夫(父親)が亡くなる前にやっておきたい11のこと
更新:2023.03.16
どんなに仲睦まじく暮らしてきた夫婦であっても、別れは必ずやってきます。
夫が余命を宣告された、突然の事故や病気で意識が戻らない、危篤に陥ってしまったなど、配偶者がもうすぐ亡くなってしまうという事実を突きつけられるのは、とても辛いものです。
悲しみの中にあっても、「あとで大変にならないように、やるべきことはやっておきたい」という人のために、また夫本人へのケアを行いたい人のために、夫(父親)が亡くなる前にやっておきたいことについて解説します。
目次
身内が亡くなると、とたんに遺族は忙しくなる
身内の誰かが亡くなると、すぐに葬儀の準備が必要になります。
葬儀が終わると、今度は各種手続きや法要の準備、相続を進めるなどといったことが必要になり、遺族は息つく間もありません。
具体的には、以下のようなことが必要になります。
■役所手続き
死亡届、年金の受給停止、健康保険証の返還手続きなど。
■保険手続き
生命保険金の請求など。
■ライフラインの名義変更
電気やガス、水道の使用名義の変更など。
■四十九日法要の手配
日時の決定、招待状の送付、会場や会食の手配など。
■仏壇の手配
■お墓の手配
■相続税の申告と納付
葬儀後の手続きや法要の準備などについて、具体的に何が必要か詳しく知りたい方は、以下の記事も合わせてご覧ください。
以上のような死後の手続きの中には、生前から準備を進めておけるものがいくつかあります。
気持ちが辛い中でも少しずつ必要なことをやっておけば、いざというとき落ち着いて対処できるでしょう。
また、死期が迫っている本人のケアについて「もっとやってあげればよかった」「こんなこともできたのに」と後悔する人もいます。
何らかの後悔は必ず生じるものですが、いざ本人が亡くなったとき遺族が「やってあげたいことはやりきった」と感じることができれば、大きな慰めになるでしょう。
この記事では、夫(父親)の生前にやっておきたいことを「財産関係」「葬儀の準備関係」「本人のケア関係」に分けて解説します。
できれば生前に押さえておきたい、財産関係のこと5つ
エンディングノートの有無を確かめる
エンディングノートとは、介護や医療、葬儀、墓、相続などについての希望を書いておくためのノートです。
このエンディングノートが、例えば葬儀の後に見つかった場合、本人の希望通りに葬儀を進められなかったことに後悔する遺族は少なくないでしょう。
また、エンディングノートに財産目録があれば、遺産相続を進める上で大きな助けになります。
遺産分割の希望が記されているケースもあり、エンディングノートには遺言書のような法的効力はありませんが、相続時に参考にすることができるでしょう。
エンディングノートの存在は、できれば本人の生前に知っておきたいものです。
直接本人に尋ねられる状況でないなら、家の中を探す必要があります。
遺言書の有無を確かめる
本人の死後、家の中で遺言書が見つかった場合、封を開ける前に家庭裁判所の「検認」を受ける必要があります。
この検認には長い期間が必要なケースもあり、その間は相続が滞ります。
また、相続が確定してから遺言書が見つかると、相続のやり直しが生じてしまう恐れがあります。
本人に尋ねたり、家の中を探したりして、遺言書の有無を確かめておきましょう。
財産目録を作成する
本人の財産は、亡くなってしまうと遺産となり、全て相続の対象となります。
遺言書がない場合はとくに、本人の財産目録をつくり、誰がどの財産を引き継ぐのかイメージしておくと後の相続がスムーズに進みます。
相続税がかかるかどうかを計算するときも便利です。
なかには、家族の知らない財産があるかもしれません。
本人の意識状態や認知能力に不安がない場合は、しっかり確認しておきましょう。
本人に聞くことができない状態なら、権利書や証券類がないかどうか、本人の部屋などを調べてみます。
葬儀代や当面の生活費を準備しておく
銀行側が契約者本人の死亡を知ると、相続が完了するまで銀行口座は凍結されます。
夫婦が生活に使っていた口座が凍結された場合、葬儀代や生活費の工面ができなくなる恐れがあります。
