40代の終活は、家族のある人も「おひとりさま」も現状把握から
更新:2022.03.27
40代で終活を始めると聞くと「まだまだ早いのでは」と感じる人も多いでしょう。
しかし、置かれている状況は人それぞれですし、「自分に何かあったら、家族はどうなる?」と考えることは、配偶者や子ども、老いた親の将来を守ることにもつながります。
おひとりさまであれば、「自分で自分のことができない状況に置かれたらどうしよう?」と考えておくことは、年齢を問わず大切です。
40代の終活に必要なことについて解説します。
目次
40代から終活を始める理由
まだまだ健康、人生これからという印象がある40代。
しかし40代から終活を始めるのは、実はとても有意義なことです。
なぜなら、今後の人生をしっかり見つめるために、終活が非常に役立つからです。
40代であれば、結婚し子どもがいる人も多いでしょう。
親が老い始め、介護の準備を始めている人もいるはずです。
「今、自分が亡くなったら」と、「まさかのもしも」について考えれば、残される配偶者や子どもに必要な生活費と養育費、老いた親の介護やそのためにかかる費用を誰に任せるかといった、具体的な物事へ考えをめぐらせることになります。
これらについて考えることは、例え今自分が健康であっても、決して無駄にはなりません。
自分が今すぐ亡くなったとしても、健康で長生きしたとしても、配偶者や子ども、親の「これから」にかかる費用に変わりはないためです。
おひとりさまであれば、いくつであっても終活は必要です。
事故に遭って大けがをする、急に大病を患うなど、自分で自分のことができなくなったとき、誰かに日常を回してもらうことが必要になります。
頼れる家族がいないおひとりさまは、そのとき「誰に」「何を頼むか」をあらかじめリストアップしておかなければなりません。
以上のように、40代の終活は「まさかのもしも」に備えること以上の意味を持ちます。
真剣に終活に取り組めば、今後の人生を安心して過ごすためのお守りを手に入れられるでしょう。
そのためには、家族のいる人もおひとりさまも、現状把握が必要になります。
家族のいる40代の終活に必要な現状把握
まずは、家族のいる40代の終活に必要な現状把握から解説します。
ポイントは、自分の家族や離れて暮らす親について、「自分に何かあったらあの人はどうなるか」を思い巡らすことです。
自分に何かあったら、家族の生活費はどうなる?
まずは家計を共にしている家族が、その後どのように暮らしていくかを考えます。
自分が配偶者や子どもの生活を支えているのであればとくに、費用面に不安がないかを重点的にシミュレーションしましょう。
配偶者が老後、どのくらい年金をもらえるかに着目し、老後の生活費についても想定するのが大事です。
そのうえで、現在の貯蓄や死亡保険金の金額が十分かどうかを見直してみます。
自分に何かあったら、子どもの教育費はどうなる?
子どもの教育にかかる金額をご存じでしょうか。
これから大学卒業までにかかる想定金額を把握し、総額を貯蓄や自分の死亡保険金、学資保険でまかなえる体制になっているかどうかを調べておきましょう。
ちなみに、日本政策金融公庫の調査によると、最もお金がかかる時期といわれる高校入学から大学卒業までにかけての教育費用(入学・在学費用)の平均値は、942.5万円です。
40代の時点では、「さすがにそこまでまかなえるような態勢は整っていない」と感じる人も多いでしょう。
これは平均値ですから、金額の内訳を知り、また「自分の子どもが家から公立校へ通う場合」など具体的に想定して試算するのが大事です。
また、奨学金制度についても押さえておきましょう。
参考:日本政策金融公庫「令和3年度『教育費負担の実態調査結果』プレスリリース
自分に何かあったら、親はどうなる?
老いた親に介護が必要になるかどうかは、誰にも分からないことです。
しかし、いざ介護が発生したとき、誰が介護を担い、費用を負担するのかを明確にしておくことは、自分にとっても、離れて暮らすきょうだいたちにとっても重要です。
終活を機に考えましょう。
介護の担い手については、介護保険適用の上でプロの介護サービスに入ってもらうのが現実的です。
どんな状態になったら、どんな介護サービスが使えるのか、今のうちに調べておいて損はありません。
また、介護が必要になったら、その月額平均は約8万円といわれています。
親の年金から捻出できるのか、捻出できないとしたら誰が負担するのかを、家族やきょうだいと話し合っておきましょう。
生命保険文化センター「介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?」
おひとりさまの40代の終活に必要な現状把握
おひとりさまであれば、自分亡き後の家族の心配をする必要はありません。
しかし、自分で自分の面倒を見られなくなったとき、誰に何を頼むのか、そのための費用はどうするのかについて、考えておくことが重要です。
自分が入院したり認知症になったりしたら、誰が助けてくれる?
入院し、手術が必要になったときには、身元保証人を確保する必要があります。
家族のいない40代のおひとりさまであれば、勤務先に頼るのが最も良いでしょう。
それが難しければ、友人や地域の福祉事務所に相談するという方法があります。
また、おひとりさまが認知症になったり、介護が必要になったりすると、自活が困難になる可能性が高くなります。認知症になると、とくに危うくなるのが金銭管理です。
このようなときのため、事前に信頼できる人を後見人として指定できる制度が「任意後見契約」です。
身内や友人の他、法律の専門家などを後見人に指定できます。
ただ、後見人には月ごとに報酬が発生するため、そのための費用を用意しておかなければなりません。
後見人に支払う報酬額の相場は、一ヶ月につき3~5万円程度です。
自分の死後、誰が葬儀やお墓、遺産の面倒を見てくれる?
