終活の家族会議はどのように行う?兄弟間の相続トラブル防止におすすめ
更新:2024.12.23
「親に介護が必要になったら、兄弟のうち誰が主に看る?」
「相続ではどんなふうに遺産を分けたらいいのだろう?」
親の老後や死後が気になり始めたら、介護や相続についてあらかじめ家族で話し合う「終活会議」の開催をおすすめします。
兄弟のうち、誰が何を負担し、どのように相続するかを決めておけば、争いごとを防げるためです。
終活会議では、いつ、どんな形で、何を話し合っておくべきかを解説します。
目次
終活における家族会議は「兄弟終活会議」「親子終活会議」の2段階
子ども側が主催する場合、まずは親が同席しない「兄弟終活会議」を行うのがおすすめです。
今、どんな不安があるのか、何を決める必要があるのか、兄弟間で共有して話をまとめておいた方が、後々スムーズに進むためです。
もし兄弟間で話をまとめないまま親子の終活会議を行ったら、話についていけない兄弟が出てくるかもしれません。
親と普段どれほどコミュニケーションを取れているかによって、もともと把握している情報量に差が出てしまうためです。
兄弟間で問題のありかを把握し共有できていなければ、親子で終活会議を行っても、理解度に差が生じてしまいます。
兄弟のうち一人でも「よく分からないまま会議が終わってしまった」という思いが残れば、わだかまりが生じます。
結局、将来の争いの種はなくなりません。
まずは兄弟間で話し合い、問題点を洗い出した上で、親子終活会議の議題を決めましょう。
さらに進行役を決めたうえで、親子終活会議を開催するのがおすすめです。
終活について話し合う家族会議のタイミング
健康上の問題で日常生活が制限されず、自立して生活できる期間を「健康寿命」といいます。
日本人の平均健康寿命は男性が72.68歳、女性が75.38歳です(参照:内閣府令和6年版高齢社会白書)。
この年齢を過ぎたら介護のリスクが増えると考えられるため、終活会議の開催を考意識し始めるのが良いでしょう。
終活会議のタイミングは、「親にそろそろ介護が必要になるかもしれない」と、兄弟のうち一人でも不安になったときです。
親に認知症のような症状が現れたり、病気が見つかって手術をしたり、転倒してケガをしたりなど、親の衰えを感じたときが、会議のタイミングといえるでしょう。
いつまでも健康でいてくれる親の場合は、歳祝いを終活会議のタイミングとするのも一つの手です。
77歳の喜寿、80歳の傘寿、88歳の米寿を機に、「これからのことを考えよう」と兄弟や親を家族会議に誘いましょう。
終活について話し合う家族会議はリモートでもいい
兄弟同士が近くに住んでいるという人ばかりではないでしょう。
終活会議は、リモートでも構いません。
LINEのビデオ通話機能や、zoomやGoogleMeetといったWeb会議ツールであれば、気軽に何度でも会議を行えます。
会議の様子は、可能であれば録画しておきましょう。
あとで「言った」「言わない」の争いになるのを防げます。
終活を話し合う家族会議の主な議題5つ
終活会議では、主に次の5つについて話し合います。
介護のこと
親の介護が始まったら、どのように役割分担するかを話し合います。
現代では「娘」や「長男のお嫁さん」などに過度な負担をかけるのではなく、公的介護サービスを上手に使いながら、実子である兄弟間で負担を分散させるのが揉めないコツです。
兄弟それぞれの都合や希望もあることでしょうが、負担がなるべく偏りすぎないようにするのが大切です。
次のような役割分担が考えられます。
■平日は同居家族が公的介護サービスを利用しながらケアをする。土日は兄弟が交替で親の自宅へ行く。
■近くに住む兄弟が交替で親の自宅へ顔を出す。遠方の兄弟は通院費などを負担し、帰省の回数を増やす。
■同居家族が公的介護サービスを利用しながらほとんどの介護負担を担う代わりに、相続時には多めに遺産をもらう。
延命治療のこと
