葬式の樒(しきみ・しきび)はどこで買う?どうお供えする?

更新:2024.06.28

葬式にお花が必要なのは何となく分かっていても、「樒(しきみ・しきび)を飾らなくてはならない」と聞いて、すぐに対応できる人はあまりいないでしょう。

仏教のうち、浄土真宗や日蓮正宗などではとくに、葬式に樒を使います。

樒をどこで手に入れ、どう飾ったらよいのかを解説します。

よく間違われやすい「榊(さかき)」との違いについてもご案内します。

樒(しきみ・しきび)とは

花を咲かせた樒

樒とは常緑樹の一種で、低いものは2メートルほどですが、高いと10メートルにまで育つこともあります。

仏事によく使用される植物であることから、お寺の境内や墓地によく植えられています。

葉は緑色でやや柔らかく、波打ったような形をしており、折ると抹香の匂いがするのが特徴です。

春に薄黄色の花を咲かせ、甘い香りを放出します。

ただし葬式に使うのは主に葉のついた枝先であり、花が咲いていない季節でも、一年中使われます。

樒の葉や樹皮を粉にして、仏教儀式に使う抹香が作られます。

読み方は「しきみ」?「しきび」?

樒の読みは一般的に「しきみ」ですが、「しきび」と呼ぶ地域もあります。

どちらも正解です。

なぜ仏教で樒が使われる?

