大切な人が危篤状態になった時の心のケアと家族がすべきこと
更新:2022.12.28
病院から危篤の知らせを受けると、どんな人であれ、動揺してしまいます。
大切な家族の最期を予期し、深い悲しみに襲われるだけでなく、看取りや葬儀や相続など、これからしなければならないたくさんの事柄に戸惑う人もいれば、逆に心身に力が入りすぎてしまう人もいます。
いずれにせよ、誰もが平常心ではいられなくなってしまうということです。
もし今あなたが同じような状況に陥っているならば、まずはひとつ大きく深呼吸をして、少しでも気持ちを落ち着けていただきたいです。
この記事では、これまで数えきれないほどのご逝去の現場に立ち会ってきた葬儀のプロとして、危篤の時に家族がどういう心持ちでいるべきか、何をすべきかを分かりやすく簡潔にまとめました。
微力かもしれませんが、不安、悲しみ、戸惑いなど、押し寄せてくるさまざまな感情の中で、危篤の家族に寄り添わなければならないあなたの支えになればと思い、心を込めて綴りました。
自分にとって必要と思う個所だけでも構いませんので、どうぞ参考にしてもらえれば幸いです。
危篤とは
危篤とは、回復が見込めないと判断された時に用いられる言葉です。危篤に明確な基準はなく、医師の判断で家族に伝えられます。
危篤状態の定義
明確な基準こそないものの、厚生労働省の示す「重篤」の状態に陥った時が、危篤宣告の目安となるでしょう。
重篤とは、傷病者の重症度を表す言葉のうちのひとつです。重症度は、「軽傷」<「中傷」<「重症」<「重篤」と、分類されます。
厚生労働省によると、重篤は、生命の危険が切迫している状態を指し、①心・呼吸の停止または停止の恐れがあるもの、②心肺蘇生を行なったものが、これに該当します。
危篤状態から持ち直すこともある
危篤と伝えられたからと言って、すぐに息を引き取るとは限りません。
臨終のタイミングは人によって本当にさまざまで、当日に息を引き取る人もいれば、数日後、数週間後、中には数か月持ちこたえることもしばしばです。
珍しいことですが、私たちのお客様の中でも、危篤状態から持ち直し、そのまま回復したケースもあります。
家族にのしかかる複雑な心理
危篤の知らせを受けるときっと深い悲しみに襲われる。そのように考える人が少なくないのですが、実際にはそう単純な話ではありません。
たとえば、次のようなストレスが、複雑な形でのしかかってきます。
■大切な家族がまもなく亡くなるかもしれないことへの悲嘆
■看取り、葬儀、相続など、これから向き合わなければならないことへの緊張
■家族を支えなければという過度な責任感
■いつどのような状況になるか分からない、先行きが見えないことへの不安
■意外に冷静でいられる自分自身への驚きと懐疑
■非日常な時間が続くことの違和感や疲労
危篤という非常時に対して、冷静でいられる人、取り乱してしまう人など、表面的な反応は人によってさまざまです。
いずれにせよ、平常心でいられないことに変わりはないのです。
次章では、まずは心の負担の軽減のためにできることをご紹介いたします。
危篤と言われた時の心構え
危篤の知らせから生じる心理的負担を、どのように軽減すればよいか、何百何千というお葬式の現場に立ち会った私たちの経験からお話いたします。
心の反応を素直に受け入れる
これまでもお伝えしてきた通り、危篤を知らされた時の反応は、人によってさまざまです。
泣いたり、落ち込んだり、パニックを起こしたり、大きな不安に襲われる人もいますが、逆に、過度な責任感から気持ちが昂る人、妙に冷静さを保てる人もいます。
どのような心情が沸き起こったとしても、それは何らおかしいことではありません。
まずは、自分自身の心の反応を素直に受け入れましょう。
泣きたい人は「泣いちゃだめだ」と思わずに、泣けばいいのです。
感情を表に出すことは、医学的にも、死別を受け入れる上でとても大切なことだと言われています。
また、冷静でいられる人の中には、「自分は冷たい人間なのだろうか」と、自身を疑い、責めるケースも少なくありません。
