妊婦は葬儀に出てもいい?参列時に気をつけたいしきたりとマナー
更新:2023.11.06
妊娠中に身内や知人が亡くなったら、葬儀に参列してもよいものでしょうか。
かつては、妊婦の葬儀参列はタブーとされ、もし立場上どうしても出なければならない場合にはしきたりを守らなければならないとされてきました。
しかし個人の考えを尊重する現代においては、タブーやしきたりよりも妊婦本人の体調と気持ちを大事にすべきという考え方に変わってきています。
ただ、葬儀参列には体調が安定しづらい妊婦ならではの注意点があります。
妊娠中の方が葬儀に参列するとき気をつけたいことについて解説します。
目次
かつて妊婦が葬儀に参列してはいけないといわれていた理由
昔は、妊婦が葬儀に参列すること、火葬場へ行ってお骨を拾うこと、お墓参りをすることなどがタブーとされていました。
お腹の中の赤ちゃんを生と死の境目にいる存在と捉え、葬儀に出ると死の世界へ赤ちゃんが連れ去られてしまう(=流産する)といういわれがあったためです。
ただ、このタブーには「妊婦は体調が安定しないので、無理して葬儀に参列しなくてもよい」という心遣いも含まれていたと思われます。
妊婦自身から「大事をとって、参列はしたくない」とはいいづらいものです。
あえて妊婦の葬儀参列をタブー視することで、参列しなくてもよい理由をつくっていたとも捉えることができます。
妊婦が葬儀に参列する際のしきたり
妊婦自身が遺族である場合など、どうしても葬儀に参列せざるを得ない場合は、鏡を喪服の帯の中に忍ばせておくことがしきたりとされていました。
鏡には、邪気や魔物をはねつける力があるとされていたためです。
鏡を外側に向けて帯の中へ入れると、穢れている葬儀という場に存在する邪気や魔物がお腹の赤ちゃんに悪さをしようとしても、鏡がはねつけてくれる。
そう信じて、昔の妊婦はお葬式へ参列のときには鏡をお腹に忍ばせていました。
今ではこのようなタブーやしきたりを気にする人はあまりいませんが、年配の女性のなかには、妊婦が葬儀式場にいると「鏡をお腹に入れた?」と尋ねる人もいます。
無用なトラブルを生まないよう、妊婦が葬儀に参列すると決めたら、念のため手鏡を持参した方がいいかもしれません。
妊婦が葬儀に参列するかどうか迷うときはどうするべき?
愛する身内や親しくしていた友人が亡くなり、心から葬儀に参列したいと感じたら、妊婦であっても参列を遠慮する必要はありません。
ただ、次のような場合は参列を控えることを考えましょう。
体調が悪い場合
妊婦の体調は日によって変化します。
今日体調がよくても、明日どうなっているか分かりません。
葬儀に出るつもりで準備していても、体調が悪かったり、いつもよりお腹が張っているなどよくない変化を感じたりしたら、直前でも思い切って参列を取りやめましょう。
言い伝えが少しでも気になる場合
流産や死産はさまざまな理由で起こりますが、現代では「葬儀に出たから流産した」と考える人はいないと思われます。
しかし、後に万が一流産や死産となったとき、葬儀に出た自分を責めてしまうかもしれないと考えたら、参列しない方がいいでしょう。
妊婦でなくても参列を迷うような関係性の場合
遠い親戚、義理での参列など、そもそも妊娠していない状態でも参列を迷うような場合は、体調が急に変わる可能性も考えて「妊婦だから」と参列を断ってしまってもいいでしょう。
遺族から直接「参列を控えてほしい」と言われたとき
しきたりを気にして、あるいは体調への気遣いから、喪主や遺族に「参列しないでほしい」と言われるかもしれません。
拒絶されたと悲しい気持ちになるかもしれませんが、遺族の意向に従いましょう。意向を無視して参列すると、遺族を困らせてしまいます。
参列しない場合のフォロー
葬儀に参列しないと決めたら、葬儀に間に合うよう弔電を打ったり、葬儀後に香典と一緒にお悔やみの手紙を送ったりしましょう。
故人を悼む気持ちを遺族に伝えることが大事です。
近親者の葬儀に参列しない場合は、すぐにお悔やみと参列できないことをお詫びする電話を入れましょう。