あらかじめまとまった金額を下ろしておけると安心です。
ただ、本人の死亡後も、上限つきで銀行口座から金額を引き出せる「払戻制度」を利用すると、ある程度の金額は引き出すことが可能です。
また、死後すぐに保険金が支払われる葬儀保険などもあります。合わせて活用を検討しましょう。
身内が本人のスマホやパソコンを開けられるようにしておく
スマホやパソコンにはたくさんの個人情報が入っています。
友人の連絡先リストやSNSのアカウント、ネットサービスの月額課金状況、クレジットカードの情報など、遺族にとってはのどから手が出るほど欲しいものばかり。
しかし、亡くなってからではパスコードを聞き出せません。
できれば本人からパスコードを聞き出し、デジタル情報にアクセスできるようにしておきたいものです。
ただし、私的なメールなどを興味本位で覗くことは、あってはなりません。本人の尊厳を守りましょう。
葬儀で慌てないための準備3つ
連絡先リストを作成しておく
身内が危篤になったら、近しい親族には連絡をしておかなければなりません。
亡くなったら、葬儀に参列して欲しい人への連絡も必要です。
いざというとき慌てないよう、前もってリストアップしておくと便利です。
家の掃除をしておく
身内が亡くなると、多くの人が弔問に訪れる可能性があります。
親族が宿泊しに来るというケースもあるでしょう。
とくにお客様が使用する空間である、玄関、トイレ、客間を常にキレイに保っておくと、いざというときも安心です。
また、他の人にキッチンを使ってもらう機会が増える可能性もありますから、キッチンの掃除も行いましょう。
写真の整理をしておく
葬儀演出のために、本人の幼少期から現在までの写真をリストアップして欲しいと葬儀社から依頼されることがあります。
遺影候補を探すためにも、写真の整理をしておくと、後に葬儀の準備がスムーズに進むでしょう。
ただし、写真を見ると辛くなってしまうという人もいると思われます。
無理のない範囲で行いましょう。
他、葬儀の準備をなるべく生前に済ませておきたいという人は、以下の記事も合わせてご覧ください。
家族がなるべく後悔しないための、本人へのケア3つ
残されている感覚にスポットを当てたケアをする
本人が目を覚まさない状態だとしても、家族ができることはあります。
医療従事者とも相談し、嗅覚や聴覚といった、視覚以外の感覚を通して本人のケアをするのはいかがでしょう。
落ち着く香りのアロマを焚いてあげたり、お気に入りの音楽を聴かせてあげたりすると、本人に家族の想いが伝わるかもしれません。
生きているうちに、会わせたい人に会わせておく
葬儀のとき、参列してくれた人と話をしていると「生前に、もっと会わせてあげれば良かった」と感じることがあります。
本人や家族が辛くなければ、遠方の人とはビデオ通話でつなぐなどして、生きているうちに縁ある人たちと交流しましょう。
可能な範囲で、家族で出かける
夫婦で行ってみたいと話していた場所や、思い出の場所に出かけませんか。
もちろん病状によっては不可能な場合もありますから、医療従事者によく相談した上で出かけましょう。
大変であれば、その分だけ深い想い出になります。
本人が亡くなってからも、家族の胸に最後のお出かけとして思い出が刻まれるでしょう。
生前から準備ができれば落ち着いた最期を迎えられる
配偶者の死期が迫っている状況はとても辛いものですが、亡くなるまで猶予期間があると考えると、さまざまな準備が可能になります。
受け入れがたい気持ちを飲み込める段階になったら、できることから始めてみましょう。
この記事を書いた人
奥山 晶子
葬儀社への勤務経験、散骨を推進するNPO「葬送の自由をすすめる会」の理事の経験、遺品整理関係の著書・サイト制作サポートなどから、終活全般に強いライター。ファイナンシャルプランナー(2級)。終活関連の著書3冊、監修本1冊。最近の著書は「ゆる終活のための親にかけたい55の言葉」オークラ出版。ほか週刊現代WEBなどサイトへの終活関連コラム寄稿、クロワッサン別冊「終活読本」の監修や、令和6年5月発刊「ESSE」6月号のお墓特集を監修している。