散骨のために遺骨を粉骨したい。自分でできる?業者の料金相場は?

更新:2022.10.09

散骨をするためには、遺骨をパウダー状に粉骨するのがマナーの1つとされています。

よって、業者に頼らず自分で散骨をしたいと考える人でも、粉骨は行わなければなりません。

粉骨をするための手段や費用について解説します。

散骨するためには、粉骨が必要

散骨には一定のマナーとルールがあり、その1つに粉骨があります。

粉骨とは、遺骨を粉砕することです。

粉骨をしない遺骨をそのまま撒いてしまえば、撒かれた遺骨に目を留めた人が「何かの事件かもしれない」と驚いてしまう可能性があります。

あくまで弔いとして遺骨を撒いたことが分かるよう、遺骨を粉砕する必要があるのです。

厚労省が事業者向けに出しているガイドラインにも、「焼骨は、その形状を視認できないよう粉状に砕くこと」とされています。

つまり遺骨と分からないようになるまで砕くということです。

できれば、パウダー状になるまで粉砕するのがよいでしょう。

厚生労働省:散骨に関するガイドライン

粉骨のメリットは散骨できること以外にもある

粉骨すると、散骨できること以外にも、以下のようなメリットがあります。

容量が減る

粉骨すると、遺骨の容積が小さくなります。小さな骨壺に遺骨を納めることができるため、手元供養を考えている人にはありがたいでしょう。

大きな骨壺は、どうしてもかなりの存在感が出てしまうためです。

また、先祖の遺骨をまとめて供養したいときにも、粉骨が有効です。

容量が減れば、複数の骨壺を一つにまとめることが可能になるためです。

分骨しやすくなる

一人の遺骨を2つ以上の場所に分けて納骨することを、分骨といいます。

「半分はお墓に納めて、もう半分は散骨にしたい」「大部分はお墓に入れるけれど、少しだけ遺灰を残して手元供養にしたい」といったときに分骨が行われます。

粉骨が終わっていれば、分骨の際も遺骨を分けやすくなります。

そのままの状態だと、遺骨のどの部分をどこに納骨するべきか、迷う恐れがあります。

衛生的な状態で保管できるようになる

粉骨業者によっては、殺菌や乾燥を行ってくれるところもあります。

カビの好む湿気や雑菌の多い環境を取り除いてくれるため、衛生的に保管できるようになります。

遺骨は自分で粉骨できる?

粉骨を自分で行うイメージ

粉骨は、業者を頼らず遺族が自力で行うことも可能です。次のような手順で、粉骨を進めます。

1. 手袋とマスクを着用する

軍手やビニール手袋をはめ、細かな遺灰を吸い込まないよう、マスクも準備しましょう。

目に入るのが気になるなら、ゴーグルをしてもよいでしょう。

2. 遺骨を乾燥させる

遺骨には水分が含まれており、そのまま粉砕しても、サラサラのパウダー状にはなりません。

数日、陽の当たるところに干して乾燥させましょう。

ドライヤーを使えば、時間を短縮できます。

注意したいのが、骨壺から遺骨を取り出すときです。

骨壺をひっくり返すと、粉骨の必要がない遺灰も、骨壺から出てしまいます。

そしてそのまま、飛び散ってしまいがちです。

骨壺はひっくり返さず、大きい遺骨を一つずつ取り出しましょう。

3. 粉骨する

粉砕道具として考えられるのが、乳鉢やハンマー、フードプロセッサーです。

乳鉢はサイズが小さいものが多いため、コツコツ取り組まなければなりませんが、きれいなパウダー状にしたいのであれば最適といえるでしょう。

値段が安いので、「使い捨て」にするにしても金銭的負担はあまりかかりません。

袋に入れてハンマーでたたくという方法は、乳鉢よりも短時間で行えますが、遺族にとっては精神的にかなり辛い作業になるかもしれません。フードプロセッサーであれば、この中では最も時短です。

しかし、今後もそのフードプロセッサーを使うのは心理的に負担が大きいかもしれません。

4. 保管する

袋や骨壺に粉骨済みの遺骨を入れ、散骨の日まで保管しておきます。

パウダー状になった遺骨は湿気を吸いやすいため、散骨まで日にちが開く場合は、乾燥材を入れておくのがいいでしょう。

業者に粉骨だけを依頼できる?料金相場は?

