【豆知識】家族みんなが良い葬儀だったと思えるお葬式に大切なこと
更新:2022.01.28
この記事では、家族みんなが良い葬儀だったねとなるためにどんなことが大切なのか。
事例をご紹介させていただきながら解説させていただきます。
葬儀の奥深さを知っていただければと思います、ぜひご覧ください。
今までにこんな経験はありませんか
これまでの日常生活で例えばこのような経験をしたことはありませんか?
会社のメンバーで何かを決める時
社内で何かを決める時、色々な意見が出るものの、最終的にその場で一番偉い方の意見でまとまることがありませんでしたか?
上司が意見すれば、他の方はそれ以上の意見はなかなか発言できません。
この場合、上司の意見に賛同している場合もありますが、上司の意見には逆らえないというのが正しいでしょう。
ですから心の中にモヤモヤしたものが残っている方がいらっしゃるかもしれません。
車を購入する時
家や車を購入する時、相手のセールスマンがご主人もしくは奥様の意見ばかりを聞く。
家族間のパワーバランスやお財布を握っているのはどちらかを見て、知らず知らずのうちに片方の意見ばかりを聞いてしまうパターンです。
何も言わない方は、何も言うことが無いのではなく、何も言わないようにしているのか、言えないのかもしれません。
それは自分が主役ではないからなど遠慮もありますし、商談に水を差すまいとの気遣いかもしれません。
友人が集まって何かを決める時
友人が何人かで集まって旅行先やご飯へ行く場所を決める時、特定の人の意見が尊重されやすいという経験はありませんでしたか?
みんなで決めているのであれば、全員の意見を尊重して欲しいものですが、ここでもパワーバランスが発揮される場面があります。
何も言えなかった人は、自分で決めるのが苦手な方は不満がないかもしれません。しかし言いたかったことがあった場合、モヤモヤが残ります。
こういうことが葬儀においてもあるのです。
このモヤモヤを誰もが持つことのないように、葬儀の打ち合わせは進めていかないといけません。
では葬儀の場合、どのようなことが起きやすいのかを見ていきましょう。
葬儀担当者の役割
葬儀において遺族側の最高責任者とも言えるのが喪主です。
パワーバランスで言えば、喪主が一番上になりやすく、お金の面も喪主に決定権があることが多いことから、葬儀社はつい喪主とばかり話を進めがちです。
しかし葬儀担当者はそうならないように工夫をします。
私の過去の実例をご紹介させていただきます。
実例1 実娘が亡くなったのに話に参加できない
故人は30代女性、夫と子供がいます。喪主は30代の夫です。
喪主は、葬儀の経験が乏しく不安なので、実父を頼ります。
葬儀社は、喪主と喪主の実父を中心に話を進めます。
このまま進んでいく葬儀担当者は、経験の浅い方に多いです。
葬儀は滞りなく進むでしょうが、良い葬儀にはなりづらいです。
喪主は何もわからないため、実父の意見がどんどん葬儀に反映されていくことになります。
30代女性の葬儀が、義理の父の意見が主導で行われていくのです、ご自身ならいかがでしょうか?
故人の枕元には、実家から急いで駆けつけた実の両親と姉がいました。
一番お悲しみの中にいるのは、故人の夫、お子様、そしてご両親と姉ではないでしょうか。
両親からすれば、実の娘が亡くなったのです。出来るなら我が子を自分で送り出したいでしょう。
義理の父が葬儀を色々決めていくことに歯痒さを感じていたかもしれません。
私は喪主、喪主の実父の意見を聞きながらも、故人の両親、姉にもどう思われますか?と所々で質問を投げかけて意見を言える空気を作りました。
特にお姉様の意見は私にとってとても重要でした。
その中で一番故人をそばで長く見てきたのは、お姉様だからです。
幼少期の思い出、どんなことが好きだったかを詳しくお聞きすることができて、葬儀に反映することができました。
二人がプロポーズの時に流したBGMをお伺いできたのも、お姉様とお話する時間を設けたからです。
また次の人生でも一緒になろう、そういうメッセージを込めたBGMで送ることができました。
実例2 ずっと面倒を見てきたのに話に参加できない
故人は70代女性、喪主は東京在住の長男です。
葬儀の打ち合わせは、長男夫婦と長女夫婦を中心に行われました。
亡くなる直前まで故人の生活の面倒を一切見ていたのは次女でした。
長男夫婦、長女夫婦の計4人が葬儀の話であれこれ意見を交わす中、次女様は一人蚊帳の外でした。
それまでの疲れがあり、葬儀の打ち合わせに参加する気力が無かったのかもしれません。兄や姉に遠慮していたのかもしれません。
普通に話を進めれば、生活の面倒を次女が見ていたことを知ることもなく、葬儀の打ち合わせも終わっていたかもしれません。
途中、私が次女様へ質問を投げかると「お母さんは薔薇が好きだった。薔薇の花をたくさん用意して送ってあげたい。一番そばにいたのは私、お母さんが葬儀でどうして欲しいのかも聞いているから」と堰を切ったようにおっしゃいました。
発言を我慢していたのです。次女様の思いを葬儀に反映することもとても大切です。
お母様の周りは薔薇の花で敷き詰められ、穏やかな表情で家族に見守られる中、お旅立ちになりました。
みんなが良い葬儀だったとなるために大切なこと
親族のみんなが良い葬儀だったとなるために大切なことをまとめます
喪主だけの意見を反映させない
物事は何においても一人で決めたものに対しては、周囲はついてきてくれません。
表面上は従っても、心の中は違います。
心の中も満足感で満たされることが葬儀においては重要です。
ですから喪主だけの意見を反映させる葬儀になってはいけない、他の方々へも意見が言える空気が大切で、それを担う葬儀社の役割は重要です。
「良い葬儀だった」は周りの感想で決まることが多い
良い葬儀だったねと周囲から言われると嬉しくなるものです。
そんな声が多くなるには、葬儀中の周囲への気配りも大切になります。
周りが見えていない、自分のことだけとならないようにするのは、葬儀の場であっても気をつけたいものです。
みんなが良い葬儀となるために今からできること
ある程度年齢を重ねるとそれぞれが家庭を持っていて、親や兄弟と普段会う機会が少ないという方も多いかもしれません。
それでも万が一の時を考えると、どこかで葬儀に対する考えの擦り合わせや共有を一度は行なっておくことをおすすめします。
突然やってくるのがお葬式です。その場で初めて相手の考えを知るよりも、事前に話し合う、前もって出来ることはしておきたいものです。
なかなかわかっていてもできないものです。思った時が行動のチャンスです。
この記事を書いた人
廣田 篤 広島自宅葬儀社 代表
葬儀業界23年、広島自宅葬儀社代表。厚生労働省認定技能審査1級葬祭ディレクター。終活カウンセラー。前職大手葬儀社では担当者として 1500 件、責任者として1万件以上の葬儀に携わる。実母の在宅介護をきっかけに広島自宅葬儀社を立ち上げて現在に至る。広島市内だけでなく瀬戸内海に浮かぶ島々から、山間部の世羅町、神石高原町まで広島県内あらゆる地域の葬儀事情に精通する広島の葬儀のプロ。身内の死や介護の経験、数々の葬儀を通じての縁から「死」について考え、文章にすることをライフワークとしている。