しかし実際は、心が現実を受け止められていない段階にあるだけかもしれませんし、悲しみをしなやかに受け止められる心の持ち主なのかもしれません。
いずれにせよ「泣くべきでない」「もっと悲しむべきだ」「自分は変なのか?」などのように、自身を否定しないことです。
そもそも、「こうあるべき」という状態なんてありません。
まずは自身の心の反応を素直に受け入れましょう。
深呼吸をして気持ちを落ち着ける
次に、具体的にできることとして、ひとつ大きく深呼吸をして、気持ちを落ち着けましょう。
心が動揺している人も、冷静だと自覚している人も、いつもとは違う状況に対して心身に大きな緊張がのしかかっています。
「自分は大丈夫」などと思い込まずに、まずはひとつ大きな深呼吸をして、空気を思いっきり身体の中に流し込んで下さい。
家族や周囲の人と助け合う
周囲に家族がいる場合、お互いに助け合うことが大切です。
同じ家族であっても、動揺してしまう人、周りが見えなくなる人、冷静を保つ人など、その人の性格や置かれている立場によって、反応はさまざまです。
これからやって来る看取りや葬儀を、すべてひとりで抱え込むのではなく、まわりの家族と助け合うことを意識しましょう。
心の支えになってくれる人に連絡する
動揺がどうしても納まらない場合、心の支えになってくれる人に連絡しましょう。
話を聴いてもらうだけ、あるいはその人の声を聴くだけで、心が落ち着くということもあります。
長く話せる状況にないとしても、いざ何かあった時にすぐ連絡できる相手がいるということが、心の支えとなってくれるはずです。
ここまで、危篤時の心構え、心のケアについてお話ししました。
次章では、病院に駆けつける際のポイントや注意点など、具体的にどのように行動をすればよいかを解説いたします。
病院に駆けつける&持ち物
危篤の知らせを受けたら、すぐに病院に駆けつけます。
一分一秒を争う反面、慌てずに落ち着いて行動することも大切です。
病院に向かう際は、最低限、次に挙げるものを準備しましょう。
■携帯電話・スマートフォン
関係者とのやりとりなど、携帯電話やスマートフォンは必須です。
また、大事な連絡先を携帯電話内に保存している方が大半でしょうし、スマホを用いて葬儀社を検索する人も少なくありません。
■充電器
危篤になってから、どれくらいの時間持ちこたえるかは人によってさまざまです。
その間に携帯やスマホの充電が切れてしまわないよう、充電器も忘れないようにしましょう。
■現金
緊急時にどんな出費が必要となるか分かりませんので、ある程度の現金を用意しておきましょう。
■宿泊セット
医師から危篤を宣告されてから数日持ちこたえる例は珍しくありません。
着替え、洗面用具、化粧品など、最低限の宿泊セットをあらかじめ用意しておくと、いざという時にすぐに病院に駆けつけられます。
危篤を知らせる
危篤の際に、どこまでの人に連絡すべきか迷ってしまうものですが、顔を見ることのできる最後の機会となってしまう可能性は極めて高いでしょう。
心残りにならないよう、本人とつながりの深い人に連絡します。
ただし、コロナ禍以降では、病院側も面会に制限を設けていることがありますので、ルールに従うことが大切です。
家族は三親等までが目安
親族では、三親等以内が一般的な範囲だと言われています。
具体的には、本人から見て、配偶者、子、孫、ひ孫、親、祖父母、曾祖父母、兄弟姉妹、伯父(叔父)、伯母(叔母)、甥、姪が該当します。
本人とつながりの深い人
三親等以内の親族でなくとも、つながりの深かった親戚、友人、関係者など、最後に顔合わせをしたいという人がいれば、連絡しましょう。
もしも可能であれば、危篤時に連絡したい人はいるかどうか、事前に本人に聞いておけば、いざという時に判断に迷わずに済みます。
職場への連絡
危篤になると、数日間仕事を休まなければなりません。
まずは上司や担当者に連絡をして、現状の報告、今後の見通しなどを伝えます。
