デジタル終活とは?現代人に必須なスマホ・PC・ネットの情報の生前整理
更新:2022.08.04
生前整理や葬儀・お墓の準備、将来入居する施設の検討など、終活にはさまざまな項目があります。
なかでも近年注目されているのが「デジタル終活」です。PCやスマホ内のデータ、ネット上に散らばっている個人情報などを整理するデジタル終活について、やるべきことを解説します。
目次
デジタル終活とは、PCやスマホ、ネット上の情報を整理すること
デジタル終活とは、自分が使っているパソコンやタブレット、スマートフォンの中にあるデータを整理したり、ネット上のアカウントや利用状況を把握したりすることです。
デジタル上のデータは目には見えませんが、そのぶん整理が遅れがちです。
整理しないまま放っておくと、膨大なデータがPC内やネット上に転がり、自分でも把握しきれなくなってしまう可能性は十分あります。
自分でも状況が把握できなければ、残される家族が状況を正確に把握するのは、ほぼ不可能です。
死後に家族が困らないよう、不要なデータやアカウントは削除し、住所録など必要なデータに家族がアクセスできるようにしておくのが、デジタル終活で取りかかるべきことです。
以下、デジタル終活でやるべきことを、端末内のデータと、ネット上にある情報に分けて解説します。
デジタル終活でやるべきこと【端末内のデータ編】
まずは、パソコンやスマホ、タブレットといった端末の中にあるデータをどのように整理すべきか、流れに沿って解説します。シンプルな方法なので、高度な知識は必要ありません。
1.いらないデータをとにかく消す
画像や文書ファイル、インストールしたものの使っていないソフトなど、端末内にはいらないデータが溢れていることと思われます。
1年以上使っていないようなデータやソフトは、消してしまいましょう。端末内の容量確保にもつながります。
また、ゴミ箱を空にするなどして見た目上はデータが存在しなくなっても、ハードディスク上には残っているため、復元される可能性があります。
復元され、悪用されることが心配であれば、ファイルの削減ソフトなどを使ってデータ削除をするのも1つの方法です。
ただ、パソコンを初期化したり、ハードディスクを完全に破損してしまったりすれば、復元はできなくなります。
家族に、自分が亡くなったらパソコンから必要な情報を取り出し、あとは初期化してほしい、正規の方法で破棄してほしいなどと伝えておくだけでも安心できるでしょう。
2.「家族へ」フォルダをつくり、端末のパスワードを控える
もしものときに連絡してほしい人の連絡先情報や、遺影などに使える画像、自営業の場合は承継したいファイルなど、自分が亡くなったとき家族に知らせたいデータをまとめて「家族へ」フォルダを作ります。
「家族へ」フォルダは、デスクトップなど最も目立つところにアイコンを置いておきましょう。
スマホの場合も、「家族へ」フォルダに死後確認してほしいアプリを入れてしまうのがおすすめです。
さらに、PCやスマホを開くためのパスワードをメモなどに控え、家族がアクセスしやすい場所に保管しておきます。
保険証書や通帳、財布の中など、「自分が亡くなったら、すぐに家族が確認しそうな場所」を想定して保管しましょう。
エンディングノートに控えておくと、より確実です。
3.見られたくないデータを外部に出す
家族にパスワードを教えると、「よけいな物まで見られてしまうかもしれない」という心配が生じるかもしれません。
デスクトップ上に「家族へ」というフォルダを置いておけば、家族がPCの中をむやみに漁る可能性は低くなりますが、不安であれば見られたくないデータは外部に出してしまいましょう。
ロック機能のあるUSBや外付HDDに保管してしまうのが、一番安心です。
このように、家族にとって必要なものはきちんとアクセスできるようにしておくことが、一番大切です。
「そもそも自分のパソコンやスマホにアクセスしてほしくない」という人は、死後に必要な情報のほうを、外部のUSBやHDDなどに移しておき、それをきちんと信用できる人に託しておきましょう。
生きているうちから家族と共有しても構わないようなデータは、クラウド上で共有しておくのもいい手です。