散骨業者に、粉骨だけを依頼することも可能です。

業者に直接持ち込み、立ち合いの上で散骨してもらうケースと、遺骨を郵送して粉骨してもらうケースがあります。

相場は1万円から2万円ほどで、そのほかに郵送であれば送料、立ち合いでの粉骨なら交通費がかかります。

散骨業者のサイトには、散骨そのものの価格と、粉骨料金とが分かれているところと、粉骨も散骨も合わせたセット料金になっているところがあります。

料金が分かれているところに依頼する方が安心ですが、セット料金を掲げているところも、個別に問い合わせをすれば粉骨だけ行ってくれることがありますから、まずは相談してみましょう。

自力で散骨するときの注意点

粉骨を自力でするにせよ、業者に依頼するにせよ、最終的には「業者に頼らず、自力で散骨したい」と考えているなら、以下に注意しましょう。

他人の所有地には撒かない

散骨は、自分の所有地か、あるいは海で行うのがマナーです。他人の所有地に遺骨を撒くと、トラブルになる可能性が高くなります。

自分の土地であっても、近隣の迷惑になる場所では控える

自宅の庭など、住宅地での散骨は近隣の迷惑になる恐れがあります。

プラスチックやビニールなど自然に還らないものを一緒に撒かない

花束の包装ビニールは外し、飲食物などの供物は持ち帰りましょう。環境に配慮します。

散骨は「埋める」のではなく「撒く」

お墓ではないところに「埋めて」しまうと、法に触れます。散骨は、あくまで「撒く」のがルールです。

海に散骨する場合は船を出す

海に散骨したい場合は、船で海岸から離れた海域まで出る必要があります。

海岸に近いと、観光地や海水浴場、漁場の迷惑になる恐れがあるためです。

業者の費用相場は?業者に依頼するなら、粉骨も任せてしまうのが安心

散骨を業者に依頼する予定があるなら、粉骨も一緒に任せてしまうのがおすすめです。

なぜかといえば、粉骨も含めたパック料金になっているところは、すでに粉骨されていたとしても5千円から1万円程度の割引にしかならない可能性が高いためです。

遺骨を砕く精神的、時間的負担に比べて、5千円円という費用はいささか安いと感じる人は多いでしょう。

なお、粉骨の程度によっては、業者によって再度粉骨をしなければならない可能性もあります。

すると、二度手間になるうえ、料金がかかってきます。

散骨を業者に依頼する場合、散骨する場に立ち会う「立会散骨」なら15万~20万円程度、業者に遺骨を送る「委託散骨」なら3万~7万円程度が相場です。

この相場は、粉骨料金も含んだものです。

どんな散骨を望んでいるかによって、粉骨方法を決めよう

粉骨方法と、業者に依頼した場合の料金相場について解説しました。

自力で散骨をと考えているなら、自力での粉骨を考えてみてもいいでしょう。一方で、最終的に散骨を業者に任せたいと考えているなら、粉骨も合わせて依頼してしまった方が、負担がありません。

もっとも、墓じまいなどによりたくさんの先祖の遺骨を粉骨しなければならないというときは、「粉骨1体につき〇円」と掲げている業者に依頼すると、かなりの金額になってしまうことがあります。

そんなときは、まず散骨業者に問い合わせをしてみましょう。

まとめて依頼すれば、割安になる可能性もあります。

この記事を書いた人

奥山 晶子

葬儀社への勤務経験、散骨を推進するNPO「葬送の自由をすすめる会」の理事の経験、遺品整理関係の著書・サイト制作サポートなどから、終活全般に強いライター。ファイナンシャルプランナー(2級)。終活関連の著書3冊、監修本1冊。最近の著書は「ゆる終活のための親にかけたい55の言葉」オークラ出版。ほか週刊現代WEBなどサイトへの終活関連コラム寄稿、クロワッサン別冊「終活読本」の監修や、令和6年5月発刊「ESSE」6月号のお墓特集を監修している。

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