マンションでも葬儀、お葬式は出来る!自宅葬を行った実例をご紹介
更新:2022.05.06
愛着ある自宅、最後はそこで迎えたいと考える方はいらっしゃると思います。
その自宅がマンションだった場合、マンションで葬儀を行うのは難しそうだからと早々に諦めてしまうのはもったいない。
そんな思いで筆者が過去にマンションで、どのようにして自宅葬を行ったか、実例をご紹介しながら、マンションでも葬儀が出来る理由を解説させていただきます。
マンションで自宅葬が難しいと言われる理由
マンションで自宅葬が難しいと言われる理由は色々ありますが、一番大きな理由は、物理的な問題です。
部屋からマンションのエントランスまでどうやって出棺するのかという点です。
棺はおよそ全長185cm、横幅55cm、高さ45cmほどあります。
シングルベッドよりも少しだけ短く、横幅が狭い箱物をイメージしてみてください。
故人が棺の中で眠っている状態で、このように大きな箱物をどこにもぶつけず、一度も地面に着けず、マンションの下まで降りることが出来るのだろうか。
マンションから出棺することに難しいイメージを持ってしまう方のお気持ちは理解できます。
できれば棺を水平に保って出棺したい
葬儀社の立場から言えば、故人様の尊厳を守りたい。
人は物ではない、最後まで一人の人間として接していたいと誰もが思っています。
その思いがあるからこそ、ご家族以上に慎重になる面もあります。
できれば棺を水平に保ったまま出棺したいと思うのは最たる例です。
棺を立ててしまうと中でお休みになっている故人様のお体が動いてしまうのではないかと心配になります。
出来る限り安全に、出来る限り尊厳を保ったまま出棺したい観点から、マンションでの葬儀よりも葬儀会館での葬儀をお勧めするケースもあります。
棺を水平に保って出棺したいから考えること
棺を水平に保ったまま、安全に出棺したいと考えた場合、下記の事柄を葬儀社は考えます。
エレベーターの有無
まずエレベーターがあるかどうか。
そしてエレベーターの奥行きは、185cmの棺が入るほどの奥行きがあるかどうかを見ます。
エレベーターの非常扉の有無
エレベーターの奥行きが185cmに満たない場合、エレベーター内に救急搬送用のストレッチャーを入れる為に作られた非常扉があるかどうかをチェックします。
非常扉があれば、扉を開けると棺が入るスペースが生まれますので、安全に出棺できると判断するでしょう。
階段の幅はどのくらいか
エレベーターでの出棺が厳しいとなった場合、次に階段から出棺することを考えます。
焦点は階段スペースの広さです。
ここはどのマンションもほぼ同じような作りで、広さに大きな違いはありませんが、棺が通るかどうかは10cm違うだけでも、かなり変わります。
私は13階から階段を使って出棺をした経験もあります。
玄関が狭い
次に室内から玄関を通って棺が出棺できるのかという点です。
玄関を出て1m先に壁がある場合、185cmの棺が通るスペースが不足していることになります。
棺を斜めにすることや立てることを考える必要が出てきます。
部屋の作りはどうなのか
葬儀を行う部屋から玄関までの動線も確認します。
どこにも当たることなく、水平を保って玄関まで通ることが出来るのかをチェックします。
判断基準は葬儀社で異なる
このように部屋から玄関までの問題、玄関の問題、玄関から下へ降りるまでの問題を全てクリアして、マンションでの自宅葬・出棺は可能になるのですが、ここの判断基準が葬儀社によって異なるのが実情です。
どの時点でマンションでの自宅葬を諦めるかということです。
葬儀社の経験で異なる
葬儀会館で葬儀を行うのが当たり前になった時代、マンションで自宅葬を行ったことのある葬儀社スタッフも少なくなっています。
エレベーターの中に非常扉があり、棺が通ることが出来たからマンションで葬儀を行ったという方が多く、非常扉が開かない場合の出棺、階段しかない場合の出棺を実際に行った経験のある方は限りなく少ないでしょう。
ある時点でお断りしているから経験がないのです。
何かを選択するとき、経験のある中から選びがちです。
ご出棺の際の安全面を考えると特に経験した事の中から方法を選択しがちになりますので、経験値で判断基準が異なってくるのです。
葬儀社は葬儀を行うプロであって、マンションから故人を送り出すプロではありません。
例えばある大きな物を地面に下ろさず、傷つけず大切に部屋の中まで運ぶなら、葬儀社よりも引越し業者の方が経験豊富で専門分野でしょう。
葬儀社は、引越し業者の技術から学べる部分もあるのですが、全ての葬儀社が技術を備えているわけではありません。
葬儀社の熱意で異なる
自宅のマンションで葬儀を行いたい家族の思いをどこまで汲んであげられるか、葬儀社の熱意でも判断は異なります。
出来るだけマンションで行ってあげたいと尽力したのですが・・・という葬儀担当者と絶対にマンションで葬儀を行ってあげたいという葬儀担当者では熱意が異なります。
熱意があれば知恵が浮かびます。
何事にも言えますが、どうにかしたいと考えた時に初めて新しい知恵が生まれます。
私はマンションで行う以外の選択肢を考えなかったため、新たな方法を身につけました。
遺族の熱意で異なる
ここが一番大切かもしれません。葬儀社がどうにかしてあげたいと思う熱量はご遺族の思いの強さで決まります。