おひとりさまは、死後の準備も必要です。
自分では、葬儀を行なったりお墓に納骨したりできないためです。
死後の葬儀やお墓、行政手続き、遺言の執行などを依頼できる契約を「死後事務委任契約」といいます。
法律の専門家やNPO法人がサービスとして取り扱っているため、一度調べてみてはいかがでしょうか。
なお、任意後見契約と同様に、死後事務委任契約にも、やはり報酬が発生するため、貯蓄や保険などで用意しておく必要があります。
どんな40代にも必要な終活項目
以上の現状把握を踏まえた上で、どんな40代にもおすすめしたい終活項目は、以下の3点です。
連絡先リストの作成
いざというとき必要な人にすぐ連絡ができるよう、職場や家族、友人などの連絡先を書いた緊急時の連絡リストを作成し、家族と共有します。
おひとりさまは、いつも持ち歩くバッグに入れておくほか、玄関先など救急隊員に伝えやすいところに置くのもおすすめです。
デジタルの「生前整理」
40代であれば、不用品を片付けるような生前整理は必要ないかもしれません。
しかし、PCやスマホ、ネット上に「不用」となったものが溢れている人は、多いのではないでしょうか。
デジタルの「生前整理」を始めましょう。
PC内の古いファイル、スマホ内のいらなくなった画像などを削除するのはもちろんのこと、注目してほしいのが、ネット上にある個人アカウントです。
サービスやSNSのアカウントを放置したまま亡くなると、家族にその存在が知られることのないまま、乗っ取りなどにあってトラブルになるケースも。
現在使っていないサービスのアカウントは削除し、SNSのアカウントはIDやパスワードをメモして一覧をつくりましょう。
必要なときが来たら、メモを家族に託します。
家族が今後も生きていくため、あるいは死後を任せるための資産形成
前項までで解説した、必要となる費用の準備を始めましょう。
保険の見直しや、貯金を一部定期預金にするなどして、必要なとき以外は手をつけないようにしておくのが重要です。
その費用は、あなたが亡くなってしまっても、生き続けても、必要な資産であることを意識しましょう。
40代が希望に合わせて取り組みたい終活項目
必須項目を完了したら、次は希望に合わせて、以下のようなことに取り組みましょう。
全て、市販されているエンディングノートにまとめると便利です。
葬儀の希望を整理する
自分の葬儀は宗派にのっとったものが良いか、無宗教が良いか、たくさんの関係者を呼ぶ「一般葬」が良いか、主な親族だけで行なう「家族葬」が良いかなど、葬儀の希望を整理します。
最後に着たい衣装、遺影、祭壇に飾る花などの希望も残すことができます。
ある程度整理ができたら、葬儀社に見積もりをお願いしてみるのもいいでしょう。
お墓の希望を整理する
先祖代々のお墓に入りたいか、新しいお墓が良いかといったお墓の希望を整理します。
新しいお墓が良い場合は、希望の立地やデザインなども考えましょう。
一人だけのお墓か、夫婦だけか、家族一緒に入りたいかといった希望も残す必要があるため、お墓については夫婦一緒に考えるのがおすすめです。
終末医療、臓器提供、介護の希望を書き出す
延命措置を望むか否か、臓器提供の意思はあるか、そして介護が必要になったら「誰に」「どこで」介護を受けたいかといった希望を書き出します。
遺言書を作成する
誰に、どんな財産を残したいかを書き出します。
エンディングノートに書いたことは法的効力を持たないため、本格的に終活をしたい場合には、正式な遺言書として残すのがおすすめです。
40代の終活は、家族の存在をしっかり意識しよう
この記事では、40代で終活をする場合に大切なことをお伝えしました。
家族に対する責任を伴う40代にあっては、死後の希望を書き出すことはもとより、家族の行く末について案じることが必要不可欠となります。
考えを重ねるにつれ、「まだまだ亡くなるわけにはいかない」という思いを強くすることでしょう。
頼れる身内のいないおひとりさまにあっては、なおさらのことです。
その思いから、食生活を改めたり運動を取り入れたりして健康に気を遣った生活を始めれば、「健康で長生き」に一歩近づきます。
人生の終わりをデザインするはずの終活が、長寿への原動力になるのです。
終活は自分の「もしも」に向けた準備ではありますが、終活をしたからこそ今後の人生の目標や、理想的な暮らし方が見えてくるという利点があります。
「まだ早い」と身構えることなく、ぜひ40代から始めてみてください。
この記事を書いた人
奥山 晶子
葬儀社への勤務経験、散骨を推進するNPO「葬送の自由をすすめる会」の理事の経験、遺品整理関係の著書・サイト制作サポートなどから、終活全般に強いライター。ファイナンシャルプランナー(2級)。終活関連の著書3冊、監修本1冊。最近の著書は「ゆる終活のための親にかけたい55の言葉」オークラ出版。ほか週刊現代WEBなどサイトへの終活関連コラム寄稿、クロワッサン別冊「終活読本」の監修や、令和6年5月発刊「ESSE」6月号のお墓特集を監修している。