親の老後はどうなる?必要資産や介護など、今後30年のロードマップ
更新:2024.08.31
親が定年を迎えるなどすると、親の老後が気になってくるかと思われます。
「老後資金は足りるのだろうか?」
「介護が始まったらどうしよう?」など、親の老後に対するさまざまな不安を抱えている人のために、今後30年のロードマップを提示します。
目次
親の老後、不安要素には何がある?
「親の老後が不安」と言っても、不安要素にはさまざまなものがあります。
まずは不安要素を全て確認し、一つずつ知識を得、不安を解消していきましょう。
老後資金
「老後2000万円問題」が話題になったことがありました。
国の調査で、ゆとりある老後を送るには夫婦単位で2000万円の預金が必要との結果が出たためです。
しかし、老後にいくら必要かは個人差があります。一人ひとりの事情に合わせたシミュレーションをするのが大事です。
見守りと介護
とくに親から遠く離れて暮らしている場合、親が突然倒れてしまわないか、介護が必要な状態にならないかが心配になるでしょう。
親の異常をいち早く察知する見守りサービスや、介護認定を受けると使える介護サービスについて知っておく必要があります。
認知症になったら
親が認知症を発症すると、衛生状態が悪化したり、財産を管理する力がなくなったりと、暮らしにさまざまな困難が生じ始めます。
認知症になる前に手を打っておくのが重要です。
施設入居
親のうち一方の介護状態が悪化したり、どちらかが亡くなって一人暮らしが困難な状態になったりすると、施設入居のタイミングかもしれません。
ただ、入れる施設は介護度などによって違います。
死後の手続き
葬儀やお墓、相続など、親が亡くなった後の手続きについて予め知っておくと、いざというとき落ち着いて対処できます。
老後資金はいくら必要?
極端なことを言うなら、年金で生活できれば老後資金は必要ありません。
2023年の統計局調査によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯における実収入は24万4,580円、支出は28万2,497円であり、家計平均では3万7,916円の赤字となっています。
画像引用元:家計調査年報(家計収支編)2023年 家計の概要
一方、日本の平均寿命は男性が81.09歳、女性が87.14歳です(2023年)。
もしも夫婦ともに長生きし、65歳から95歳まで30年間3万7,916円の赤字が続くと仮定すると、1,364万9760円の老後資金が必要です。
また、家計収支は突発的な支出を含んでいません。
家のリフォームや修繕、施設への住み替えなどまとまった出費に備えようとすると、やはり必要な老後資金は2,000万円に近づいていくといえるでしょう。
ただ、これはあくまで平均的な話です。
親の老後資金に不安があれば、親の家計支出と、想定される年金支給額を比べてみましょう。
想定される年金支給額は、厚生労働省の公的年金シミュレーターで試算できます。
親の家計支出を知ったり、年金支給額を想定したりするためには、当然のことながら親の協力が不可欠です。
「年金の受取額がざっくりわかるサイトがあるよ」
「(想定支給額を見ながら)家計は黒字になりそう?それとも赤字?」などと質問しながら、家計の実際について話を引き出しましょう。
見守りや介護で家族が気をつけるべきことは?
離れて暮らす親の健康が心配になってきたら、親の住まいを管轄する地域包括支援センターへ一度相談してみましょう。
自宅内に設置して異常があったらメールなどで知らせる見守りセンサーを貸し出していたり、新聞配達店や弁当宅配サービスと連携していたりと、見守り事業は地域によって違います。
すぐに利用しないまでも、サービスの存在を知っておけると安心です。
なお、介護が必要になり要介護認定を受けると、入浴など自宅で数時間の介護を受ける訪問サービス、デイサービスへ通う通所サービスなど、介護サービスを受けられるようになります。
日常生活に支障が出てきたら、やはり地域包括支援センターに相談し、要介護認定を受けられる段階かどうか相談するのがいいでしょう。
認知症になったら財産管理や身のまわりのことはどうする?
