葬式の香典の書き方は?宗派ごとの表書きや金額、包み方についても解説
更新:2022.03.17
葬式で香典の書き方に迷うことはありませんか。
香典袋の上側に書く「御霊前」や「御仏前」といった文字を、「表書き」といいます。表書きは、宗教・宗派によって違います。
また、表書きと同様、「金額の相場は?」「包み方や、出し方のマナーは?」と、香典については迷うことがたくさんあるでしょう。
葬式の香典の書き方、金額相場、包み方など、香典に関わるマナー全般について解説します。
目次
まずは注意!香典を持参しても良いか確認を
最近では、香典を辞退する葬式が多く見られます。遺族が香典返しを手配する負担を省略するためです。葬式の案内状に、「御香典の類は辞退させて頂きます」といった下りがないか、確認しましょう。
香典袋を選ぼう
香典袋は、宗教によって選ぶべき種類が違います。
■仏式:宗派を問わず、白黒あるいは双銀の水引があしらわれた香典袋を選びます。
無地、あるいは蓮の花が描かれたものが、仏式にふさわしいとされます。
■神式:白黒あるいは双銀の水引があしらわれた、無地の香典袋を選びます。蓮の花は仏教のモチーフなので、蓮が描かれた香典袋は避けましょう。
■キリスト教式:水引のない、無地あるいは十字架があしらわれた香典袋を選びます。
■無宗教:白黒あるいは双銀の水引があしらわれた、無地の香典袋を選びます。
なお、京都を中心とした関西の一部地域では、葬式や法要で使われる香典袋の水引が、黄色と白で構成されていることがあります。
これは、京都が長く天皇家のお膝元であったことから「黒白の水引は皇族が使うもの。
庶民は黄白の水引を使って、区別するべき」という奥ゆかしいしきたりが生まれたことに由来しています。
葬式のときも黄白の水引を使う地域と、葬式のときだけは黒白の水引を使い、四十九日法要から黄白の水引を使う地域があるため、よく確認しましょう。
次に筆記用具を選ぼう
葬式の香典袋に文字を書き入れるときは、薄墨とするのが正式です。
これは「墨が悲しみの涙で薄くなってしまった」ことを表しています。
薄墨の筆ペンは、コンビニやスーパーの筆記用具売り場で手に入ります。
宗教・宗派別、香典の表書き
香典の表書きは、宗教・宗派によって違います。
■仏式(浄土真宗以外):葬儀の場では「御霊前」とします。
これは、「死者の魂は、亡くなってから四十九日の間、霊としてさまよっている」とされているためです。
この霊は、四十九日後に仏となるとされています。よって、四十九日法要からは、香典の表書きは「御仏前」となります。
■浄土真宗:「御仏前」とします。仏教の中でも浄土真宗は、「亡くなったら死者の魂は霊となってさまよわず、すぐに仏となる」と考えるためです。
■神式:「御玉串料」とします。玉串とは、葬儀中に祭壇へ捧げる、榊(さかき)と呼ばれる草の枝に紙垂(しで。しめ縄などにあしらわれる、白く長細い紙)をつけたものを指します。
■キリスト教式:「御花料」とします。
■無宗教:特に決まりはなく、「御霊前」や「御香典」で良いとされています。
■宗教・宗派が分からない場合:「御香典」や「御霊前」で良いとされています。「御霊前」は仏教の影響が色濃い表書きですが、広く日本の葬式で使われるものなので、失礼には当たりません。
表書き以外の情報はどう書く?