延命治療が必要になったら、どれほどまでの治療を希望するか。
ひとくちに「延命治療」といっても、心臓マッサージ、人工呼吸器、経管栄養(胃ろうなど)などさまざまな段階、治療があります。細かく聞いておくのが理想です。
自治体の中には、延命治療の意思表示ができるノートをPDFなどで公開しているところがあります。
参考にしてください。
相続のこと
相続関係は決めておきたいことが多岐にわたるため、終活会議のメインテーマとなります。
まずは兄弟間で「家は誰が相続するのか?」
「家以外の財産には何があるのか?」など、決めたいことや親に聞きたいことを洗い出します。
親子の終活会議では、兄弟終活会議で出た疑問点や悩みを親と共有し、財産目録を書き出してみることから始めましょう。
終活会議で決めておきたいのは、例えば以下のようなことです。
■親の自宅を誰が相続するのか
■自宅以外の財産をどう分割するのか
■生前に整理しておきたい財産はないか
■生前に贈与しておきたい財産はないか
なお、親の自宅の価額が高く、他にはあまり財産がない場合、相続は揉めやすくなります。
しかし、自宅を受け継いだ人は、その後は家の管理をしていかなければなりませんし、固定資産税を納め続けていかなければなりません。
家を継げばその分、身体的、金銭的な負担が増えることを兄弟間で共有すれば、分割の仕方に納得を得られやすくなるでしょう。
葬儀のこと
葬儀における終活会議は、誰が喪主になるかが最大のポイントです。
一般に、喪主となった人は葬儀やその後の法要、お墓の管理にかかる費用を負担していくことになるためです。
葬儀代については遺産からかかった費用をもらってよいとされていますが、連綿と続く供養の費用は、後の世代が負担して行かざるを得ません。
誰が喪主になるか、喪主以外の兄弟はどのような形で供養の負担を分担するかを決めておくと、後で揉める心配がなくなります。
喪主以外の兄弟は、お墓の管理や法要にどのくらいの金銭的負担が生じるかを把握した上で、法要のときには香典を厚く包むようにするなどと決めるのが良いでしょう。
葬儀内容については、宗派や規模、遺影候補となる写真などを決めておけると良いでしょう。
最近では無宗教の葬儀を希望する人も増えています。
菩提寺があるのに無宗教葬を希望する場合は、新しく宗教フリーのお墓を探さなければなりません。
お墓のこと
今あるお墓を、今後誰がどのように守っていくかが最大の議題となります。
もし、親がお墓に入った後、子世代が誰もそのお墓を使わない場合には、「墓じまい」を考えた方が良いかもしれません。
「墓じまい」とは、お墓を解体・撤去して、寺院などの管理者へ墓地を返還することです。
墓じまいをするべきか、墓じまいをするならタイミングはいつにするかを話し合いましょう。
親が今あるお墓へ入ることを望んでいるなら、「納骨後10年はお墓を維持する」などと決める方法があります。
親が今あるお墓へ入ることを望んでいないなら、生前中に墓じまいが可能です。
ただし、親自身がどこに埋葬されるかを決める必要があります。
決めるべきことを洗い出し、安心の今後を手に入れよう
終活会議で介護や相続の方向性が共有できれば、親の死後に争いごとが起こる可能性は低くなります。
何もかもをすぐに決める必要はないので、まずは兄弟それぞれが今感じている不安を共有してみましょう。
一つずつ不安を取り除いていけば、今後の安心につながります。
この記事を書いた人
奥山 晶子
葬儀社への勤務経験、散骨を推進するNPO「葬送の自由をすすめる会」の理事の経験、遺品整理関係の著書・サイト制作サポートなどから、終活全般に強いライター。ファイナンシャルプランナー(2級)。終活関連の著書3冊、監修本1冊。最近の著書は「ゆる終活のための親にかけたい55の言葉」オークラ出版。ほか週刊現代WEBなどサイトへの終活関連コラム寄稿、クロワッサン別冊「終活読本」の監修や、令和6年5月発刊「ESSE」6月号のお墓特集を監修している。