そして、業務に支障が出ないよう、引継ぎなどをしましょう。
危篤の状態がどれだけの期間続くかは誰にも分かりません。
1日や2日かもしれませんし、数週間や数か月になる可能性もあります。
また、万が一ご逝去を迎えてしまったらそのまま葬儀をしなければならず、いずれにせよ、長期に渡って休みを取らざるを得なくなります。
そのあたりも含めて、今後の休みをどのように取得できるのかを相談、確認しましょう。
詳しくは下記の記事で解説していますので、よかったらご覧ください。
葬儀社への連絡
もしもすでに依頼したい葬儀社が決まっている場合は、危篤の段階で一報を入れておきましょう。
もしもまだ葬儀社が決まっていない場合は、可能であれば、スマホなどで検索して、いくつかよさそうな葬儀社をピックアップし、電話で問い合わせや相談をしておくことで、さまざまな面で、不安が軽減されます。
なぜ葬儀社への連絡で不安が軽減されるかと言うと、これからやって来る不馴れなことに対してさまざまなアドバイスをしてくれるからです。
また、ご逝去のあとにすべきこと(遺体の搬送先の決定、各方面への連絡、葬儀の詳細な打合せなど)を事前に知っておくことで、いざという時に慌てなく済みます。
葬儀社とやりとりしておくことで、いま疑問に思っていることが解決され、先行きが見通せます。
こうしたことによって、心の中の不安がわずかでも和らぐのです。
もちろん状況が状況ですし、「いまは葬儀のことなんて考えたくない」という人もいるでしょうから、無理だけはしないようにして下さい。
宗教者への連絡
葬儀社が段取りをサポートする専門家ならば、宗教者は心をケアしてくれるプロフェッショナルです。
家族の危篤を伝えておくことで、いざご逝去を迎えた時に、葬儀の段取り、枕経のお参り、戒名の決定などを迅速に対応してくれるというメリットはもちろんですが、むしろ話を聴いてもらうことに大きな意義があります。
「痛みや苦しみをなんとか取り除いてあげたい」
「亡くなったらこの人はどうなっちゃうんだろう」
「もうすぐ死ぬかもしれないなんて信じられない」
こうした死の問題を受け止めるのは、医師でも、葬儀社でもできない、まさに宗教者の役割です。
もしも菩提寺や、日ごろお世話になっている宗教者の方がいるならば、まずは一報を入れて、あなたの話を聴いてもらいましょう。
危篤の時に仕事は休めるか
家族が危篤状態になった際は、いち早く駆けつけたいものですし、多くの職場はそれを認めてくれるはずです。
ただし、危篤の場合は忌引休暇に該当しないのが一般的です。公休以外で休みを取るならば、有給休暇を取得する形になるでしょう。
もしも入院中の家族がまもなく危篤になりそうだと分かっていれば、職場に対して事前に相談して、危篤の時には休みを取得したい旨を伝えておきましょう。
危篤の知らせを受けて不安な方は、広島自宅葬儀社にご相談下さい
大切な家族が危篤となった時の動揺は、私たちもよく理解できます。
ですから、自分たちだけで抱え込まずに、経験豊富な葬儀社に連絡して、専門的なアドバイスを受けることで、心身を少しでも楽な状態にしておきましょう。
広島県にお住まいの方であれば、どうぞ、私たち広島自宅葬儀社にご相談下さい。
まずはあなたのお話に耳を傾け、そして私たちだからこそお伝えできることをアドバイスいたします。
大切なご家族の最期を、納得いく形で見届けられるよう、心よりお祈りいたします。
この記事を書いた人
廣田 篤 広島自宅葬儀社 代表
葬儀業界23年、広島自宅葬儀社代表。厚生労働省認定技能審査1級葬祭ディレクター。終活カウンセラー。前職大手葬儀社では担当者として 1500 件、責任者として1万件以上の葬儀に携わる。実母の在宅介護をきっかけに広島自宅葬儀社を立ち上げて現在に至る。広島市内だけでなく瀬戸内海に浮かぶ島々から、山間部の世羅町、神石高原町まで広島県内あらゆる地域の葬儀事情に精通する広島の葬儀のプロ。身内の死や介護の経験、数々の葬儀を通じての縁から「死」について考え、文章にすることをライフワークとしている。