デジタル終活でやるべきこと【ネット上のデータ編】
端末内よりも、ネット上のデータの方が、終活にとってはやっかいな相手かもしれません。
日常でネットをたくさん使う人ほど、いろんなサービスにアカウントを残したままにしている可能性があるためです。
そんなネット上の情報をうまく管理するには、なんと一番アナログな「メモ書き」が向いています。
見えないものを見える化することで、自分の死後も情報を共有できます。流れに沿って解説しましょう。
1.まずはメールなどを駆使して使っていないアカウントを削除
さまざまなサービスにアカウント情報を残したままにすると、死後に個人情報を悪用される危険性が高まります。
まずは、使っていないアカウントを削除しましょう。
自分がどんなサービスに入会しているか、すっかり忘れてしまったという人もいるかもしれません。
ヒントになるのが、メールの受信履歴です。会員になったサービスからは、定期的にメールでお買い得情報などが届いている可能性があります。
受信履歴や、迷惑メールの履歴から、自分がどんなサービスをかつて使っていたかを探し、現在利用していないサービスは退会してしまいましょう。
スマホのアプリなども、今使っていないものは削除してしまいます。
2.利用サービスのアカウントとパスワードを書き出す
メモ帳を用意し、利用中のサービスやアプリ名、アカウント、パスワードを書き出します。
手書きが面倒な人は、電子メモ帳やエクセルに入力してもいいでしょう。
ただし、あとで必ずプリントアウトしておきます。
残される家族にとってとくに大事になるのが、ネット銀行の口座情報やネット証券、電子マネーなど、お金についての情報です。しっかり確認しましょう。
3.それぞれのサービス情報に「死後、どうしてほしいか」を書き添える
それぞれのアカウントやパスワードの隣に、自分の死後、家族が各サービスに対してどのような対応をとってほしいかを書き添えます。
SNSについては、単に「削除」でもかまいませんし、追悼メッセージなどによって仲間に訃報を知らせてほしいと依頼してもいいでしょう。
いずれにせよ、利用者の死後はどんな対応をとっているのか、各サービスの利用規約で確認するのが大事です。
4.メモを家族に託す
自分の死後、そのメモが残された家族に渡るよう、アクセスしてくれやすい場所に隠しておきます。
あるいは、エンディングノートに添付すると確実です。
以上のように、ネット上の情報を可視化することが、デジタル終活にとっては最も大事になってきます。
少し面倒に思えるかもしれませんが、時間ができたらぜひ、取り組んでみてください。
「こまめな記録は面倒」という人も、通帳の記帳だけはマメにしておいて
今後も、利用サービスやパスワードが変更になることは当然ありえます。
今の時点で整理することに抵抗を感じる人は多いでしょう。
記録を負担に思うなら、稼働している通帳の記帳だけは、マメにしておきましょう。
なぜなら、残された家族が最も困ってしまうのが「ネット上のお金の流れがわからない」ことだからです。
ネット証券口座などに大きな資産があることが後で分かると、相続のやり直しになってしまうことも想定されます。
そこで役に立つのが、しっかり記帳された通帳の存在なのです。
通帳によってお金の流れが分かれば、振込人名義によってどんなサービスを使っていたか想定できます。そのサービスに問い合わせれば、故人の利用状況が分かるでしょう。
何でもデジタルで済ませられる時代ですが、こと終活においては、アナログな手段を駆使することを意識しましょう。
この記事を書いた人
奥山 晶子
葬儀社への勤務経験、散骨を推進するNPO「葬送の自由をすすめる会」の理事の経験、遺品整理関係の著書・サイト制作サポートなどから、終活全般に強いライター。ファイナンシャルプランナー(2級)。終活関連の著書3冊、監修本1冊。最近の著書は「ゆる終活のための親にかけたい55の言葉」オークラ出版。ほか週刊現代WEBなどサイトへの終活関連コラム寄稿、クロワッサン別冊「終活読本」の監修や、令和6年5月発刊「ESSE」6月号のお墓特集を監修している。