あります。
よく調べずに散骨すると、条例違反になってしまう恐れがあります。
遺骨を遺棄する
「散骨」と銘打って、ただ遺骨をうち捨てるように撒いてしまうと、遺棄罪等に問われる可能性があります。
心を込めて、弔いとして遺骨を撒くことが、散骨を行う人の姿勢として求められます。
違法でなくても、マナーを守らないとトラブルになる
散骨は、賛成派もいれば反対派もいる弔い方です。法律に違反していない散骨であっても、以下のようなマナーを守らないと、他の人とトラブルになるケースがあります。
遺骨は必ず粉砕し、パウダー状にしてから散骨する
撒かれた遺骨を見かけた人が「何かの事件では?」と驚くことのないよう、遺骨はパウダー状になるまで粉砕します。
海水浴場や観光地など、人が集まる場所では撒かない
故人との思い出の場所だからと、人が集まる場所で、目につくように散骨すると、多数の人の気分を害してしまうかもしれません。
漁場の近くなど、関係者の利益を害する可能性のあるところでは撒かない
漁場の近くで散骨する姿を誰かが見かけると、風評被害などにつながる恐れがあります。
自分の所有地への散骨であっても、近隣には必ず相談して許可を得る
パウダー状の遺骨は、風に舞ってさまざまな場所へたどりつきます。
「自宅なら大丈夫」と黙って散骨するのではなく、遺骨が飛んでいってしまうかもしれない近隣に、しっかり許可を取りましょう。
自然に還らないものは撒かない
遺骨と一緒に、花や飲み物をお供えする姿が見られます。
花束を包むビニールや、飲料のペットボトルをそのまま海や山にうち捨てると、環境によくありません。
自然に還らないものは、撒かないのがマナーです。
【参考】「散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)」令和2年度厚生労働科学特別研究事業「墓地埋葬をめぐる現状と課題の調査研究」研究報告書より
違法やトラブルにならない散骨方法4つと、それぞれのメリット、デメリット
それでは、違法やトラブルにならない散骨方法には、何があるのでしょうか。
場所別に、4つをご紹介します。
また、それぞれの方法のメリットやデメリットについても、合わせて解説します。
海への散骨
日本の散骨の多くが、海で行われています。人の目の届かない遠方まで船で出かけて、水面へ遺骨やお花を撒きます。
海への散骨は、「海洋散骨」と称されています。
世界のどこへでもつながっている、大いなる海に眠れることや、陸よりも散骨可能な場所が豊富であることがメリットです。
一方で、船を持っている人は少ないため、業者を通さなければならないというデメリットもあります。海洋散骨については、以下の記事に詳しいので、参考にしてください。
陸への散骨
山一つ分が自分の所有地である場合には、あまり他人に迷惑をかけずに散骨が可能です。
また、山への散骨を行っている業者も、少ないながら存在します。
もともと散骨に興味のあった人が、所有地を散骨場所として整備したり、寺院が広大な墓地の一部を散骨場所としていたりと、かたちはさまざまです。
メリットは、花や草木に守られ、大地の循環を感じながら眠れることといえるでしょう。
海洋散骨よりも撒いた場所がわかりやすいため、命日などに合わせて訪れるといったことも可能です。
デメリットは、陸への散骨はどうしても遺骨が風に舞ってしまいやすいため、他人の土地に遺骨が飛んでしまう可能性があることです。
「飛んできた白い粉は一体何?」と、問い合わせを受けるかもしれません。
散骨に反対する意思のない人でも、ある日突然白い粉が洗濯物にたくさん付着し、それが他人の遺骨だと分かったら、かなりショックでしょう。
空への散骨
空への散骨は、「バルーン葬」や「宇宙葬」と呼ばれ、それぞれ行う業者が存在します。
「バルーン葬」は、大きなバルーンに遺骨を納め、大空に飛ばす方法です。
バルーンは空高く上がり、成層圏付近で膨張して破裂し、宇宙空間へ散骨されます。
空に憧れを抱く人であれば、バルーン層のメリットは大きなものとなるでしょう。
一方で、安全性の面で打ち上げができる場所に条件があることや、実施できる業者が少ないことがデメリットとなります。
「宇宙葬」は、人工衛星などに少量の遺骨を搭載する方法です。
遺骨は、人工衛星の寿命が尽きるまで、地球を回り続けることになります。
宇宙葬のメリットは、やはり宇宙に強い憧れがある人にとってぴったりの葬法であること。
デメリットは、打ち上げの機会が少ないことや、ほんの少量しか宇宙に行けないため、他の遺骨の弔い方を考えなければならないことです。
また、行っている業者がかなり少ないのも、デメリットの一つです。
海外へ出かけての散骨
故人と行った思い出の国や、「いつか一緒に行きたいね」と話していた国へ出かけて、散骨するという方法があります。
ただ、海外においても法律や条令などで散骨が禁じられているケースがあるため、海外散骨を行っている業者に依頼するのが安心です。
海外散骨のメリットは、思い出や憧れのある国で散骨できることです。
「故人と最後の海外旅行」と考えれば、素敵な想い出になるでしょう。
デメリットは、トラブルに巻き込まれたとき、言葉や文化の違いで苦労すること。
自力で海外散骨するときには、十分慎重になりましょう。
散骨を検討するなら、安全、安心な方法で
この記事では、違法やマナー違反とならない散骨方法についてお伝えしました。
マナーを守って散骨できれば、自力でも行えます。
しかし、とくに遺骨をパウダー状にすることなど、越えなければならないハードルはあります。
散骨が一般的な葬法として認知されつつある今、安全、安心に実施してくれる業者が多数出てきています。
希望の場所に散骨を行ってくれる業者が見つかったら、まずは相談してみてはいかがでしょうか。
信頼できる業者かどうか、やりとりをしたうえで見極めましょう。
この記事を書いた人
奥山 晶子
葬儀社への勤務経験、散骨を推進するNPO「葬送の自由をすすめる会」の理事の経験、遺品整理関係の著書・サイト制作サポートなどから、終活全般に強いライター。ファイナンシャルプランナー(2級)。終活関連の著書3冊、監修本1冊。最近の著書は「ゆる終活のための親にかけたい55の言葉」オークラ出版。ほか週刊現代WEBなどサイトへの終活関連コラム寄稿、クロワッサン別冊「終活読本」の監修や、令和6年5月発刊「ESSE」6月号のお墓特集を監修している。