香典袋の下に「御霊前」や「御仏前」と書き入れたら、下に自分の名前を縦書きで書きましょう。
連名でも構いません。夫婦連名にしたい場合は、1つだけ名字を書き、その下に2つ名前を並べます。
また、香典袋の中袋や裏側には、住所や氏名を書き入れる欄があります。
喪主が後日、香典返しを送るときなどに必要な情報なので、忘れずに書きましょう。
金額を書き入れる欄には、「●千圓(円)」「●萬圓(万円)」と書きます。
このとき、「一」「二」「三」を使いません。「壱」「弐」「参」を使いましょう。改ざんを防ぐためです。
香典の金額相場
香典の金額相場は、関係性によって変わります。
■一般参列者:3000~5000円が相場です。とくに親しくしていた間柄の場合には、1万円とするケースもあります。
■一般親族:下記に述べるような、とくに血縁の濃い親族でなければ、1万円が相場です。
■故人が祖父母にあたる:両親から独立している立場であれば、香典を出します。
1万円から3万円が相場です。義理の祖父母である場合も、同様の相場となります。
香典のほかに、「孫一同」などとして盛花や盛籠を贈るケースもあります。
■故人が両親にあたる:5万円から10万円が相場です。
義理の両親の場合も、同様の相場となります。
香典のほかに、自分の名義や「子供一同」などとして盛花や盛籠を贈るのが一般的です。
■故人が兄弟姉妹にあたる:3万円から5万円が相場です。
義理の兄弟姉妹の場合も、同じ相場となります。
香典のほかに、自分の名義や「兄弟一同」などとして盛花や盛籠を贈るのが一般的です。
夫婦で参加する、子どもを含めた家族で参加するといった場合には、会食に参加するなら一人あたり5000円程度を追加しましょう。
また、偶数は割り切れることから「永遠の別れ」をイメージさせるため、奇数の金額が良いとされています。
どうしても偶数金額になってしまう場合は、お札の数を奇数にしましょう。
例えば2万円を包みたい場合には、1万円札を1枚と、5000円札を2枚入れることで3枚とします。
香典袋の包み方
香典袋の中袋にお金を入れたら、表書きがされてある上包みに包みます。
包むときは、下側の短い折り返しに、長い上側の折り返しをかぶせるようにしましょう。
これには、「涙を流す」「顔を下向きにする」という意味が込められています。
お祝いの場合には、ご祝儀袋の上側の折り返しに、下側をかぶせるように包むのがマナーです。
これには「(運や人生などが)上向きになるように」という意味が込められています。
包み方1つで、全く逆の意味になるため、気をつけましょう。
袱紗(ふくさ)の包み方
香典袋を包む小さい風呂敷や、布でできたケースを、「袱紗」といいます。
袱紗は、寒色の地味な色味のものが不祝儀用とされています。暖色系や華やかな刺繍が施されている袱紗は、祝儀用なので葬式のときは避けましょう。
最近は布ケース状の袱紗が多く見られます。
ケースにそのまま香典袋を入れればいいので、包み方に迷うことはあまりありません。
しかし、風呂敷状の袱紗に香典袋を包む場合には、どう包むのが良いか迷う人もいるでしょう。
風呂敷状の袱紗に香典袋を包むときは、まず袱紗を裏向きにしてひし形になるように置き、袱紗の中心よりやや右寄りに、香典袋を表向きに配置します。
その後、「右→下→上→左」の順に、袱紗の端をたたんで香典袋を包みます。
このようにたたむと、最後には左開きになっているはずです。
左開きは、左手で開くのが便利な包み方です。つまり利き手(右手)で開く「平時」とは違う包み方となり、葬式の場にふさわしいとされています。
香典の出し方
葬式の香典は、受付で出します。
受付では黒いお盆を差し出されることが多いと思われます。
「このたびは」とお悔やみの言葉を簡潔に述べて会釈した後、バッグから袱紗を取り出し、袱紗から香典を出して、黒いお盆に載せましょう。
このように、袱紗から香典を取り出すのは、受付に香典を差し出すときとします。
香典袋を裸で持参するのは控えましょう。袱紗がない場合には、地味な色のハンカチで包むのがマナーです。
●葬式で香典の書き方に迷ったら、宗教・宗派を確認しよう
以上、葬式の香典の書き方や、金額相場、包み方のマナーについて解説しました。
香典の書き方は、宗教・宗派によって違います。
宗教・宗派がすぐに確認できるような環境にいたら、確認するのがマナーです。
案内状を確認すれば、宗教については判断できるはずです。
神式なら「神葬祭」、キリスト教式なら「ミサ」といった語句が使われているためです。
ただ、一般参列者など、立場によっては宗派がすぐに知り得ない場合があります。
そんなときには、無理にたずねる必要はありません。
全ての宗教・宗派に対応できる「御香典」や、広く使われている「御霊前」を使いましょう。
この記事を書いた人
廣田 篤 広島自宅葬儀社 代表
葬儀業界23年、広島自宅葬儀社代表。厚生労働省認定技能審査1級葬祭ディレクター。終活カウンセラー。前職大手葬儀社では担当者として 1500 件、責任者として1万件以上の葬儀に携わる。実母の在宅介護をきっかけに広島自宅葬儀社を立ち上げて現在に至る。広島市内だけでなく瀬戸内海に浮かぶ島々から、山間部の世羅町、神石高原町まで広島県内あらゆる地域の葬儀事情に精通する広島の葬儀のプロ。身内の死や介護の経験、数々の葬儀を通じての縁から「死」について考え、文章にすることをライフワークとしている。