親が認知症を発症すると、身のまわりのことが心配なのは当然ですが、最も気をつけたいのが財産の管理です。
これまでのように金銭管理ができず高額な買い物をしてしまう危険性が高まります。
また、契約者本人に判断能力が乏しいとみなされると、さまざまな契約が無効になってしまう恐れがあります。
そこで親が認知症になる前に「任意後見制度」と「家族信託」について知っておきましょう。
いずれも、親の判断能力が低下する前に契約等を済ませておく必要があります。
任意後見制度とは、本人が認知症を発症するなどして判断能力が低下した場合、あらかじめ決めておいた家族などの後見人が、契約内容に応じた財産管理や身上監護を行える制度です。
任意後見制度を活用すると、親が認知症になった後、子世代が親のお金を適切に管理したり、必要な介護サービスを選んだりといったことが可能になります。
家族信託とは、本人が所有する不動産や預貯金などの資産を家族に託すことができる仕組みです。
法律の専門家などに相談して契約を結ぶと、いずれ親の判断能力が低下したとき、契約内容に従って子世代など家族が財産管理を行うことができます。
どんなタイミングで施設に入居させるべき?
施設入居のタイミングは、親にとっても子世代にとっても悩ましい問題です。
1つの目安となるのが、要介護2の認定を受けたときといえるでしょう。
要介護2になると、特別養護老人ホーム(特養)の入居資格を得るためです。
特養は他の施設と比べて費用負担が抑えられるため人気の施設であり、なかなか空きが出ない地域も珍しくありません。
早めに入居希望を出し、空きが出るのを待つのがおすすめです。
ただし一人暮らしだったり、認定基準が足りなくても日常生活に多大な不便を感じていたりする場合は、その時点の介護度で入居できる施設を探しましょう。
介護施設には、特養の他に「介護つき有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」などさまざまな種類があり、必要とする介護サービスによって入居できる施設が違います。
早めに近くの介護施設情報を得ておき、見学の上で「空きがあったら連絡をください」と複数の施設に希望を出しておくといいでしょう。
すると「入居させたい」と感じたタイミングで、空きのある施設へスムーズに入居できます。
死後の手続きにはどんなものがある?
親の老後について気になり始めた段階では、死後の手続きなどは「まだまだ早い」と感じるかもしれません。
そこで、いざというとき慌てずに済むよう、死後の手続きの大枠だけでもつかんでおきましょう。
親が亡くなったら、まずは葬儀の手配をします。
葬儀の流れは葬儀社の担当者が詳細に教えるものなので、それほど心配する必要はありません。
多くの人が苦労するのは、葬儀後に取りかかる各種手続きです。
葬儀後の手続きには、保険金請求、保険証返還、年金受給停止、世帯主の変更などがあり、平日の日中にしか行えないものもあります。
また、各種手続きに必要な戸籍関係の取り寄せも行わなければなりません。
死後手続きと並行して、相続を進めます。
遺言書がないか捜索したり、遺言書がなければ法律上の相続人と膝をつき合わせて遺産分割協議をしたりと、故人の遺産を無事分割し終わるまで何かと大変です。
この相続手続きが終わらないと故人の銀行口座が凍結したままになりますから、なるべく早く取り組まなければなりません。
いつまでにどんな手続きが必要か、一覧にした記事をご紹介しておきます。
いざというときは下記の記事を参考に、死後の手続きを進めてください。
親の老後の不安を早めに解消し、ゆったりした気持ちで過ごそう
老後資金や介護、終の棲家についてなど、親の老後については不安がたくさんありますが、早めに動き、知識を得るほどその不安は軽くなります。
第二の人生を歩み始める親世代を、ゆったりとした気持ちで見守りましょう。
そのほうが、残された貴重な親子の時間を有意義に過ごすことができるでしょう。
この記事を書いた人
奥山 晶子
葬儀社への勤務経験、散骨を推進するNPO「葬送の自由をすすめる会」の理事の経験、遺品整理関係の著書・サイト制作サポートなどから、終活全般に強いライター。ファイナンシャルプランナー(2級)。終活関連の著書3冊、監修本1冊。最近の著書は「ゆる終活のための親にかけたい55の言葉」オークラ出版。ほか週刊現代WEBなどサイトへの終活関連コラム寄稿、クロワッサン別冊「終活読本」の監修や、令和6年5月発刊「ESSE」6月号のお墓特集を監修している。