その上で出産してから赤ちゃんと一緒に挨拶に行くのも、いい方法です。
葬儀に行けなかった場合のフォローについては、以下の記事も参考にしてください。
妊娠時の葬儀参列で気をつけたいこと
妊婦が葬儀に参列するときには、体調や体型によって気をつけたいことがあります。
つわりのある人は後ろの座席にしてもらう
つわりのきっかけや症状はさまざまです。人によっては、線香の煙がきっかけでつわりが起こることがあります。
いざというときすぐ席を立てるよう、後ろの座席にしてもらいましょう。
休憩場所を確認しておく
具合が悪くなったときすぐに移動できるよう、トイレの場所や受付周りにあるソファの場所をあらかじめ把握しておきましょう。
葬儀社のスタッフに妊婦であることを打ち明け、具合が悪くなったとき移動させてもらえる部屋を確保しておくのもおすすめです。
短時間の参列を検討する
身内の場合、立ち会いが必要なのは葬儀の儀式そのものだけではありません。
葬儀・告別式の後には、棺のふたを開けてお別れの儀式が行われます。
その後、出棺して火葬場へ行き、収骨まで立ち会います。
葬儀は1日かかるセレモニーなのです。
しかし妊婦にとって長時間座ったり、立ったりするのは体に負担がかかります。
葬儀・告別式のみの参列とする、焼香が終わったら退出するなど、短時間の参列を検討しましょう。
お腹を締め付けない服装にする
妊娠中でも初期や中期の早い時期なら喪服を着ることができるでしょう。
洋装の喪服は黒いワンピースなのでそれほどお腹を締め付けませんが、気をつけたいのがストッキングです。
ワンサイズ大きめのストッキングを着用するか、膝丈、膝上丈のストッキングを選ぶのがおすすめです。
和装は控えるか、着付け師さんに相談してゆったり着付けてもらいましょう。
お腹が大きく喪服が着られない場合はわざわざ服を購入しなくてもよい
お腹が大きく、手持ちの喪服が入らないときは、マタニティ用の服で参列しても構いません。手持ちのマタニティ服の中でも、黒やグレー、紺色、茶系など、なるべく地味な色の服を着用しましょう。
可能であれば、ワンピースにカーディガンやジャケットを羽織るのがおすすめです。
足元は、もし手持ちのストッキングがはけないようなら妊婦用のタイツをはきましょう。
きちんとしたいなら妊婦用喪服のレンタルを検討する
インターネットなどで妊婦用の喪服をレンタルできます。
遺族や喪主の立場であるなど、できるだけきちんとしたいなら、レンタルを検討しましょう。ただし喪服が到着する日時には気をつけて。
せっかく喪服が届いても、通夜や葬儀が終わっている恐れがあります。
小物は黒、アクセサリーは真珠のみ
妊婦はマタニティ服での参列が許されていますが、服以外の小物については葬儀のドレスコードに従います。
靴と鞄は無地で光沢のない黒、髪が肩より長い場合は黒ゴムで1つにまとめましょう。
アクセサリーは結婚指輪と真珠のイヤリングやネックレスだけとします。
妊娠中は周囲に助けてもらいながら葬儀に参列しよう
妊婦の葬儀参列は周囲に気を遣わせてしまうことから「行かない方がいいのではないか」と考える人もいるかもしれません。
しかし、かけがえのない人の葬儀にどうしても行きたいと思うなら、「周囲に助けてもらいながら参列しよう」と心を決めましょう。
参列中の体調不良を自分だけで何とかしようと参列すると、限界までがまんをして倒れてしまい、病院へ行かなければならないような事態になりかねません。
自分と赤ちゃんのためにきちんと周囲に甘え、感謝の意を示しながら参列するのが大事です。
この記事を書いた人
奥山 晶子
葬儀社への勤務経験、散骨を推進するNPO「葬送の自由をすすめる会」の理事の経験、遺品整理関係の著書・サイト制作サポートなどから、終活全般に強いライター。ファイナンシャルプランナー(2級)。終活関連の著書3冊、監修本1冊。最近の著書は「ゆる終活のための親にかけたい55の言葉」オークラ出版。ほか週刊現代WEBなどサイトへの終活関連コラム寄稿、クロワッサン別冊「終活読本」の監修や、令和6年5月発刊「ESSE」6月号のお墓特集を監修している。