忌中と喪中の違いって?やっていいこと、悪いことの違いをご紹介
更新:2023.06.26
「忌中」とは、身内が亡くなった後に設ける謹慎期間のことです。
似た意味の言葉に「喪中」があります。
忌中と喪中で一番大きな違いは、その期間になります。
またやってはいけないことも若干違います。
この記事では忌中と喪中の違いや、やってはいけないことについて解説させていただきます。
目次
忌中とは身内が亡くなってから49日間を指す
忌中とは、身内が亡くなってから49日までの期間を指します。
忌中は故人を悼み、家から移動することは極力控え、心静かに過ごさなければならないとされています。
また、死の穢れを他の人にうつしてしまう恐れがあるため、謹慎しなければならない期間としても認識されています。
故人が亡くなってから49日目を目処に行う法要を「四十九日法要」といい、四十九日法要をもって忌中が終了します。
忌中が終了することを「忌明け」と呼びます。
浄土真宗ではこの四十九日までの期間を中陰と言い、忌明けのことは中陰が満つるということで「満中陰」と言います。
喪中とは身内が亡くなってから1年間を指す
喪中とは、身内が亡くなってから1年間を指します。
つまり、喪中期間(1年)には忌中(49日)も含まれています。
喪中も故人を偲んで慎み深く過ごさなければならない期間ですが、忌中よりは行動範囲が広くなります。
また、忌中にはまだ死の穢れがついているとされますが、忌明けとなれば、穢れはかなり薄まると考えられています。
故人が亡くなって1年目の命日を目処に「一周忌法要」が行われます。
一周忌法要をもって喪中は終了し、「喪明け」となります。
喪が明ければ、身内は日常生活に戻ります。
忌中や喪中に当てはまる人
亡くなった人が二親等以内にあたる場合は忌中や喪中に当てはまります。
つまり亡くなった人の配偶者、子、孫、両親、祖父母であれば、忌中・喪中となります。
義理の関係性であっても同様に、二親等までは忌中・喪中の範囲内です。
つまり配偶者の両親や祖父母が亡くなったときは、自分も忌中・喪中となります。
ほか、二親等以外であっても同居家族が亡くなったときは忌中・喪中となります。
忌中や喪中は仏教にしかない?
忌中や喪中の概念は仏教のほか、神道にもあります。
神道の場合、忌中は50日で喪中は1年間です。
神道では故人が亡くなってから50日目を目処に「五十日祭」が行われます。
仏教と神道では忌中期間が1日違うため、気をつけましょう。
キリスト教には忌中や喪中といった考え方がありません。
ただ、日本のキリスト教においては、日本でなじみ深い忌中の考え方に寄り添い、身を慎まなければならない期間として没後1ヶ月を採用しています。
1ヶ月後には「召天記念日」(プロテスタント)あるいは「追悼ミサ」(カトリック)を行い、忌明けとなります。
忌中、喪中にやってはいけないこと
肉や魚を控える
【忌中の場合】
昔から忌中は肉や魚などの生ものを食べないという決まり事がありました。
仏教では殺生をタブーとし、肉食は禁忌だからです。
とくに謹慎しなければならない忌中に生ものを食べると、故人の成仏に悪い影響をもたらすと考えられてきたのです。
しかし、現代ではこの肉食禁忌を守る人はまずいません。
葬儀後に行われる「精進落とし」(精進料理からふだんの食事に戻す会食)をもって肉食の禁忌から解放されるとしていましたが、最近は家族葬が多くなり、通夜の晩から普通に肉食のところも見受けられるようになりました。
【喪中の場合】
肉食禁忌は、もともと忌中にしてはならない事柄でした。
よって忌中が明けたら、喪中であってもふだん通りの食事をして構いません。
結婚式をする
【忌中の場合】
忌中にあたる人は、結婚式を避けた方がよいでしょう。
身内が亡くなり謹慎期間中なのに、「おめでとう」と言われる場を自ら設けてはいけません。
【喪中の場合】
喪中もなるべく結婚式は控えましょう。
もし故人が亡くなる前に結婚が決まっていたとしたら、籍だけを先に入れて式を後にするという手段もあります。
お祝いごとに出席する
【忌中の場合】
結婚式のほか、記念パーティーなどお祝いごとに出席するのはなるべく避けます。
【喪中の場合】
