60代の終活は「介護」について考えることから!7つのステップで進めよう
更新:2022.10.24
人生100年時代が到来した現代、60代といえば、まだ人生の下り坂を下り始めた頃です。
ただ、多くの人が定年退職となり第二の人生を送り始めることから、人生の節目とされることも多い年代。
この節目に、終活を始めてみませんか。60代が終活するにあたり必要な項目を、優先順位に沿って解説します。
目次
●60代の終活を「介護」からスタートするのがよい理由
終活には、さまざまな分野があります。
希望の葬儀や墓を実現するために動いたり、身の回りの整理をしたり、遺言書を書いたり、自分史をしたためたり……。そんな終活の種類の中でも、60代が真っ先に取り組みたいのが「介護の希望」です。
健康上の問題で日常生活が制限されずに生活できる年齢を「健康寿命」といいます。
健康寿命の平均は、男性で72.68歳、女性で75.38歳です(2019年厚生労働省)。
60代の人は、あと10年ほどで訪れる健康寿命に備えなければなりません。
実は、介護の希望がまとまると、次の3つのメリットがあります。
これらのメリットは、定年後に第二の人生を送る上で、大切な意味を持ちます。
将来、どこに住みたいかが明確になるから
もしも介護が必要になったとき、あなたはどこに住まい、誰に面倒を見てもらいたいでしょうか。
その答えが決まれば、将来の安心安全な住まいを確保するために今後どのようなことをすればよいかが分かります。
「最期まで自宅で、福祉サービスを受けながら、家族の介護を受けたい」ということであれば、年老いても快適に自宅で過ごすためのバリアフリー化や、水回りなど老朽化した場所のリフォームが必要でしょう。
将来の修繕代金も確保しておかなければなりません。
一方で「老人ホームに移り、介護のプロからケアを受けたい」と考えるなら、いくつか福祉施設を見学し、希望の場所をピックアップしておく必要があります。
60代の人の中には、将来を考えて自宅を売却し、健康なうちから高齢者向けの住宅に入居する人もいます。
いざ介護が必要になったときには、住まいを整えるための準備ができなかったり、判断能力が低下してしまっていたりする可能性があります。
よって60代の元気なうちから、終の棲家をどうするか考え、行動した方がよいのです。
夫婦で、親子で、これからのことを話す機会が生まれるから
自分で自分を介護することはできません。
配偶者や子世代がどのくらい協力してくれるかは、相手に確認するしかないでしょう。
介護の話題を切り出せば、家族間でこれからの問題を共有できます。
あなたがシニアにさしかかったことを、子世代は現実味を持って受け止めてくれるでしょう。
健康を意識し始めることができるから
介護となれば、自分以外の誰かに世話をしてもらうことになります。
「そんな迷惑はかけられない、申し訳ない」と思えば思うほど、健康の維持に興味が出てくることでしょう。
「健康貯金」という言葉があります。
若く健康なうちからトレーニングをし、体を鍛えておくことで「貯金」を蓄え、身体能力が減少する時期を少しでも遅らせようという考えのもとに生まれた言葉です。
体の衰えをとくに感じていない人でも、終活によって介護に陥った状態をリアルに想像することができれば、「健康貯金を蓄えよう」という気持ちになるはず。
ウォーキングやジョギング、ジム通いなどを始めることにより、実際に体が鍛えられ、健康寿命が延びていくことでしょう。
結果、老後の生活を楽しめる期間が長くなります。
ステップ1:まずはエンディングノートを手に入れる
よりよい人生の最後を迎えるために実践したことを、残される誰かに伝えるまでが終活です。
自分の活動や希望を配偶者や家族に伝えるには、エンディングノートが適しています。
まずはエンディングノートを手に入れましょう。
エンディングノートはたくさんの種類があるため、できれば実際に手に取り、書きやすいと思えるものを選びましょう。
「遺言書の作り方」や「自分史作成」など、とくに興味を持っている分野があれば、そこへページが厚く割かれているものを選ぶのがおすすめです。
ステップ2:連絡先リストを書き入れる
エンディングノートを手に入れたら、「介護」の欄を見る前に、親族や友人などの連絡先リストを書き入れましょう。
連絡先リストは、事故や病気で入院したときや、急死により葬儀が生じたときなど、突然の「もしも」に役立ちます。
ステップ3:「介護」の欄を埋め、実現に向けて行動する
エンディングノートにある「介護」の希望に関する欄を埋めていきます。
