納棺とは、いつ行うもの?直葬・一日葬など状況で異なる納棺時間をご紹介
更新:2022.08.27
納棺とは
納棺とは、お亡くなりになられた方のお体を棺の中へ納める儀式になります。
それまでは布団の上でお休みになられているため、その姿はいつもの日常同様、眠っているように映ります。
しかし棺の中へ入る故人を見れば、非日常な光景なため、そこで初めて家族の死を実感する方も少なくありません。
死の現実を受け入れたくないと拒否反応を示していた家族が死の事実に向き合い、受け入れていくきっかけにもなる儀式です。
人が死別の悲しみから悲しみが癒えるまでの過程をグリーフワークと言いますが、そのプロセスの中でも納棺は大切な役目を果たします。
グリーフワークについての詳細は下記の記事で紹介していますので、よかったら合わせてご覧ください。
辛い場面ではありますが、お悲しみの中にいらっしゃる方々こそが参加すべき儀式であることから、主に近親者にて行います。
ですから単に棺の中に故人を移す作業ではなく、納棺を通じて故人への想いを整理する時間にもなるのです。
納棺の儀で行われること
お亡くなりになられた方のお体を棺の中へ納める前に故人の体を洗い清める場合や、清拭を行う場合もあります。
これらは葬儀社を中心に行われますが、故人の手足、顔周りなどを家族が拭いてあげる形でご家族も参加されます。
身なりを整えた後にお棺へと納め、愛用品など思い出の品を棺の中へ副葬品として入れます。
お棺の中へ入れて良いものは、下記の記事で詳しく紹介していますので、合わせてご覧ください。
納棺のタイミングに決まりはない
本題の納棺はいつ行うのかという疑問についてこれからは解説させていただきます。
結論から申し上げますと納棺を行うタイミングに決まりはありません。
ですからこのタイミングで行うべきという特定のマナーや決まり事はありません。
そもそもお棺に故人を納める目的は、故人をお棺に納めた状態でないと火葬ができないためです。
つまり決まりごととして存在するのは、火葬場到着時に納棺した状態であること、
言い換えれば火葬場到着までに納棺を済ませておけばいいと解釈できます。
火葬場へ出発する、出棺までの間のどこかのタイミングで納棺を行えばよいということです。
しかしながら葬儀の形式など様々な要因でこのタイミングで行った方が良いということもあります。
次項で解説させていただきます。
納棺は通夜式前に行われることが多い
一般的な葬儀の形式として最も多いのが通夜式・葬儀告別式と2日間にわたって行われる形式です。
この場合、納棺は通夜式前に行われます。
例えば18時から通夜式がある場合は、15時〜16時頃の2〜3時間前に行われることが一般的です。
これは納棺の所要時間として30分〜60分、時間が早すぎると身内が集まりづらい、遅すぎると通夜式へ影響が出る、などが考慮されています。
ベストなタイミングは日程、地域性、状況によって異なる
とはいえ葬儀の形式、日程、地域性、家族の状況によっても納棺を行うベストなタイミングは異なります。
例えば今日お亡くなりになられた方の通夜式が明日行われるとします。
この場合、明日行われる通夜式の2〜3時間前に納棺することもあれば、本日中に納棺を行うこともあります。
いずれも通夜式前に行うということに変わりはありませんが、今日なのか明日なのかで日程が異なります。
今日でも明日でも構いません、納棺は冒頭でご説明した通り、とても大切な儀式ですから、通夜式の前にご家族がお揃いになるタイミングで行うと良いでしょう。
葬儀社がご家族の揃うタイミングや都合を伺い、それに合わせてスケジュールを調整してくれます。
最初のご安置の時は布団に安置
ご逝去後、葬儀社へ連絡すると葬儀社が駆けつけますが、このタイミングで納棺とはなるケースは非常に稀です。
つい先ほどまでご存命だった方ですから、亡くなるとすぐに納棺というのは、家族にとってとても残酷なことです。
また、病院でお亡くなりになった場合、他の患者様の目もありますから、病院内に棺を持ち込むことはあまりありません。
通常はシーツにお体を包み、ご安置場所までストレッチャーで搬送、そしてお布団にご安置となります。
稀なケースですが、死後かなりの日数が経過しているなどの場合は、布団にご安置が困難なため、すぐに納棺が行われることもあります。
通夜式を行わない葬儀の場合、納棺はいつ?
「納棺は通夜式前に行われることが多い」とされてきましたが、最近ではこの説明だけでは不十分になってまいりました。
通夜式が行われない葬儀の形が増えつつあるためです。
ここでは通夜式が行われない葬儀の場合、納棺はいつ行うものなのかを解説させていただきます。
直葬・火葬のみの納棺のタイミング
宗教的儀式を行わず火葬のみを行う直葬という形式の場合、納棺のタイミングは様々です。
火葬場へ向かうご出棺の時刻までに納棺を済ませておけば良いことになりますので、特に決まりはありません。
ご出棺時間直前に納棺を行うこともありますし、火葬前日に行うこともあります。
近親者の家族が揃ったタイミングで行うと良いでしょう。
通夜式がないのは、考え方によってはメリットもあります。
火葬前日の晩に納棺を済ませておかなければいけないという決まりはないため、火葬前日の最後の夜もお布団へ安置のまま過ごすことができます。
故人の側に布団を敷いて一緒に川の字でお休みいただくことも可能になります。
それが住み慣れたご自宅であれば、とても思い出に残る一夜になり得ることもあります。
一夜が明けて翌日、ご出棺前に家族で納棺を行うという形でご出棺も素敵だと思います。
一日葬の納棺のタイミング
通夜式を行わず、葬儀告別式のみを行う一日葬という形も近年増えつつあります。
この場合の納棺のタイミングは、通夜式がないため、葬儀告別式が始まるまでに納棺を行う形になります。
葬儀が始まる前にではいつ行うのかは、近親者の家族が集まる時間帯を考慮することと、もう一つ考えることがあります。
直葬火葬のみの時と同様に、火葬前日の晩を家族がどういう形で過ごしたいか、というものです。
一日葬のメリットは、通夜にあたる1日目は宗教的儀式が行われないため、リラックスして普段通りに過ごせることが挙げられます。
喪服を着用する必要もありません。
いつもと変わらない家族団欒の1日を最後に経験できます。
納棺を行い、棺が目の前に登場すれば、それは日常ではなく、非日常な光景となってしまうでしょう。
1日目はリラックスして過ごす、2日目は納棺を行って儀式を行うというメリハリをつけるのも一つの方法です。
この記事を書いた人
廣田 篤 広島自宅葬儀社 代表
葬儀業界23年、広島自宅葬儀社代表。厚生労働省認定技能審査1級葬祭ディレクター。終活カウンセラー。前職大手葬儀社では担当者として 1500 件、責任者として1万件以上の葬儀に携わる。実母の在宅介護をきっかけに広島自宅葬儀社を立ち上げて現在に至る。広島市内だけでなく瀬戸内海に浮かぶ島々から、山間部の世羅町、神石高原町まで広島県内あらゆる地域の葬儀事情に精通する広島の葬儀のプロ。身内の死や介護の経験、数々の葬儀を通じての縁から「死」について考え、文章にすることをライフワークとしている。