散骨の手続きは何をすればいい?「墓じまい」後の散骨についても解説
更新:2022.10.30
故人の希望により「散骨してあげたい」と感じていても、手続きの方法が分からないと、なかなか手をつけることができないものです。
散骨の手続きはいたってシンプルですが、一度お墓に納骨した遺骨を取り出して散骨する際には、市役所へ出向かなければならない可能性もあります。
散骨の手続きを、流れに沿って解説します。
目次
散骨は法的な手続きを必要としない行為
散骨に関する法律はありません。
よって、散骨にあたり法的な手続きをする必要はありません。
散骨は、埋葬方法についての法律である「墓地、埋葬等に関する法律」ができた昭和23年には、想定されていない弔い方でした。
よって散骨は長い間、違法だと考えられていました。
しかし1991年に市民団体「葬送の自由をすすめる会」が公開散骨を行い、それを受けて法務省は「葬送を目的とし節度をもって行う限り」問題ないという見解を示しました。
以後、散骨は徐々に市民権を得ていきます。
「葬送の自由をすすめる会」の公開散骨から30年あまりが過ぎた今も、散骨に関する法律は整備されていません。
散骨は自由にできるように思えますが、法律に守られていないからこそ、マナーを守らないとトラブルに陥る危険があります。
現在、多くの散骨は、厚労省が散骨業者に提示しているガイドラインに沿って行われています。
散骨業者に依頼するにせよ、遺族が独自に行うにせよ、ルールやマナーを守って散骨する必要があります。
この記事では、散骨のルールやマナーを守るための手続きに関してもご案内していきます。
散骨と法律の関係についてもっとよく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
散骨のため、遺族が進める3つの手続き
散骨するときには、以下の3つの手続きを行いましょう。
散骨場所の決定
まずは散骨場所を決定します。トラブルのない散骨のためには、他人の私有地を選んではいけません。
よって選択肢はおのずと狭くなり、「海」「自分が所有している土地」「他人が所有しているが、散骨の許可を得た土地」のいずれかが散骨場所の候補となります。
海に散骨する場合、海水浴場や漁場の近くは選べません。
ある程度遠くまで船を出し、人目のないところ、他の船の邪魔にならないところで散骨します。船を保有している人は少数派でしょうから、多くの人は散骨業者に頼ることになるでしょう。
自分が所有している土地に散骨する場合、住宅地が近くにある場所ではトラブルになる可能性が否めません。
山や山林を所有していて、人目につかず行えるなら、散骨は可能です。
なお他人の土地であっても、個人間で「散骨させてください」「許可します」といったやりとりがある場合は散骨が可能になります。
粉骨
散骨する際には、粉骨が必要です。
粉骨とは遺骨をパウダー状になるまで砕くことです。
粉骨しないで遺骨を撒いた場合、撒かれた人骨を見かけた人が「事件性があるのでは」と不安に思う可能性があります。
遺棄ではなく、弔いとして撒かれたことを示すために粉骨するのです。
粉骨は精神的に負担が大きい作業なので、散骨業者に依頼するのが安心です。
ただ、心理的抵抗がなければ、遺族の手で行っても何ら差し支えありません。
散骨方法や料金相場については以下の記事に詳説しています。参考にしてください。
業者に求められた書類の準備
散骨業者に依頼すると、散骨の同意書や、申し込みをする人の身分証明書のコピーを送ってほしいとお願いされることがあります。
必要書類を揃え、業者の案内に従って、メール添付したり郵送したりしましょう。
必ずと言っていいほど提示が必要なものに「埋葬許可証」があります。
埋葬許可証とは、死亡手続きをしたとき火葬許可証と一緒に渡されるものです。火葬を無事済ませた後、火葬場の職員か、葬儀社から手渡されているはずです。