葬儀社に「マンションでは難しい」と言われても、ここで葬儀を行いたいという気持ちをどこまで持ち続けることが出来るか。
プロに難しいと言われれば、「そうなのかもしれない」とすぐに諦めてしまう気持ちは理解できますが、一生に一度のことです。
本当に難しいのか、何とかならないかという気持ちを納得いくまで持ち続けていただきたいのです。
その強い気持ちが、葬儀社の情熱に火をつけ、新しい知恵を浮かばせることに繋がり、今よりもマンションで行う葬儀が多くなっていくことにも繋がります。
棺を水平にしなくても安全に出棺できた実例
広島市中区の分譲マンションで実際に自宅葬を行った事例をご紹介させていただきます。
仲の良いご夫婦でお住まいになっていたマンションで、奥様が病気を患い、ご主人が自宅で看病されていました。
もしもの時は、2人の思い出の詰まった自宅から送り出してあげたいと強い気持ちを持っていらっしゃいました。
■状況
・玄関を出て90cm先に壁がある
・玄関を出てすぐに直角に曲がらないといけない
・エレベーター内には非常扉がなく、棺は立てないと入らない
・階段の幅は狭い
・階段を降りた所でS字のように曲がらないといけない
■通常、葬儀社はこの状況であれば下記のような判断をするかもしれません。
・葬儀会館で葬儀を行うことを勧める
・布団にお休みいただいた状態で葬儀を行う。エレベーター下までは故人様のお体を抱えて移動し、エレベーター下で棺に納棺して出棺する。
■弊社がとった行動
このような状況でしたが、ご主人は自宅から絶対に送り出したい。
お部屋の中で納棺をして、出棺をしたい。ここは譲れないと強い意志がありました。
ご主人の思いを叶えるには、棺を立てる他ありません。
ご了承いただき、故人様が棺の中で動いてしまわないように安全面へ配慮しながらのご出棺となりました。
棺を立てると故人様のお体が動くのではと心配になるのは、棺の中に隙間があるためです。
つまり隙間を無くせば、問題は解決します。
普段、割れ物を郵送する際に、段ボールの中に緩衝材を敷き詰めて、隙間を無くす作業を行います。
緩衝材の代わりに花を用いて、ご遺族様に棺の中にたくさんのお花を入れていただくことにします。
お花が好きだった故人様にとってもご家族にとっても自然な形で最後の時間を充分に取ってお棺の中を花でいっぱいにしていただきました。
最後に棺の蓋が開いてしまわないようにベルトで固定して、エレベーターでは棺を斜めに立てて御出棺となりました。
安全に出棺出来たのにはもう一つノウハウがあるのですが、ここでは企業秘密とさせていただきます。
絶対にマンションからの出棺を実現したいと葬儀社に強い気持ちがあれば、色々なアイデアが浮かぶはずです。
このケースでは、参列された周りのご親族が違和感を感じることなくスムーズにご出棺出来ました。
実現出来たのは、マンションからの出棺を諦めたくないご遺族様の熱い気持ちがあったからです。
マンションでも自宅葬が出来る理由
マンションでも自宅葬が出来ると考える理由は以下の通りです。
マンションでも必ず安全に出棺できる
・優先順位1 エレベーターで棺を水平に保ちながら出棺する
・優先順位2 階段から棺を水平に保ちながら出棺する
・優先順位3 エレベーターで棺を斜めに立てて出棺する
・優先順位4 階段から棺を斜めに立てて出棺する
いずれの場合も葬儀社に確かな経験があれば、安全な出棺は可能です。
マンションでも6畳あれば葬儀は行える
マンションでも6畳あれば自宅葬が可能です。
例えばリビングにダイニングテーブルがある場合、一時的にダイニングテーブルを移動すればリビングにも広いスペースが生まれます。
飾りやお棺のご安置などで使用するスペースは、最低2畳分あれば可能です。
残りの4畳分は、お寺様とご家族で使用すればよいわけです。
和室でなく洋間でもOK
葬儀を行う場所は和室でなくても構いません。洋間に座布団や椅子を並べて行うことは、頻繁にあります。
家の造りに応じて最適な方法を葬儀社がアドバイスしてくれるはずです。
仏壇がなくてもOK
仏壇がない家も最近は多く、マンションも例外ではありません。
そのような場合でも仏壇の代わりにご本尊など仏具を葬儀社が用意しますので、ご安心ください。用意をお願いしたから葬儀代が上がるということもないでしょう。
最後に
このようなことからマンションでも自宅葬は行えると言えます。
実際に行ってきた私の声がこれからお考えの方々に届き、力になれたら幸いです。
あなたの地元にも必ず良い葬儀社さんがいらっしゃるはずです。
自宅から送り出してあげたい気持ちも強く伝え、共感してくれる葬儀社へお任せしましょう。
この記事を書いた人
廣田 篤 広島自宅葬儀社 代表
葬儀業界23年、広島自宅葬儀社代表。厚生労働省認定技能審査1級葬祭ディレクター。終活カウンセラー。前職大手葬儀社では担当者として 1500 件、責任者として1万件以上の葬儀に携わる。実母の在宅介護をきっかけに広島自宅葬儀社を立ち上げて現在に至る。広島市内だけでなく瀬戸内海に浮かぶ島々から、山間部の世羅町、神石高原町まで広島県内あらゆる地域の葬儀事情に精通する広島の葬儀のプロ。身内の死や介護の経験、数々の葬儀を通じての縁から「死」について考え、文章にすることをライフワークとしている。