身寄りなしで終活したいとき、頼るべきは誰?
更新:2023.07.01
身寄りなしで終活をしたいと考えたとき、頭を悩ませるのが「誰に自分の希望を託せばいいのか」という問題です。
孤立しがちなおひとりさまにとっては、葬儀やお墓だけでなく、亡くなる前のサポートも懸念材料となりますし、費用について考えることも大事です。
身寄りのない人が終活する際に、知っておきたいことについて解説します。
目次
【身寄りなしの終活】まず「何に困るか」を把握する
身寄りなしの人が終活する際、とくに必要な視点が「誰に頼めるのか」「希望に伴って発生する費用はいくらか」ということです。
身寄りのない人が終活する際に必要なことを、順を追って解説します。
終活とは、突然倒れる、認知症になる、亡くなるなど、自分で自分の身の回りのことができなくなったときのために、希望を誰かに託しておくための活動です。
とくに身寄りのない人は、以下の場面で困難が生じると想定されます。
1.突然倒れたとき、手術で身元保証人になってくれる人がいない
2.要支援、要介護時に自宅で過ごすのが難しい
3.認知症になったら金銭管理や身の回りの整理が難しくなる
4.葬儀を行う人、お墓に納骨してくれる人がいない
5.遺産を相続する対象がいない
次に「誰に託すか」を具体的に想定する
次に、それぞれのケースについて、託せる可能性のある人物を挙げていきます。
手術時の身元保証人は勤務先、友人、入居施設などに相談を
身元保証人の役割は、手術の立ち会いや入院に必要な日用品の準備、「もしも」のときの身柄引受人です。
できれば日ごろ顔を合わせている人に依頼するのが理想的です。
要支援、要介護時は介護サービスに
要支援・要介護認定を受け、介護保険が適用になれば、1割から3割の負担額で介護サービスが受けられます。
訪問介護やデイサービスの利用で、一人暮らしの不安が和らぎます。
認知症になる前に「成年後見契約」を結ぶ
成年後見契約とは、判断能力があるうちに自ら後見人を定め、金銭管理や身の回りの世話などサポートしてもらう内容を決めておける契約です。
身寄りがない場合には、司法書士など法律の専門家と契約するのが一般的です。
葬儀、お墓は「死後事務委任契約」でフォロー
死後事務委任契約とは、葬儀やお墓のほか、役所への届出や自宅の売却など、死後に生じる諸手続きを第三者に委ねることができる契約です。
死後事務を引き受ける受任者には、誰でもなることができます。
信頼できる友人のほか、行政書士や司法書士、弁護士にも相談可能です。
死後事務委任契約についての詳細は、下記でご確認いただけます。
遺産相続については遺言書を作成する
遺産を渡したい相手がいる場合は、遺言書を作成しておきます。
そのうえで、遺言書の内容がしっかり実行されるよう、葬儀、お墓の件と同様に信頼できる人と「死後事務委任契約」を結んでおきましょう。
終活にかかるお金をシミュレーション、支払い可能かをチェックする
身寄りのない人は、終活にかかるお金が支払えなくなっても、他に頼れる相手がいません。
「どんなことを」「誰に」託すか想定した上で、支払い可能かどうかを把握しておきましょう。
もしも予算オーバーなら、他にお金のかからない方法を模索するしかありません。
身元保証人を身内以外にお願いする場合、謝礼を渡すのがマナー
入院時の身元保証人は、毎日のように見舞いに行く、日用品の差し入れをするなど、何かと負担がかかるものです。
病状が落ち着いたら、立替金の精算の他に、数万円程度の謝礼を渡すのがマナーです。
「成年後見契約」は、後見が始まってから月額で負担金がある
成年後見契約は、いざ認知症などになり、後見がスタートすると、月額で報酬が発生します。
弁護士など専門家に依頼する場合には月額3万円から5万円、知人など専門家以外であれば2万円から3万円程度が相場です。
「死後事務委任契約」の報酬は生前に確保される
死後事務委任契約を結んだ場合、依頼する手続きの範囲によって報酬が変わります。
専門家への依頼であれば、「葬儀の代行が10万円」「役所等への届出は1件1万円」など、細かい見積もりがもらえるでしょう。
総額は50万円以上になることも。生前に総費用を支払うわけではありませんが、執行費用のための死亡保険を新たにかけるなど、遺産の中から確実に報酬が支払われるよう工夫がなされます。
葬儀、墓に関する費用も把握を
入院や介護の費用を把握するのは難しいですが、葬儀や墓については、ある程度の把握が可能です。
葬儀にかかる費用は、儀式や返礼品、食事、寺院へのお布施などを含めると、総額およそ180万円が相場です。
「○○家之墓」などと刻まれた、昔ながらの継承墓を求める際には、250万円程度が必要になります。
ただ、一般的な葬儀や墓は、身寄りのないおひとりさまの希望とはマッチしないことが多いでしょう。
身寄りがない人におすすめの葬儀や墓については、後ほど詳しくご案内します。