見当たらない人は、骨壺が入っている桐の箱の中などを探してみましょう。
埋葬許可証を再発行するための手続き
埋葬許可証がどうしても見当たらない場合には、死亡届が受理された自治体から再発行してもらいましょう。
再発行の申請方法や必要書類は、自治体によって違います。
一般に必要となるものは以下のとおりです。
■届出人の本人確認書類
死亡届の届出人や直系親族のみが申請できるケースがほとんどです。
■委任状
届出人が申請できない場合は、委任状での申請が可能です。
■亡くなった人と届出人との関係が分かる戸籍謄本など
■届出人の認印
■各自治体が用意している再発行申請書
■火葬証明書
火葬から5年以上経っているなら、火葬を行った火葬場から「火葬証明書」を取得し、申請時に持参します。
一度お墓に入れた遺骨を散骨するときは、手続きが必要な場合がある
一度お墓に入れた遺骨を取り出し、散骨するときには、改葬許可証が必要な場合があります。
「改葬」とは、お墓にある遺骨を、違うお墓などへ埋葬し直すことです。
散骨時に改葬許可証が求められるのは、次の3つのケースです。
散骨業者から求められた場合
「誰の遺骨であるかを示すため、埋葬許可証がない場合は、改葬許可証がほしい」と、散骨業者から求められることがあります。
自治体の方針により、散骨に改葬許可申請が必要な場合
「他のお墓へ移動するのではなく、海や山へ撒く散骨は、改葬にはあたらない」という考え方があります。
この考え方をとる自治体では、散骨のために埋葬許可申請をする必要はありません。
しかし、考え方は自治体によって違うため、確認する必要があります。
霊園や石材業者から求められた場合
「しっかりした行政手続きをとったうえで、骨壺を引き渡したい」と考える霊園があります。
骨壺を取り出す作業を石材業者に依頼する場合は、石材業者から求められることもあります。
改葬許可申請が必要な場合の手続き
散骨のために改葬許可申請が必要なときは、以下の手順で手続きします。
墓地の管理者に「埋蔵証明書」を発行してもらう
該当する遺骨が確かにお墓へ納骨してあることを示すため、墓地の管理者に「埋蔵証明書」を発行してもらいます。
任意の形式で構いませんが、各自治体がテンプレートを用意しているケースもみられます。
自治体の「改葬許可申請書」を取り寄せる
「改葬許可申請書」は、市役所窓口で入手するか、自治体のホームページからダウンロードします。
その他、自治体により求められる書類を用意する
申請する人の身分証明書や、埋蔵されている人と申請する人の関係が分かる戸籍謄本が必要となることがあります。
自治体の窓口へ必要書類を持参する
全ての書類を揃えたら、窓口へ必要書類を持参しましょう。
遠方などで持参が難しい場合には、電話で相談すれば郵送が可能です。
その際、改葬許可証を郵送してもらえるよう、返信用の封筒に切手を貼って同封します。
改葬許可証を発行してもらう
改葬許可証の発行には、日数がかかることもあります。
散骨の期日に間に合うよう、余裕を持って申請しましょう。
散骨を考えているなら、今のうちに埋葬許可証のありかを押さえておこう
以上、散骨の手続きについて解説しました。
手続きそのものはいたってシンプルですが、業者に依頼するとき必要となり、替えのきかない書類に「埋葬許可証」があります。
再発行には時間がかかることもあるため、散骨の期日に間に合うよう、今のうちから探しておきましょう。
この記事を書いた人
奥山 晶子
葬儀社への勤務経験、散骨を推進するNPO「葬送の自由をすすめる会」の理事の経験、遺品整理関係の著書・サイト制作サポートなどから、終活全般に強いライター。ファイナンシャルプランナー(2級)。終活関連の著書3冊、監修本1冊。最近の著書は「ゆる終活のための親にかけたい55の言葉」オークラ出版。ほか週刊現代WEBなどサイトへの終活関連コラム寄稿、クロワッサン別冊「終活読本」の監修や、令和6年5月発刊「ESSE」6月号のお墓特集を監修している。