忌中と同様、華やかな場所への出入りは避けた方が良いですが、立場上出席しなければならない催し物であれば出席も可能という考え方もあります。
主催者と相談の上で判断しましょう。
親睦会や仲間内の飲み会に参加する
【忌中の場合】
なるべく避けた方がよいですが、酒席ではなく静かに過ごせる場所であれば、かえって気持ちが落ち着く可能性があります。
参加を迷うようなら、謹慎期間中であることを念頭に置きながら他の身内に相談してみましょう。
ただし自分が主催するのは控えます。
【喪中の場合】
あまりに賑やかな場所でなければ顔を出してもよいでしょう。
忌中と同じく、自分が主催するのはなるべく控え、出席したときも羽目を外すことなく静かに過ごすのが大事です。
神社にお参りをする
【忌中・喪中・共に】
神道の神様は穢れを嫌うため、神社参拝はタブーとされます。
初詣も避けましょう。
お正月を祝う
【忌中・喪中・共に】
喪中は自ら祝い事をしません。
よってお正月を祝う行為もタブー視されています。
お正月を祝うとは、鏡餅や門松といった正月飾りをする、おせち料理を食べる、「明けましておめでとう」と挨拶をするといったお正月らしくめでたい行為一般です。
ただし、年越しそばを食べる行為は新年を寿ぐことを意味せず、一年の厄を落とすためのしきたりであるため可とされます。
年賀状を出す
【忌中・喪中・共に】
喪中は新年を祝わないため、年賀状も出しません。
喪中にあたる人は、11月から12月にかけて「喪中につき新年のご挨拶は控えさせていただきます」などとしたためた「喪中ハガキ」を出します。
ただ、喪中であっても故人との関係性がかなり薄い場合は喪中ハガキを出す対象にしなくてもよいという考え方があります。
最近では核家族化が進み、親族との関係が希薄化してきました。
喪中ハガキを出すべきかどうか迷う場合は他の身内に相談してみましょう。
引っ越しをする
【忌中の場合】
忌中の引っ越しは「新しい家に穢れがうつってしまう」という理由から避けられています。
仕事や通学のためなどやむを得ない場合以外は、引っ越しを避けます。
【喪中の場合】
こちらも同じく、やむを得ない場合以外は引っ越しを避けたほうがよいとされています。
ただし、「故人との思い出が詰まった家にいるのが辛い」といった精神的な理由から引っ越しを希望する場合は、ご自身の気持ちを優先させましょう。
旅行をする
【忌中の場合】
家を長く離れる旅行という行為は、謹慎しているとはいえないため避けるようにしましょう。
仕事の出張などやむを得ない場合以外は、旅行を控えます。
【喪中の場合】
こちらも同じく、プライベートで旅行を計画することはなるべく控えます。
ただ、「故人との思い出の場所をめぐりたい」などご自身の辛さを癒すための旅行は許されるべきという考え方もあります。
忌中も、喪中も、自分の気持ちを第一に過ごそう
以上、忌中と喪中の違いについて解説しました。
基本的に、喪中は忌中よりも少しタブーがゆるめと考えていただいて構いません。
「厄落としを兼ねた厄年の同窓会だから、喪中でも出ていいかな?」
「一番の親友の結婚式にどうしても出席したい」など、判断に迷うときはあるでしょう。
自分の気持ちを最優先し、参加したいと感じる場合は身内や主催側に相談しましょう。
また、「両親が離婚してからずっと離れて暮らしていた父親が亡くなったら喪中?」など、忌中や喪中にあたる親族の範囲についても疑問を持つ場合があるかと思われます。
周囲と相談しながら、あくまで自分の気持ちを大事に、行動範囲を決めるのがおすすめです。
忌中と喪中、それぞれのいわれやタブーについてより詳しく知りたい方は、次の記事も参考にして下さい。
この記事を書いた人
奥山 晶子
葬儀社への勤務経験、散骨を推進するNPO「葬送の自由をすすめる会」の理事の経験、遺品整理関係の著書・サイト制作サポートなどから、終活全般に強いライター。ファイナンシャルプランナー(2級)。終活関連の著書3冊、監修本1冊。最近の著書は「ゆる終活のための親にかけたい55の言葉」オークラ出版。ほか週刊現代WEBなどサイトへの終活関連コラム寄稿、クロワッサン別冊「終活読本」の監修や、令和6年5月発刊「ESSE」6月号のお墓特集を監修している。