家族葬に親戚を呼ばないのはNG?さまざまな理由で親戚を呼ばない事例も増えている
更新:2024.05.09
「遠方の親戚が高齢で、葬儀には呼びづらい」
「感染症が流行っているなか、葬儀に来てもらうのが心苦しい」などの理由で、家族葬に親戚を呼びたくないと考えている人はいませんか。
親戚を葬儀に呼ばないとなると「冷たいだろうか?」と悩む場合もあるでしょうが、何も心配はいりません。
葬儀に親戚を呼ばないのは、珍しいことではないためです。
よくある事例を紹介しつつ、親戚を葬儀に呼ばない場合の注意点について解説します。
目次
葬儀は小規模化してきている
葬儀には、大きく分けて「一般葬」「家族葬」「直葬(ちょくそう)」の3つの種類があります。
一般葬とは、親族だけでなく友人関係や近所、会社関係など、縁のある人たち全てを参列対象とする葬儀です。
家族葬は、親族を中心に行う葬儀です。
直葬とは、通夜や葬儀をせずに、火葬だけで済ますことです。直葬の参列者は、主な親族のみとなります。
最近では一般葬の数が減り、家族葬が増えてきています。
地域にもよりますが、葬儀全体のうちのおよそ半分が家族葬であるといっていいでしょう。
また、直葬は一般葬や家族葬と比べて少数派ですが、年々数が増えつつあり、葬儀ポータルなどの調査では葬儀全体の10%を超えています。
参列者の減少はここ10数年の特徴ですが、最近のコロナ禍がさらに拍車をかけました。
(一財)冠婚葬祭文化振興財団 冠婚葬祭総合研究所が行った調査によると、コロナ以前に実施した葬儀の参列規模は、50人以上が33.1%を占め、10人未満は19.3%でした。
しかし2020年2月から2021年1月のwithコロナ期間中は、10人未満の葬儀が34.0%、50人以上は18.1%という結果になりました。
さらに同調査で、2018年1月から2021年1月に喪主を経験した人へ「コロナ収束後に葬儀を実施する場合、どのような規模の葬儀を選びたいか」を尋ねたところ、10人未満の葬儀が良いと答えた人が33.9%を占めました。
小規模な葬儀を行いたいと考える人は、増えているといえるでしょう。
参考:ポストコロナ研その後~「第6回葬祭等に関する意識調査」報告
「コロナが収束しても小規模な葬儀を選びたい」と考える人が多いということは、コロナ以外にも少人数の葬儀にしたい理由があるということです。
どんな理由があるか、いくつかケースごとに見てみましょう。
またケースごとに、参列に関する話の切り出し方について解説します。
ケース1:遠方にいる高齢の親戚を呼びつけるのは心苦しい
高齢の身内が亡くなると、その兄弟もまた高齢者であるため、参列が困難になります。
さらに遠方に住んでいるとなると、参列はますます大変です。
「無理して来てもらって、もし転倒などの事故があったら大変」と心配になってしまいます。
常に付き添いが必要なほど足腰が不安定だったり、入退院を繰り返しているような人だったりしたらなおさら「参列しなくてもいい」と言ってしまいたくなるのではないでしょうか。
高齢化も、ライフスタイルの多様化による親族の分散も、現代化の波の中で起こっていること。
「遠方だから」「高齢だから」と参列してもらわないケースは増えましたし、今後ますますこのようなパターンは増えてくるでしょう。
高齢の親族に「葬儀に来てほしくない」と話すときの切り出し方
故人にごく近い関係の人が多いでしょうから、葬儀の事後報告はやめましょう。
故人の兄弟など近親者であれば、危篤、臨終、そして葬儀日程が決まったときの3つのタイミングで一報を入れるのがマナーです。
葬儀日程が決まった段階で、参列を遠慮してほしい旨を伝えます。
ポイントは、まずは相手の体を気遣うことです。
相手の状況を聞いた上で「葬儀に参列されるとなると、お体がとても辛いと思います」
「葬儀については、参列はおやめになって、私どもにお任せいただければと思うのですが、いかがでしょうか」などと切り出しましょう。
それでも相手が「無理をおしても行く」と言い張るなら、同行する付き添いの人に相談しましょう。
同じ立場の親族(故人の兄弟のうちの1人など)に説得をお願いするのも、いい方法です。
ケース2:親戚とはいえ遠縁で、近年はあまり交流がない
人と人との縁が薄くなっているのもまた、現代の特徴です。
たとえ親戚であっても、交流が全くないことは珍しくありません。
「血縁者でなければ、葬儀に呼ぼうとは思わない」と感じるような縁遠い人もいることでしょう。
