樹木葬のメリット、デメリットは?どんな人に向いているかも解説
更新:2022.02.18
「○○家之墓」などと刻まれた墓石ではなく、樹木を墓標として供養のシンボルにするお墓を、樹木葬といいます。
「美しい木々に囲まれ、自然に還る」というイメージから、近年人気です。
樹木葬の種類やメリットとデメリット、またどんな方が向いているのかについて解説します。
樹木葬の意味と種類
樹木葬は、「○○家之墓」などと刻まれた墓石がなく、シンボルツリーとなる樹木にむかってお参りするお墓です。
自然あふれる環境のもと、四季を感じながら眠れるというイメージから需要を伸ばしています。
終活関連サービスを提供する鎌倉新書が2020年に行った調査によると、「購入したお墓の種類」は第1位が樹木葬(41.5%)、第2位が継承を伴う一般墓(27.4%)となりました。
(参考)【第11回】お墓の消費者全国実態調査(2019年)霊園・墓地・墓石選びの最新動向
ひとくちに樹木葬といっても、その種類はさまざま。以下のように、立地や納骨スタイル、契約形態に違いが見られます。
【立地】里山型と霊園型がある
自然そのものの里山をまるごと墓地にしたような「里山型」と、霊園として形成・整備された「霊園型」があります。主流となっているのは「霊園型」です。
【納骨スタイル】個別区画型、集合墓型、合祀墓型の3タイプがある
一般のお墓のように個別区画を設け、好きな樹木を区画内に植える「個別区画型」と、桜やクスノキなど大樹の周囲にたくさんの小さな個別区画を設ける「集合墓型」(トップ画像参照)、大樹の近くに大きな供養塔を設け、たくさんの遺骨をまとめて納骨する「合祀墓型」があります。
主流なのは「集合墓型」です。
【契約形態】永代供養型と継承型がある
納骨後に追加の料金が発生しない永代供養型が主流です。
しかし、まれに寺院が檀家向けに年間管理料が必要な樹木葬用の墓地を提供しているケースもあり、全てが永代供養型とはいえません。
また、永代供養型と継承型のいずれかを選べる樹木葬霊園もあります。
樹木葬のメリット
メリットは、以下の5つです。
自然の中で眠れる
樹木葬霊園は、シンボルツリーとなる樹木の周りにも、緑豊かな敷地が広がっているケースが多いのが特徴です。さまざまな草花が、四季折々の表情を見せてくれます。
一般のお墓よりも低価格
多くが集合墓型で、かつ墓石を建立する費用がかからないため、一般的なお墓より低価格なケースがほとんどです。合祀型であれば、さらに低価格となります。
自分の死後、お墓にお金がかからない
樹木葬の殆どが永代供養型であり、契約時、あるいは埋葬時までに全ての料金を支払い終えるシステムです。
よって、自分が埋葬された後、残った身内が毎年管理料を支払う必要はありません。
お墓参りのときに明るい気分になれる
美しい緑や四季の花々が目を楽しませてくれるため、明るい気持ちでお墓参りに出向けます。
命日や春秋の彼岸など、「この時期に行けば、あの花が咲いているはず」と思いながら霊園に出かけられるのは、残された人にとって嬉しいメリットです。
宗教フリー
多くは、どこかのお寺の檀家になる必要がありません。宗教・宗派を問わず、利用できます。
樹木葬のデメリット
デメリットは、以下の5つです。
家族や親族と意見が合わない場合がある
自分は「樹木葬がいい」と考えていても、後に残される子世代など近親者は反対するかもしれません。
「墓石に手を合わせないと、お墓参りをしている気分になれない」という人もいます。
実際にお墓参りをするのは残される側なので、近親者とは契約前によく話し合いましょう。
里山型を選ぶと、アクセスの悪さからお墓参りが困難な時がある
周囲が自然でいっぱいの里山型に憧れる人は、お墓参りをするときのアクセスに注意しましょう。
自宅から遠い、公共機関から降りた後に山を登らなければならないといった立地は、家族の負担になることもあります。
さまざまなタイプがあるため「思っていたのと違う」が起こりやすい
例えば、骨壷のまま埋葬される樹木葬があります。すると、遺骨は土に帰りません。
「自然に還る」という印象から樹木葬を選んだ人には物足りないでしょう。
また、一般墓地の一区画のみを樹木葬墓地にしているケースでは、「自然がいっぱい」という印象の景観にはなりません。