「誰に」「どこで」介護を受けたいかを明確に書きましょう。「認知症なら施設で介護のプロに任せたい。
認知症以外であれば自宅がよい」など、なるべく具体的に希望を書いておくと、家族の助けになります。
「自宅で家族に介護を受けたい」と希望するなら、前述したように自宅を住み心地のよい空間にするよう行動しましょう。
リフォームやバリアフリー化、修繕費の積み立てのほか、介護が生じたときに使ってほしい費用を別立てで用意し、家族へ伝えておきます。
「福祉施設などでプロに介護を」と希望するなら、家の近所や子世代の近所の施設へ見学に出向きましょう。
入居したいと思える施設があったら、入居条件や必要な費用を確認しておきます。
いくつかリストアップしてエンディングノートに書き込み、費用をどう捻出するかについても考えましょう。
ステップ4:老後の生活が健やかになるよう、生前整理を行う
「介護」の欄が埋まったら、生前整理を始めます。
「最期まで自分の家に住み続けたい」と希望するなら、将来においても住みよい家であるために不用品を整理するほか、家具や棚のレイアウト変更を行います。
家の中での転倒防止のためには、段差をなるべくなくすのはもちろん、廊下や出入り口の周囲といった動線に物が置かれていないことが重要です。
また、年配者は高いところの物を取るため背伸びをしたときや、低いところの物をとるためかがんだときに腰を痛めやすくなります。
腰の上から目線までの「ゴールデンゾーン」に、頻繁に使う物を集めましょう。
ステップ5:「医療」について考え、欄を埋めていく
生前整理と並行して、エンディングノートの作成も進めていきます。
「介護」の欄が終わったら、次に書くのは「医療」です。延命治療を望むか、脳死状態になったとき臓器提供を行うかといった項目を埋めていきます。
ただ、「医療」の項目はなかなか書きにくいものです。「そのときにならないと、どんな気持ちになるか分からない」という人もいることでしょう。
そんなときは、あくまで「今」の気持ちを書き入れるようにしましょう。
気持ちが変わったら、いつでも書き換えてよいのです。
ステップ6:「葬儀」「お墓」「相続」について考え、できることから始める
エンディングノートの中には、「介護」や「医療」の他に、「葬儀」「お墓」「相続」について書く欄もあります。
最初から全ての項目を埋めようとせずに、埋められるところから、興味の向くところから取り組んでみましょう。
大事なのは、希望を書いた後の行動です。
「お墓は先祖代々のものではなく、夫婦だけのお墓に入りたい」と書いたとしたら、さっそくお墓購入に向けて動き出しましょう。
チラシやHPで魅力的と感じた霊園のパンフレットを取り寄せ、条件が合うと感じたら、実際に行ってみます。
また、「相続」についての項目を書き終えたら、正式な遺言書を作成しておくのがおすすめです。
エンディングノートは、希望を書き込めるだけで、法的効力はないためです。
ステップ7:エンディングノートのありかを必ず身内に伝えておこう
エンディングノートは、書き終えていなくても、そのありかを必ず身内に伝えておきましょう。
「書き終わったら、家族に託そう」と考えていると、書き終える前にもしものことが起こったとき、家族はエンディングノートを見つけられません。
また、ノートを渡してしまってからでは、連絡先や希望について更新したくても、すぐにはできません。
家族が分かる場所にノートを置いておき、中を書き換える機会があっても、その場所は変えないようにしましょう。
60代の終活は、今後をより良く生きるための布石
終活をするというと、「もう、人生も終盤か」と考えがちです。
しかし、終活は「これからどう生きるか」を深く考えるきっかけとなります。
まだまだ先の長い60代ですから、終活は第二の人生を送るためのスタートラインと考えて、明るく取り組んでみましょう。
なお、他の家族にも一緒に終活をやってもらいたいと感じるなら、年代別に違う優先順位を意識する必要があります。
年代別の終活の取り組み方は、以下の記事に詳しく解説しています。参考にしてください。
この記事を書いた人
奥山 晶子
葬儀社への勤務経験、散骨を推進するNPO「葬送の自由をすすめる会」の理事の経験、遺品整理関係の著書・サイト制作サポートなどから、終活全般に強いライター。ファイナンシャルプランナー(2級)。終活関連の著書3冊、監修本1冊。最近の著書は「ゆる終活のための親にかけたい55の言葉」オークラ出版。ほか週刊現代WEBなどサイトへの終活関連コラム寄稿、クロワッサン別冊「終活読本」の監修や、令和6年5月発刊「ESSE」6月号のお墓特集を監修している。