家族葬を「親族中心の葬儀」と解釈すれば、主な親族は全員呼ばなければならないような気がしてしまうかもしれません。
しかし、「近親者のみの葬儀」という解釈もあります。
ごく身近な、縁を濃く感じる人たちだけで行う葬儀と考え、親族といえども縁の薄い人は呼ばないスタイルも増えてきています。
遠縁の親戚に「葬儀に来てほしくない」と話すときの切り出し方
もし、ほぼ完全に絶縁状態であり、相手方の葬儀にもしばらく出ていないのだとすれば、事後報告で十分です。
事後報告ではトラブルを生みそうで不安な場合は、葬儀日程が決まったときに連絡し、「葬儀はごく近親者のみで済まそうと思っておりますので、ご足労いただかなくても結構です」と告げます。
相手も親族関係を煩わしいと考えているのであれば、きっと「分かりました」で済むでしょう。
問題は、「いえ、ぜひ参列させてください」と言われてしまった場合です。自分たちと相手側の温度感に差がある可能性があります。
その場で答えを出すのは避け、「一度、家族と相談してみます」としたうえで、主な親族と相談するのはいかがでしょうか。
「では来てもらおう」という結果になるかもしれませんし、「このたびの葬儀は県内に住んでいる人だけ」「三親等まで」などと明確な結論が出るかもしれません。
いずれにしろ、ワンクッション置いた上で改めて連絡すると、相手も結論を受け入れやすくなります。
ケース3:家庭環境が複雑で揉め事を起こしたくない
日本の離婚件数は平成14年(2004年)に約29万組とピークを迎え、令和2年(2020年)には約19万3千組にまで落ち着きましたが、昭和の時代に比べれば明らかに増加しています。
それに伴い、離婚によって複雑化した家庭環境が、葬儀の場で露呈することも珍しくありません。
なかには離婚した片親の家族を葬儀に呼びたくないという人もいるでしょう。
それは私怨からというよりも、多数の人が集まる葬儀という場で揉め事を起こしたくないという不安から来るものであることが少なくありません。
なるべく粛々と葬儀を終わらせるため、揉め事の要因となりそうな人は呼びたくないという感情は理解できるものです。
参考:令和4年度 離婚に関する統計の概況 離婚の年次推移(厚生労働省)
離婚した家族に「葬儀に来てほしくない」と話すときの切り出し方
別れた家族との間に子どもがいるなど、相続関係が絡む場合は、事後報告はあまり良くありません。
「自分がいない間に相続を済ませてしまったのではないか」と疑われ、トラブルになるケースもあるためです。
相手方も状況をよく分かっているのであれば、「参列はご遠慮ください」の一言だけでも気持ちは伝わるでしょう。
もしも「絶対に葬儀に来てほしくない」と考えるのだとすれば、葬儀日程は教えないのが賢明です。
ただ、相続関係が絡む相手なら、後に必ず連絡しなければなりません。
なるべく関係性がこじれないよう接し方に気をつけましょう。
どうしても接点を持ちたくないのであれば、相続時に弁護士をつけることも検討しましょう。
ケース4:不慮の事故や突然死のためひっそりと葬儀を済ませたい
不慮の事故に遭った、事件に巻き込まれたなどの事情で、目立たぬように葬儀を済ませたいというケースもまれにあります。
そんなときには、近親者のみの葬儀にし、他の親族には事後報告という形を取るのも致し方ないことです。
親族も皆、事情を汲んでくれるでしょう。
もしも後日、「そっとしておいてくれた親族や友人に感謝の気持ちを伝えたい」と考えたなら、四十九日法要を少し大きな規模で行うか、お別れ会を開催するのはいかがでしょうか。
お別れ会のタイミングは、百か日や一周忌など、気持ちが十分に落ち着くまで間が空いても構いません。
自分も相手も楽になる選択を見極めよう
以上、家族葬に親戚を呼ばないケースと、呼ばないときの伝え方について解説しました。
葬儀に誰を呼ぶか、呼ばないかと考えている時間は、非常にストレスの高いものです。
できるだけ、自分も相手も楽になる選択を取りましょう。
この記事を書いた人
奥山 晶子
葬儀社への勤務経験、散骨を推進するNPO「葬送の自由をすすめる会」の理事の経験、遺品整理関係の著書・サイト制作サポートなどから、終活全般に強いライター。ファイナンシャルプランナー(2級)。終活関連の著書3冊、監修本1冊。最近の著書は「ゆる終活のための親にかけたい55の言葉」オークラ出版。ほか週刊現代WEBなどサイトへの終活関連コラム寄稿、クロワッサン別冊「終活読本」の監修や、令和6年5月発刊「ESSE」6月号のお墓特集を監修している。