以上のように、身寄りなしの人が終活し、専門家等と契約を結ぶとなると、さまざまな費用が発生します。
自分だけが頼りのおひとりさまが、これから生きていくための費用とは他にまとまったお金を確保しなければならないということです。
身寄りなしの終活、費用をコンパクトに抑える3つのヒント
身寄りなしの終活で、お金を確保することに不安を感じたら、以下の方法を試してみましょう。
医療・介護に関することは地域包括支援センターへ相談を
地域包括支援センターとは、高齢者が最後まで住み慣れた地域で暮らすため、介護が発生する前からシニアの生活を包括的に支援するための施設です。
保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員など、福祉のプロが配置されています。
健康なうちから「身寄りがないので、要介護になったときが不安」と相談しておくと、長く健康を保つためのアドバイスや、健康が損なわれたときまず何をすればよいか、介護保険で使えるサービスには何があるかなどを、具体的に教えてくれます。
委任については管轄の社会福祉協議会にあたってみよう
身元保証、後見契約、死後事務委任といった委任に関することについては、社会福祉協議会が頼りになります。
身寄りなしで終活せざるを得ない人が増加するなか、おひとりさまの支援事業を展開する社会福祉協議会が増えているためです。
実際に委任サービスを受ける場合、無料というわけにはいきませんが、民間サービスを利用するより安価な可能性があります。
また、多くの社会福祉協議会が、相談自体は無料としています。
委任についての不安を、かけられる費用の範囲とともに相談すれば、解決の糸口を一緒に探してくれるでしょう。
お金のかからない葬儀や墓の選択肢を知ろう
葬儀や墓のためにまとまったお金を残さなければならないとなると、身寄りのない人の生活は、窮屈なものになってしまいます。
また、人がたくさん集まる葬儀や継承者が必要な墓は、おひとりさまの要望とマッチしない可能性が高いでしょう。
以下のような葬儀や墓の形を知っておきましょう。
そして、地元の葬儀社や散骨業者に相談し、見積もりを取り寄せておければ安心です。
【葬儀】
■直葬(ちょくそう)
葬儀を行わず、火葬だけで済ませる見送りの形です。
棺代、搬送車料代などを合計して、15万円程度が相場です。
■火葬式
直葬に、火葬前の簡単なお別れの儀式をプラスしたものが、火葬式です。
「直葬では味気ない」「最後は友人に集まってもらい、お別れをしたい」と考える人に。
20万円程度が相場で、僧侶を呼んで読経してもらうなら、他にお布施が必要です。
■献体
献体とは、以後の医学的研究や教育に役立たせるため、自らの死後、大学などに遺体を提供することです。
検体を行うと、遺体の搬送費や火葬費用を大学側が負担してくれます。
自分の体を医療発展のために役立ててほしいと強く希望する人は、検討してみましょう。
【墓】
■散骨
散骨とは、海や山に遺骨を撒くことです。
日本では、海への散骨が多く行われています。
散骨業者に骨壺を渡し、身内などの立ち会いがない状態で散骨してもらう「委託散骨」であれば、5万円程度が相場です。
■合祀墓
合祀墓とは、供養塔などと名前のついた大きな石塔の中に、たくさんの人の遺骨が納められている墓です。
個別のスペースを持たないため安価で、相場は5~30万円ほど。
継承者を立てる必要はなく、管理料は発生しません。
■0葬
火葬場から遺骨を持ち帰らないのが「0葬」です。
宗教学者の島田裕巳氏が提案しました。0葬であれば骨壺を用意する必要もありません。
ただ、日本の慣習として、遺骨は遺族が骨壺に納めて持ち帰るのが一般的なため、0葬を引き受けていない火葬場もたくさんあります。
0葬を希望する場合は、最寄りの火葬場に問い合わせてみましょう。
身寄りなしの終活は、周囲の助けが不可欠
以上、身寄りなしの終活についてお伝えしました。
頼れる身内がいないぶん、勤務先、知人、入居する施設、そして地域包括支援センターや社会福祉協議会など、たくさんの人に助けられながら終活することになります。
終活を進めていくうちに、きっと「いざというとき、頼れる人」が増えることでしょう。
地域のつながりを実感しながら、身寄りのない人ならではのライフエンディングプランを完成させましょう。
この記事を書いた人
奥山 晶子
葬儀社への勤務経験、散骨を推進するNPO「葬送の自由をすすめる会」の理事の経験、遺品整理関係の著書・サイト制作サポートなどから、終活全般に強いライター。ファイナンシャルプランナー(2級)。終活関連の著書3冊、監修本1冊。最近の著書は「ゆる終活のための親にかけたい55の言葉」オークラ出版。ほか週刊現代WEBなどサイトへの終活関連コラム寄稿、クロワッサン別冊「終活読本」の監修や、令和6年5月発刊「ESSE」6月号のお墓特集を監修している。