良いと思う霊園があったら実際に見学し、納骨スタイルや契約についてよく確認するのが大事です。
改葬したいと思ったとき、叶わない場合がある
多くの樹木葬霊園では、自然回帰のコンセプトから、遺骨を骨壺から取り出し、麻布などに包んで埋葬します。
すると時間をかけて遺骨は土に還ってゆきます。
もしも家族が他にお墓を建てて「遺骨を移動(改葬)したい」と希望しても、そのときには、全ての遺骨を移動することは叶わない状態かもしれません。
また、合祀型では他の遺骨と一緒に納骨されるため、後で個別に遺骨を取り出す事はできません。
生前に契約すると、存命中は年間管理料を支払わなければならないケースがある
樹木葬霊園を生前に契約すると、霊園内の維持管理のため、存命中は年間管理料を支払わなければならない場合があります。
まだまだ元気なうちに契約した場合、何十年にもわたって管理費が必要になるかもしれません。
とはいえ、元気なうちでなければ自分のための霊園は選べませんし、人気の区画はどんどん予約が埋まってしまいます。
契約事項をよく確認し、管理料についても納得の上で契約するようにしましょう。
樹木葬に向いている人
以上、メリットとデメリットを考え合わせると、向いているのは以下のような人といえるでしょう。
自然回帰の考え方に賛同する人
樹木葬のコンセプトは「自然に還りたい」「自然に囲まれて眠りたい」という自然回帰の思想です。
この考え方に賛同する人、大いなる自然の中へ帰ってゆくことに憧れを感じる人こそ、最も向いているといえるでしょう。
おひとりさま
多くは永代供養型で、継承者を必要としません。そのためおひとりさまでも安心して契約することができます。
とはいえ、自分で自分の納骨はできませんから、死後の納骨を委託できる人を決めておくのが大事。
入居する施設に相談したり、死後事務委任契約を受け付けている行政書士や司法書士を探したりといった方法があります。
子世代に迷惑をかけたくない人
「自分たちでお墓を買っても、子世代はそのお墓には入らない。
管理の負担をかけたくない」という夫婦に、永代供養もできる樹木葬はぴったりです。
家族ともども、樹木葬に賛成している人
子世代や近親者に樹木葬について相談したとき、みんなが賛同してくれるようであれば安心です。
お墓参りをする子世代にとっては、アクセスのしやすさや設備が整っているかといった点も気になるところ。できれば子世代と一緒に、気になる霊園の見学をおすすめします。
宗教フリーのお墓が欲しい人
「檀家をやめて、自分たちは宗教フリーのお墓を選びたい」「葬儀を無宗教にして、お墓も宗教フリーにしたい」といった人に、樹木葬はおすすめです。
ただ、霊園によっては観音像があるなど仏教の供養をイメージさせる物がある場合も。
宗教を感じさせない霊園が好みの人は、必ず見学を行いましょう。
お墓の費用をなるべく抑えたい人
「お墓は欲しいけれど、費用は抑えたい」という人にも、墓石の建立費用がかからないぶん安価になるため、樹木葬はおすすめです。
ただ、費用を抑えたい人には、一般的な合祀墓や納骨堂、散骨など他にもさまざまな選択枝があります。よく比較検討して選びましょう。
樹木葬霊園は見学必須、せっかくなら「対応が良い」と思えるところを
以上、樹木葬の特徴やメリット・デメリットについて解説しました。
理想の樹木葬霊園と出合うためには、見学が必須です。気になる所があったら、ぜひ見学に出向きましょう。
見学に行ったら、実際の景観やアクセス、設備について確認するのと同時に、係員の対応についても観察するのが大事です。
親身になってくれ、しっかり対応してくれる霊園を選んでおけば、いざというときもしっかりサポートしてくれるでしょう。
この記事を書いた人
奥山 晶子
葬儀社への勤務経験、散骨を推進するNPO「葬送の自由をすすめる会」の理事の経験、遺品整理関係の著書・サイト制作サポートなどから、終活全般に強いライター。ファイナンシャルプランナー(2級)。終活関連の著書3冊、監修本1冊。最近の著書は「ゆる終活のための親にかけたい55の言葉」オークラ出版。ほか週刊現代WEBなどサイトへの終活関連コラム寄稿、クロワッサン別冊「終活読本」の監修や、令和6年5月発刊「ESSE」6月号のお墓特集を監修している。