樒には、全体に強い毒性があります。

このことから、樒には邪気を払う効果があるとされてきました。

また、葉を折ると強い香りを放つため、遺体を害虫や害獣から守る役割を果たすともいわれてきました。

よって、儀式の場を清めるものとして葬式で使われるようになったという説が有力です。

なお、はるか昔には宗教宗派を問わず、葬式に供える植物として樒が使われていたようです。

しかし、樒の葉が放射状に生える様子が、仏教ゆかりの「青蓮華」に似ていることから、中世以降は主に仏事用として使われるようになったといいます。

樒は生花店、スーパーの生花売り場、葬儀社で手に入れる

葬式用の樒は、生花店で手に入ります。

生花店の入口やレジ脇に置いてあるバケツの中を覗いてみましょう。

樒の枝が、仏事用に使いやすいサイズで売られていると思われます。

もしないようなら「樒はありますか」と尋ねてみましょう。

生花店であれば樒が仏事に欠かせない植物であると知っているため、きっとすぐに答えてくれます。

また、スーパーの生花売り場に置いてある場合もあります。

近くに生花店が見当たらないときは、大型スーパーを覗いてみましょう。

ただ、葬式のために樒が必要なのであれば、ほとんどの場合は葬儀社が用意してくれます。

用意してもらえるかどうか不安な場合は、確認してみるのがお勧めです。

注意! 樒と榊(さかき)の違い

樒を自分で調達する場合、注意したいのが、榊(さかき)と間違えないことです。

榊は、樒と同様に葬式など儀式のとき使用する植物で、主に神式で使います。

見た目がよく似ているので、間違えないよう注意しましょう。

樒と榊の大きな違いは、枝木の見た目にあります。

樒は「青蓮華」に似ているといわれるとおり、葉が天に向かって放射状についており、フサフサと繁っています。

枝を回転させたとき、どの面から見ても葉が立体的に生えているのが特徴です。

樒の葉
樒の葉

一方で榊の葉は、同じ方向を向いています。枝木を見たとき、表と裏が容易に分かる方が榊です。

榊の葉
榊の葉

生花店などで樒を求めるなら、葉の付き方で榊と見分けるのが最も有効ですが、樒と榊には他にも以下のような違いがあります。

・強い香りを持つのが樒、香らないのが榊

・葉がやや柔らかく波打っているのが樒、固く平べったいのが榊

・葉が一箇所から複数枚でているのが樒、左右交互に一枚ずつ葉がついているのが榊

・春に黄色い花を咲かせるのが樒、初夏に白い花を咲かせるのが榊

神式の葬式では、榊を榊立てに挿して祭壇にお供えします。

また、紙垂(しで)と呼ばれる白く細い紙の飾りをつけ、祭壇に捧げる玉串として使われます。

葬式で樒を使う場面と飾り方

葬式で樒を使う場面は複数あります。

ここでお伝えする内容は一般的なものであり、地域の風習やご住職の考え方によって違う飾り方になる場合もあるため、詳しくは菩提寺に確認しましょう。

末期の水

病院や自宅で、臨終の場に立ち会った親族が故人の口に水を含ませる儀式を「末期の水」といいます。

末期の水をとらせる方法には、「筆に水を含ませて口元を湿らせる」

「割り箸に濡れたガーゼを挟んで口元を濡らす」といった方法がありますが、樒の葉に水滴を乗せ、故人の口元に垂らすこともあります。

枕飾り

枕飾りとは、故人の枕元に置かれる焼香用の仏具です。

経机の上に線香と香炉、ロウソクなどを置き、訪れた人が故人の近くで線香をあげられるようにします。

浄土真宗では、経机の上に一輪挿しを置き、そこへ短い樒の枝木を一本挿しておきます。

日蓮正宗では、花束と同じくらい立派な樒の束を、経机の両隣に埋けることがあります。

ご本尊の扉を閉める

多くの宗派で、その家に不幸があると仏壇の扉を締めておくという風習も一部地域ではあります。

なかでも創価学会では、ご本尊に触れるとき、手袋をした上で樒の葉を一枚口にくわえる習わしがあります。

清浄のモチーフである樒の葉によって、不浄とされる人間の息をご本尊に吹きかけないようにするという意味からきている習わしです。

葬式の式場玄関に飾る

地域によっては、樒を葬式の式場玄関に飾ります。

大事な儀式の入口に樒を設置することで、邪気を寄せ付けないという意味合いがあるようです。

祭壇まわりに飾る

葬式の祭壇まわりには、大きな供花のスタンドを飾るのが一般的です。

しかし日蓮正宗や創価学会では、樒だけを使ったスタンド式の供花がみられます。

花を使わず、緑の葉だけを使用したものです。

なぜなら、日蓮正宗では樒をとくに重要視しており、他の生花よりも大事としているためです。

日蓮正宗にゆかりのある創価学会でも、同じ考えから樒を大事にします。

よって日蓮正宗や創価学会の葬式の場合、樒だけの供花を祭壇の近くに飾り、お花を使った供花は祭壇から遠いところに配置するのが一般的です。

樒を重要視する宗派で、お花の供花がたくさん贈られたらどうする?

日蓮正宗や創価学会の人の葬式であっても、供花を贈ってくれる人が同じ宗派の信徒とは限りません。

ときには特にお世話になった人から贈られたものが、樒ではなくお花を使った供花である場合もあります。

このとき、喪主はお花の配置に迷いますが、祭壇まわりにはしきたり通りに樒だけの供花を配置し、お世話になった人からのお花は式場入口など真っ先にたくさんの人の目に触れる位置に飾るといったアイデアがあります。

いずれにせよ、葬儀社は困ったシーンに対応できるさまざまなアイデアを持っているため、一人で悩むよりも葬儀社の担当社員に相談してみましょう。

樒を庭に植えてもいい?

日々の供養で樒を使う場合、庭に樒を植えられれば買いに行く手間が省けるとお考えの人もいるでしょう。

しかし、樒には強い毒性があるため、庭に植えるのはあまりおすすめできません。

よって基本的には、樒は生花店から購入するのがおすすめです。

長持ちするよう、毎日水を替えて花瓶に挿しておくのがいいでしょう。

なお、樒は造花としても売られています。

お墓参りのときや、樒の手入れに自信がないときは、造花を活用するのも1つの方法です。

樒については、一度覚えてしまえば安心

以上、樒の購入方法や飾り方について解説しました。

日常生活ではなかなか馴染みのない樒ですが、一度購入方法や飾り方を覚えてしまえば、また必要になったときスムーズに対応できます。

扱い方や飾り方など、わからないところがあれば葬儀社や菩提寺に訪ねるなどして、無事に仏事を乗りきりましょう。

この記事を書いた人

奥山 晶子

葬儀社への勤務経験、散骨を推進するNPO「葬送の自由をすすめる会」の理事の経験、遺品整理関係の著書・サイト制作サポートなどから、終活全般に強いライター。ファイナンシャルプランナー(2級)。終活関連の著書3冊、監修本1冊。最近の著書は「ゆる終活のための親にかけたい55の言葉」オークラ出版。ほか週刊現代WEBなどサイトへの終活関連コラム寄稿、クロワッサン別冊「終活読本」の監修や、令和6年5月発刊「ESSE」6月号のお墓特集を監修している。

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